ディストピアにやすらぎを

こんにちは。気の向くままに綴ります。 読書はエネルギー。最近は、いま読んでいる本、過去…

ディストピアにやすらぎを

こんにちは。気の向くままに綴ります。 読書はエネルギー。最近は、いま読んでいる本、過去読んだ本の感想をぽつぽつ綴ってます。

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最近の記事

📕ペンギン・ハイウェイ

森見登美彦、著 ペンギン・ハイウェイ ある日、アオヤマ君の暮らす町に、どこからともなく無数のペンギンが現れた。 知り合いのお姉さんがペンギンを出しているのを目撃する。しかし、お姉さん自身、どうやってペンギンを出しているのかはわからない。 アオヤマ君は、友人のウチダ君、ハマモトさん、そして、お姉さんとともにペンギンの出現方法を研究しはじめるのだった。 発見することの楽しみと驚き、頁をめくるごとにわくわくできる、夏休みの自由研究のような小説。問題を解決するための思考のヒン

    • 📕 夜は短し歩けよ乙女

      森見登美彦、著 夜は短し歩けよ乙女 冴えない大学生の先輩。 そして、先輩の想いびとである黒髪の乙女。 物語は、ふたりの視点から語られる。 舞台は京都、先斗町。 大学生である先輩は同じサークル所属の黒髪の乙女に恋をしていた。自分の想いに気がついてもらえないので、ナカメ作戦(なるべく かのじょの 目に留まるようにする作戦)を実行するのだった… 一方、 黒髪の乙女。好奇心旺盛な彼女。趣味は読書と映画鑑賞、ひとり夜のバーで酒を飲むこと。偽電気ブランなるカクテルの存在を知る。その

      • 📕告白

        町田康、著 告白 実際の事件であふ河内十人斬りを題材にした、特大長編。パンクな文章がもはや思弁的である。 熊太郎は生まれつき脳内おしゃべりが饒舌な思弁的人間である。しゃべればまとまらない言葉で何を言っているかわからない。明治初期の村人たちにそんな熊太郎を理解できる者などいなかった。 しかも熊太郎、見栄っ張りだから、脳内おしゃべりと世間体を一致させようと、理屈にあわない行動ばかりとってしまう。だから、世間は彼を馬鹿にする。 しかし、実際は、熊太郎の脳内おしゃべりは理屈に

        • 📕 パンク侍、斬られて候

          町田康、著 パンク侍、斬られて候 舞台は江戸時代だけれども、けっして時代劇ではない、町田康の小説。 浪人、掛十之進は報酬欲しさに、宗教団体[腹ふり党]の討伐を目論む。 そして、内輪揉めに利用とする権力者の影。 しかし、教祖はすでに死んでおり、腹ふり党はすでに解散していた… 偽腹ふり党をでっちあげたことで、世界は地獄へ落ちようとしていた。 脳内おしゃべりをそのまま小説にしてしまっているような文章は、まさにカオス。もしくは、脳内絵画を、か。 地獄と化していく世界を通し

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        • 📚いろいろな小説
          6本
        • 📚安部公房
          13本
        • 📚平野啓一郎
          4本
        • 📚村上龍
          9本

        記事

          📕飛ぶ男

          安部公房、著 飛ぶ男 ある日のことです。 いつもながら、ふらりと書店をのぞいてみます。 私、なにかと感動は薄い人間ですが、 面陳された本を目にして思わず、おぉ…と唸ったのは、そのときがはじめてだったような気がします。 安部公房生誕100年。 いや、そこではありません。そういうのはよくある光景でしょう。 私が感激したのは、安部公房フェアで幾つかの名作が並ぶなかに、幻の1冊があったからです。 その名は、飛ぶ男。著者が最後に残したとされる未完の1冊。ついに文庫化。 ある日、

          📕けものたちは故郷をめざす

          安部公房、著 けものたちは故郷をめざす ソ連軍が進行してくる敗戦前夜の満州。 久木久三はまだ見ぬ故郷に想いをよせる。 安全地帯にいることもできたはずなのに、あえて危険な道をいく、久木久三。それは勇気か、それとも無知ゆえか。道ゆく先々で不条理が待つ荒野をさまよい歩き、遥か先の日本を目指す。 素性のわからない男を隣に、先の見えない荒野をサバイバルしていく緊張感は、他の安部公房小説では味わえない面白味だ。 久木久三の思慮の足りない行動を見ていると、他人事とは思えない。不条理

          📕けものたちは故郷をめざす

          📕壁

          安部公房、著 壁 ある日、目覚めると、主人公は自分の名前が無いことに気がつく。自分が自分であることをもはや証明できない。 社会に馴染む名刺、 瞳に吸い込まれていくラクダ、 マネキン人形の恋人、 そして、壁になる主人公。 昭和の臭いが漂う、セピア色の不思議の国、といったところか。それとも、世のなか理解できない壁だらけの現実か。

          📕カンガルー・ノート

          安部公房、著 カンガルー・ノート 脛にかいわれ大根が生えてきた。 病院へいくと、ベッドに拘束されてしまう。 療養のためと、硫黄温泉へいくことに… ベッドは走りだす。 果たして、夢か現実か? ブラックユーモア満載の地獄めぐりがはじまる。 安部公房作品のなかでは比較的、読みやすい内容。小鬼たちが、賽の河原で案内料を徴収しているのには笑えた。走るベッドによるツーリングもシュールな感じだ。 著者が病床で書いたとされる、この作品。 死を笑ってやるというメッセージなのかもしれない

          📕カンガルー・ノート

          📕 第四間氷期

          安部公房、著 第四間氷期 博士である主人公は、予言機械(いまで言う、汎用人工知能みたいな存在かしら)を開発した。 その機械は人間の脳の動きから、人格を再現し、未来まで予想する。 試しに、どこにでもいる中年男の未来を予言させたことから、予想もできないような方向へと転がっていく。 地球が海へ沈むという未来。密かに売買される堕胎された胎児。水棲生物を研究する病院。そして、結びつきのないそれらの出来事を指示する、もうひとりの自分の存在… 世界はなぜ滅びなければならないのか?

          📕飢餓同盟

          安部公房、著 飢餓同盟 ある地方都市。 力なき個人たちは、権力に対して革命を誓った。彼らは何かしら飢えていた。情念、その飢えを満たすため、秘密結社、飢餓同盟が結成される。 発電所の開発を夢見て、自分もまた権力者になろうとする主人公。しかし、その皮肉が同盟にひびを入れ…そして、権力者たちも黙っているはずがなく… 力なき個人がユートピアを夢見るのは許されないのか? 権力者たちは飢えた者が満たされるのを許さない。満たされている者が、より満たされ、飢えた者に施す。そうやって、満

          📕密会

          安部公房、著 密会 ある日、突然、妻が救急車に連れさらわれる。 その先は、迷宮のような巨大な病院。 そこで待つ、病院を支配する、または支配される人々。 盗聴器を設置し、病院内のすべてを把握する副院長。他人の下半身を切断して作った脚を装着している。その姿は馬人間。 骨が溶けていく奇病に罹った少女は、常に発情しており、はばかりなくオナニーをする。試験管ベビーとして生まれた不感症の女秘書はトレパン部隊を従える。そして、オルガズムを見世物にされる仮面女たちは、馬人間の実験台にさ

          📕方舟さくら丸

          安部公房、著 方舟さくら丸 核戦争の時代に備え、広大な採掘場跡に地下シェルターを建設中の主人公。あだ名は、豚もしくはモグラ。 彼に選ばれた人間のみがシェルターでの暮らしを許される。そのはずが、ひょんなことから、生き延びるための切符は思いがけない人々へ渡ってしまう。ユープケッチャという虫を売る元自衛隊員の昆虫屋、客引きのサクラ、結婚詐欺の過去をもつ女… そして、4人のシェルター暮らしを邪魔するように現れる、高齢者清掃団体、不良グループ、モグラの父親。 チケットを取り戻

          📕他人の顔

          安部公房、著 他人の顔 研究員である主人公は、研究の事故で自分の顔に重症を負い、周囲の目を気にしはじめる。顔の変貌によって、これまでの人間関係がぎこちなくなってしまう。それは妻に対しても同じだった。 人工皮膚の面を作り、別人になることで妻の気を惹こうと試み、成功する。 しかしそれは、妻の裏切りを知ることにもなり、主人公は自分の面である別人に嫉妬さえしてしまう。 妻を許せない気持ちは殺意へと変わっていき… 人を認識することの曖昧さ。 人に認識されることの残酷さ。 自分の

          📕燃え尽きた地図

          安部公房、著 燃え尽きた地図 興信所で働く主人公は、依頼人から失踪した夫の捜査依頼を受ける。 依頼人の女から聞いた曖昧な手がかりをもとに、調査を進めようとするも、いく先、いく先で真実は遠のいていく。 そもそも真実などあったのだろうか… 何を探していたのかすら曖昧になり、主人公は自分を見失っていく… 人間っていつまでも何かを求めて生きているけど、それが何なのかよくわかっていないこともあるんじゃないかしら。そうして、考えるだけ考えて、けっきょく何をしたかったのか曖昧になっ

          📕人間そっくり

          安部公房、著 人間そっくり ラジオ番組の脚本家である主人公のもとへ、火星人と名乗る男が現れる。 男は火星について延々と話すも、妄想だと思いうんざりする主人公。 主人公は話の盲点をつこうと試みるも、男の火星論には全くの隙がない。目にしたこともない火星について信じはじめてしまう主人公。 やがて、自分の存在さえ、曖昧なものへと… 脚本家の主人公と火星人を名乗る男の対話?だけで進行する小説。言葉遊びの極致とも思えてしまう。理解を超えたことって無限にあるはずで、そんなものに対

          📕箱男

          安部公房、著 箱男 全国に潜んでいるらしい箱男。 主人公もまた、箱に魅入られたひとりであった。 世間を忘れ、ただ箱男として生きる。 彼が目にするのは、箱に開けた指先ほどの穴から覗いた世界だけ。 そんな平穏な時間も、偽箱男の出現によって、揺らぎはじめる… 常に情報の虜になっている我々現代人。 常に新しい何かを求めなければ気が済まない我々現代人。 常に承認欲求を満たされていないと落ち着かない我々現代人。 脳みそはもうパンク寸前だ。 救済の道は、箱を被ることだけなのかも、