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ジャーナルクラブにClaude 3を使用してみたら・・・その言語処理能力がヤバい!!第7回 UpToDateの要約2—症候について


主な対象者

本記事では、ジャーナルクラブの準備や日々の知識の収集・アップデートでどうしたらいいだろう?と迷われたり、時間がない!と思われている医師(研修医や専攻医を含む)をサポートするプロンプトを紹介しています。
ノーコードで出来る内容を扱っています。
#ジャーナルクラブ #Claude #プロンプト #研修医 #専攻医 #EBM #UpToDate #AIとやってみた

本記事の画像はAdobe Fireflyを用いて生成しました。

はじめに

日常診療に忙しくしている臨床医にとって、医学の進歩についていくのは大変です。日々出版される論文数の増加も著しく全てに目を通すことは不可能で、二次資料を活用することが不可欠です。
ですが、その二次資料ですら、アップデートする領域が増えてきたりその速度が増してくると読み込むのが難しくなっています。
UpToDateは二次資料としての信頼性が高く、初学者の学びや非専門領域のアップデートにおいて定番とされていますが、一つひとつの記事が長く、PDFにすると40ページ以上ということも珍しくありません。そこに英語の壁もあり、とても読みこなせないという方も多いのではないかと思います。

前回、この連載のキモの一つとして、UpToDateの疾患に関する記事の要約プロンプトを作成しました。

今回は、症候学の総説の要約を試みます。「胸痛へのアプローチ」「下痢へのアプローチ」など症状から鑑別診断についてまとめられた総説の要約です。
これまでと同様、無料で利用できるSonnetでの活用を想定しています。

プロンプトの前に  ファイルの添付

本来、UpToDateはWeb上でアクセスすることが多いのですが、ClaudeではWebへのアクセスが出来ないため、要約したいテーマの記事をPDFとしてダウンロードし、添付します。

ファイルの添付はプロンプトを書く前でも後でも良いですが、その際の注意点です。
添付できるファイルにはサイズの上限があり、1個あたり10Mbまで(あるいは20万トークンまで)ですが、余程図の多いものでなければ大丈夫でしょう。ファイル名が長過ぎたり、ファイル名にセミコロン(;)が付いていても添付できないようです。

プロンプト①  役割付与と導入

(ここから)
#あなたは経験豊富で教育能力にも優れた専門医です。
#添付したファイルの内容を、教育効果を最大化する目的でまとめてください。
#以下の指示を実行して下さい。

  1. タイトルと’Summary and Recommendations’を日本語に翻訳してください。

  2. 総説の目的と範囲: 著者が何を伝えようとしているのか、どの範囲を対象としているのか。200〜300字程度で要約してください。

(ここまで)

ここまでは前回の疾患の総説の要約と同じ内容です。

時間がない場合は、'Summary and Recommendations'だけでも目を通せると次のアクションにつなげやすいと思い、この部分の日本語訳の指示から開始しました。

プロンプト②  内容の中核に踏み込む

(ここから)
#続けて、以下の指示も実行してください。1は全体で800〜1200字程度で要約してください。3は200〜300字程度で要約してください。

  1. 臨床的意義: 内容が臨床実践にどのような影響を与えるのかを具体的に述べてください。各項目について、該当があるものについては以下の点を含めて記載してください。該当がない場合は、本文中の別の記事のリンクを紹介してください。リンクもない場合は記載しないでください。

    1. 疫学やリスク因子: 罹患率、有病率、地域差、主要なリスク因子とオッズ比/リスク比

    2. 病態生理: 発症メカニズムの最新知見、遺伝・環境・免疫の関与

    3. 鑑別診断: 症状の原因となる疾患の中で、頻度の高いもの、見逃してはいけないものを列挙し、疾患名、疫学上のリスク因子、特徴的な病歴や身体所見、陽性所見を得る重要な検査についてまとめて、表形式で提示してください。

    4. アプローチ: 病歴や身体所見をとる時の考え方、とり方のエッセンス、各情報の感度・特異度。もしあれば臨床予測規則も。手法については、初学者が分かりやすいように、できるだけ具体的かつ詳細に指導してください。

    5. 診断法: 推奨される診断アルゴリズム、各検査の感度・特異度、新しい検査法の位置づけ

  2. 私の施設でこの結果を適用するとどのような影響がありますか?私の施設は日本の(都市部, 郊外, 農村部, 離島 etc.)にある(高度急性期, 一般急性期, 亜急性期・回復期, 慢性期, etc.)を担当する(大学病院, 市中病院, 診療所, etc.)で、(自施設や診療科の特徴、多い患者層など)です。

  3. 限界と今後の課題: 現時点で明らかになっていないこと、今後の研究課題について。

(ここまで)
2.の括弧内には、当てはまる医療機関の特徴を入力します。例えば私の勤務先だと以下のような形が考えられます。
「私の施設でこの内容を適用するとどのような影響がありますか?私の施設は日本の都市部にある400床の一般急性期〜亜急性期を担当する市中病院で、受診患者は以下の2つの層に大別されます。①一般的な入院治療(外科手術を含む)を受けた後のフォローアップ、②近隣の診療所や高齢者施設からの紹介受診。」
今回は、症候学から鑑別診断を考えるのが主眼になるので、「受診患者」にフォーカスした記載例としました。
この部分は、EBMの5つのステップの4番目である「この情報を自分の患者に適用できるか?」を踏まえたもので、医療機関のセッティングにより代用しています。

以前にも書いた注意点について繰り返しますが、生成AIには一般的に個人情報や企業情報をそのまま入力すると学習材料として利用されてしまう恐れがあります。生成AIによっては学習しないよう指示する方法もありますが、Claude 3では利用されるかどうかは明示されていません。上記のような一般的な表現に留めた方が良いでしょう。

1.1〜1.5は項目も多く個々の記載が薄くなるリスクもあります。特に鑑別診断に関して、代表的なものに留まり網羅性が厳しいことが多いです。ただそうした場合は、本文中の表を参照するよう指定されます。
この表が長くて時間がない時は内容を消化するのが大変なことも多いのですが、このプロンプトの次に「表〇を日本語に翻訳してください」というプロンプトで指示すれば、ある程度の質の表は入手できます。

プロンプト③  自己改善を促す

以下のプロンプトを用いて先ほど記載した回答への改善を促します。今回は疾患の総説の場合と違い、この自己改善で得られるものが大きく、是非とも行うことをオススメします。

(ここから)
#続けて、以下の指示も実行してください。

  1. 先ほどの臨床的意義の1〜5について、読者をその総説の分野が専門ではない医師と想定し、1〜5の全体について10点満点で自己評価を行ってください。評価のポイントは①医学的な深み、②知識の幅の広さ、③冗長性の有無、④可能な箇所は定量化して記載しているかです。

  2. 7点以下の場合は10点を目指して改善した文章を改めて記載してください。改善した文章全体で800〜1200字程度でお願いします。

(ここまで)

次は、これまでのnoteと同様のTake Home Messageです。

プロンプト④  Take Home Messageを得る

(ここから)

#続けて、以下の指示も実行してください。

  1. 特に持ち帰るべき学びのポイントを3,4個の箇条書きにまとめてください。

  2. この総説のキーワードを5つ、ハッシュタグをつけて提示してください。

  3. 更に学びたい人へ、引用文献の中でおすすめの論文を3~5個挙げてください。挙げた論文一つひとつに対して、特徴を一文で記載してください。半分以上の論文を、本論文の発表から5年以内のものから選択してください。バンクーバー方式でお願いします。

(ここまで)

終わりに

ここまでのプロンプトを用いることで、ものの数分でUpToDateの記事の要点の情報が得られます。細かい部分の確認は時間がある時に行うと良いと思います。Claude 3の言語処理能力は大変優れており添付のPDFファイルの要約という条件なら概ね信頼できるのですが、最後の確認は人間が行う必要があります。その点は忘れないようにしてください。

なお、4つのプロンプトを1つにまとめて一発で要約を作成することも可能です。ですが、(1)個々の記載のクオリティが低下する場合がある、(2)回答が長くなると途中で途切れてしまうことがある、という問題があります。そのため上記のように①〜④のステップ・バイ・ステップとしました。この方法はチェーンプロンプトと言ってClaudeの公式サイトでも推奨されています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今後とも有益な情報を発信していきますので、応援よろしくお願い致します。
本連載はまだまだ継続する予定です。


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