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日本の英語教育について

こんにちは。やまぶきです。
今回もnoteをご覧いただきありがとうございます。

日本で英語の必要性が叫ばれて久しいですが、未だに「英語が話せない」「英語が苦手だ」という方が多いのではないでしょうか。

小学校での英語教育は2020(令和2)年から義務化され、日本の英語教育は変わりつつあります。

これから必要とされる「英語力」を身につけるために、今後「英語」とどのように関わっていくべきなのかとお考えの方はぜひ参考にしてください。 

今回は日本の英語教育についてまとめたいと思います。


1.日本の英語力は?

世界110か国以上で展開している大手語学学校『EF』が、毎年英語能力指数を発表しています。

2022(令和4)年にEFが発表した英語能力指数のランキングによると、日本は全111か国中、80位です。

アジア圏の中で、スコアが高いのは2位のシンガポール。続いて、22位のフィリピン、36位の韓国となっています。中国は62位で日本と同じく「低い英語能力」に分類されていますが、それでも日本よりも高いスコアを取っています。

次に国別にどのような英語教育が行われているのか、また国ごとによる英語事情について紹介します。

2.海外の英語教育は?

(1)シンガポール

シンガポールの英語教育は小学校1年生からはじまり、授業は全て英語で行われます。なぜならば、英語はシンガポールの公用語の一つだからです。

政府などの行政や法令などの司法にあたる文書、交通標識などもなども英語で記述されるため、日常生活で英語を使う機会が多くあります。

シンガポール人の話す英語のアクセントはアメリカ人やイギリス人などの英語ネイティブとは違い、独特なアクセントで「シングリッシュ」とも呼ばれ、英語の中の一つのカテゴリーともなっています。

(2)フィリピン

フィリピンでは、小学1年生から英語の授業を受けます。

授業回数も日本と比較して多く、60分の授業が週5回行われます。小学校から大学まで国語・歴史以外はすべて英語で行われているということも特徴です。

フィリピンで話されている言語は180以上あり、フィリピンの公用語としてフィリピノ(タガログ)語とともに英語が使われており、英語を話す実践の場が多く、ほぼ英語ネイティブとしての状態です。

(3)韓国

韓国も「公立小学校における英語教育の成功要因」の中で、英語教育の成功している国の事例としてあげられています。

義務教育は6歳からで、英語教育は小学校3年生から始まります。英語授業は週3コマ程度です。

韓国では英語は「教育の成功」に欠かせない要素とされており、多くの親が早い段階から英語を個人授業で受けさせているという背景もあります。

(4)中国

中国では2001年から小学校5年での英語教育が義務化となりました。2001年は北京オリンピック(2008年)の開催が決まった年で、オリンピック開催に向けて国をあげてのとりくみが英語教育を加速させたともいえます。

遅れて2005年から小学校3年でも英語の義務教育が取り入れられており、授業回数も4回以上などと多くなっています。

(5)英語教育が成功している国の特徴

  • 英語教育の必須化を早い段階で導入

各国の例からわかることは、英語教育を義務教育の早い段階で導入しているということです。

韓国では1997年から、中国では2001年から小学校の英語教育を必須化しています。

日本は2020年から小学校3・4年生で英語教育を取り入れているので、そういった面で遅れをとっていると言えるでしょう。

  • 英語の授業回数・時間数が多い

各国の英語の授業回数や授業数を調べてみると、日本よりも多いことがわかります。

韓国では小学3年生以上で週3回以上、フィリピンでは小学校1年以上で週5回以上、シンガポールにいたっては小学校1年以上では週15時間以上です。

日本では2020年の教育改革以降でも、小学校3・4年生は週1回、小学校5・6年生以上は週2回程度にしかなっていません。

  • 学校の授業以外で英語を使う機会がある

日常的に英語に触れる機会が多いというのは、言語習得において重要な面を持っています。

交通標識やテレビなどいたるところに英語のある環境は必要です。

日本での普段の生活では、学校の授業以外で英語を使う機会はなかなかないのが現状でしょう。

3.日本の英語教育の現状

文部科学省「小学校における英語教育の現状と課題」の「英語教育をめぐる状況」によれば、社会のさまざまな面でグローバル化が急速に進み、物流や情報だけでなく人や資本も国境を越えて活発な移動が行われる中、国際的共通語である英語でコミュニケーションがとれるようになることが必要不可欠である、と語られています。

さらに、世界では英語を母語とする国でなくても、公用語や準公用語としている国が多く、国際社会のコミュニケーションツールとして機能しています。しかし、日本におけるTOEFL® TESTの平均スコアはアジア諸国の中でも下から2番目と、非常に低い位置にあることがわかっており、日本人が国際社会で今後も生き抜いて行くためには、国家戦略として英語教育が重要な課題である、とも述べています。

TOEFL® TESTだけでなく、TOEIC®でも韓国や中国、台湾よりも低い値であり、世界最大級の語学学校EFが発表した2020年のランキングでも日本の英語レベルは世界100カ国中55位であり、英語力は「低い」に分類されています。

このような現状を踏まえ、文部科学省は2020年度から大幅な教育改革を行いました。具体的には、英語を小学校から必修とし、3・4年生では「外国語活動」としてまずは英語に触れる体験を、5・6年生からは教科として「英語」の学習を始める、というものです。また、これまでの読み書き中心の学習から、聞き取りや会話などによる音声コミュニケーションを中心とした「英会話」教育に主眼を置いた教育になりました。

日本の英語教育が始まったのは、いわゆる黒船来航以降と言われています。それまでの江戸時代では鎖国を行っていたこともあり、必要なのは交易を行っていたオランダ語だけだったためです。しかし、黒船来航により近代化の必要性を悟った幕府やその後の明治政府では、アメリカやイギリスの文化を学ぶため、英語教育も必要だと考えました。

そこで、明治に入るとすでに中学や高校から英語が教科として課されましたが、明治時代、中学以上の学校に行けるのはエリートのみでした。大正になると国民教育が始まるのですが、その後、昭和に入ると世界情勢が悪化し、英米と日本は対立関係となったことから、英語は敵国の言葉であると見なされ、一度、教育過程から消えてしまうのです。

つまり、日本における英語教育の体制が本格的になったのは第二次世界大戦以降であり、アメリカ主導のもと英語教育が始まりました。これにより、戦前はイギリス英語が主流でしたが、戦後からはアメリカ英語が教えられるようになったのです。

また、当時の日本はアメリカを追従するような改良が必要と考えられており、同時に第二次産業の発達から「決められたことを決められた通りにこなせる労働者」が求められたことで、独創性よりも知識詰め込み型の教育が重視されました。このため、書いてあることを正確に読み取る「読み=Reading」と、海外と文書のやりとりをするための「書き=Writing」がメインの教育になってしまったのです。

4.日本の英語教育のデメリットは?

  • 英語教育の目的・ゴールが受験である

英語を学ぶ目的は、受験戦争に勝ち抜くことでした。

ひと昔前の日本では、良い高校を出て良い大学をでるという「学歴」が重視されていました。

テストで良い点をとるための勉強が主となり、和訳や単語・文法の勉強が重要視されてきたわけです。

そして減点方式のテスト。

受験英語の中ではどうしても「点数」をつける必要があり、点数に振り回されてしまっていた結果ともいえます。

  • 英語の学習時間が足りていない

10年間学校で学校を勉強しても英語を話せないという嘆きがあります。

言語習得には1,000〜2,000時間程必要ともいわれているので、実際の英語の学習時間は足りている状況ではありません。

英語の学習時間は見直しされ増えつつある傾向にありますが、それでも中学校で約300時間、高校で約500時間です。

英語は日本人にとって習得しづらい言語。

日本語から英語を学ぶ場合は、アルファベットをまず習うことから始めなくてはなりません。

個人の資質もあるので、単純に〇〇時間が必要とはいえないですが、文字の違いに加え文法構造の違いも考えると学習時間は必然的に多くかかるでしょう。

  • アウトプットの機会が圧倒的に少ない

従来の英語の授業では音読が中心で、アウトプットの機会が圧倒的に少なかったことも理由にあげられるでしょう。

音読はいわゆる受動的な活動で、アウトプットではありません。

学習指導要領では「言語活動」を重視するようになっています。

言語活動とは「実際に英語を使用して互いの考えや気持ちを伝え合う」活動を意味しています。

音読はただ単に音を出して読むだけなので、言語活動には当てはまりません。

もちろん言語活動を行う場合には、音読等をして音声に慣れ親しむということが前提として必要になりますが。

アウトプットの機会が少ないと書きましたが、言語活動という面で考えるならば「互いの考えや気持ちを伝えあう」アウトプットをしていかないといけないのです。

  • 英語教員の英語能力が足りてない

英語を担当する教員の英語能力も大切な要因です。

令和3年度の英語教育実施状況調査によると、CEFR B2レベル(英検準1級)以上を取得している英語担当教師の割合は、中学で40.8%、高校で74.9%しかいません。

英語教育で成果をだしているオランダでの教員の英語レベルは、教員教育コースの入学にCEFR B2レベルが必要です。

  • 英語教員の海外経験が少ない

文部科学省の平成28年度「英語教育実施状況調査」によると、海外にある学校や研修施設へ通った留学経験がある英語教員は、中学校で51.1%、高校で51.3%にとどまります。

内訳はほとんどが1ヶ月〜半年未満で、1年以上の留学経験がある英語教員は中学校では9.1%、高等学校では10.5%です。

もちろん中には、留学経験がなくても高い英語の実力を持っている教員もいます。ですが言語を習得するということは、国の文化を学ぶことでもあります。国際化がますます進む中で、「日本人であることを大切にしながらも」、コミュニケーションをとれる人材を育てるならば、海外経験も必要ではないでしょうか。

  • ALT(外国語指導助手)を有効活用しきれていない

担任(小学校)や英語担当が主であるという前提があるものの、ALTは英語の授業にとって欠かせない存在です。

ALTの採用は市町村の教育委員会によることが多く、地方自治体における財政負担によって、活用状況の地域間格差が発生しています。

令和3年度「英語教育実施状況調査」によると、ALTを授業時数の40%より活用している割合は、小学校では7割以上、中学約3割・高校約1割というのが実情です。

  • 中学生・高校生の英語能力が足りていない

現在の中学生・高校生の英語能力はどの程度なのでしょうか。

CEFR A1レベル(英語検定3級相当)を達成している中学生は、47.0%、CEFRA2レベル(英検準2級相当以上)を取得している生徒の割合は、46.1%です。

※CEFRとは
ヨーロッパ共通参照枠。言語能力を評価する国際指数のこと。

5.日本の英語教育はどう改善するのがいい?

  • 英語教師の英語能力・教授法の強化

英語教師の英語能力の強化は今後も必須です。教える立場の人間の英語能力があることは前提条件で、採用時だけでなく適宜英語能力や教授法の研修が必要でしょう。

ただ実際のところ、教科指導以外にも部活動・行事・生徒指導とやるべきことは山積み。

自分の英語能力を向上させるための時間を確保するのは、なかなか難しい現状もあります。

  • より一層「聞く」「話す」を重視した英語の授業

日本人の苦手分野である「聞く」「話す」に重点的においたカリキュラムがより必要になるでしょう。

そのためには、「英語」で授業を行うのが大前提になり、必然的に授業を担当する教員の英語能力の底上げが必要です。

  • 英語脳:英語で考える思考回路に

英語で考える「英語脳」を作るには「日本語」を介在させないのも大切な点です。

小学校3年生からの英語教育の必須化は、他の国に比べて遅れをとってはいるものの、幼少期から「英語脳・英語耳」を育てるという面ではとても意味あることです。

英語には日本語にない音やリズム感があります。

低年齢で英語に触れることは、英語を英語のまま理解できる「英語脳」を育てることにもなります。

ただ3年生の必須化は喜ばしいことではありますが、年間に70コマというのは、「たった」70コマといってもいいかもしれません。

6.今後の政府の方針

日本での英語教育の今後の政府の方針について、文部科学省の提言をもとに解説します。

(1)小・中・高を通じた指標の設定

小学校・中学校・高等学校それぞれでの指導改善は進んでいるものの、それぞれの学校間で連携が取れているとは言えず、それまでの学習内容を進学先で生かせていない状態です。そこで、小学校・中学校・高等学校を通じて各段階での学びを明確に英語の4技能ごとに「英語を使って何が出来るようになったか」という視点からの一貫した教育目標とすることで、学校間での連携を取りやすくしました。

(2)学校の評価や指導を改善

学校教育における指導方法や評価は、これまで受験用の英語ばかりが学習されてきたように、読み書きを中心とし間違いを許さない精読が求められてきました。しかし、テストの点数ばかりを気にしたり、失敗を恐れてコミュニケーションがとれないなどの事態は改善されなければなりません。つまり、全く新しい指導や評価方法が求められるのです。

そこで、学習指導要領はふまえながらも、読む・書く・聞く・話すの4技能に関して「英語を用いて何が出来るようになるか」という観点から学習到達目標(CAN-DO形式)を設定し、指導・評価方法を改善する努力が行われています。例えば、面接・スピーチ・エッセイなどのパフォーマンス評価などを活用すれば、積極的に言語をコミュニケーションツールとして用いることへの評価につながります。

(3)高校・大学入試での英語の扱いを変える

高校入試や大学入試における英語力の評価は、4技能を使った総合的なコミュニケーション能力がきちんと評価されるような試験にすべきだ、と考えられています。民間の資格・検定試験を活用するなども含め、各大学の入学者受入方針などとも整合性をはかりながら、指針づくりを進めていかなくてはなりません。

(4)指導体制の強化

例えば、小学校で指導計画の作成と授業は学級担任、または英語担当教師が中心となって行うが、授業の内容はネイティブスピーカーや英語に堪能な地域の人々の協力を得たりして進めて行く、などより高度な英語力を持つ人材による指導体制の充実がはかられています。前述のALT(外国語指導助手)なども同様の取り組みです。

また、小学校教員が自信を持って指導に当たれるよう必要な研修を行ったり、英語免許の取得を推進したり、中・高等学校においては現職教員に対する研修を充実させたりすることも重要です。このような教員スキルの底上げはもちろん、授業体制も習熟度別、少人数制、チーム・ティーチングなどきめ細かな指導体制を行う環境の整備も求められています。

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