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【薬剤師】アルツハイマー型認知症の新薬について

こんにちは。やまぶきです。
今回もnoteをご覧いただきありがとうございます。

今回は、アルツハイマー型認知症の新薬についてまとめたいと思います。


1.従来薬

現在、日本で承認されているアルツハイマー型認知症の治療薬は4種類あります。いずれも神経細胞を保護することによって、中核症状の進行を一時的に抑えることができますが、進行を根本的に抑えることはできません。

(1)ドネペジル(アリセプト🄬)
・作用機序:中枢性コリンエステラーゼ阻害
・特徴:軽度~高度のアルツハイマー型認知症に対して適応を持つ、1日1階の服用でよいので介護者の負担が軽い、消化器症状の副作用に注意が必要である
(2)ガランタミン(レミニール🄬)
・作用機序:中枢性コリンエステラーゼ阻害
・特徴:軽度のアルツハイマー型認知症に対して適応を持つ、消化器症状の副作用に注意が必要である
(3)リバスチグミン(リバスタッチ🄬)
・作用機序:中枢性コリンエステラーゼ阻害
・特徴:軽度のアルツハイマー型認知症に対して適応を持つ、貼付剤のため嚥下困難な場合でも治療可能である、皮膚症状の副作用に注意が必要である
(4)メマンチン(メマリー🄬)
・作用機序:NMDA受容体遮断
・特徴:高度のアルツハイマー型認知症に対して適応を持つ、めまいの副作用に注意が必要である、中枢性コリンエステラーゼ阻害薬のいずれかと併用できる

2.アデュカヌマブ(アデュヘルム🄬)

2020年12月10日、バイオジェンとエーザイはアデュカヌマブについて厚生労働省に新薬承認を申請していましたが、2021年12月22日に厚生労働省は承認を見送り、継続審議する決定を下したと報じられました。

脳神経細胞の外にアミロイドβタンパク質がたまり老人斑(アミロイド斑)ができることによって、脳神経細胞の中にタウタンパク質がたまり溶けにくい繊維の固まりができて(神経原線維変化)、その結果脳神経細胞が死んでアルツハイマー型認知症を発症すると考えられています。

アデュカヌマブはアミロイドβタンパク質の除去を促進することによって、症状の進行を抑制できます。この薬によって認知機能の低下に進行を22%抑制することができたというデータもあります。

しかしながら、アデュカヌマブは大きな注目を浴びた一方で、大きな問題もはらんでいます。アデュカヌマブは効果が認められなかったとしてアメリカで臨床試験がいったん中止されており、改めて解析した結果効果が認められたとしてまた再開された後に深刻な病気の患者に早期の治療を提供するための「迅速承認」という形で2021年6月8日に承認されるという異例の経過をたどりました。その経緯を巡っては専門家委員会がアデュカヌマブの有効性を疑問視し承認の是非を巡って大論争が起きました。

臨床試験のデータでは、誰もが納得できるような有効性や安全性は認められないとして、日本やEUでは承認が見送られました。しかし、もし客観的なデータが揃って承認された場合、「認知症は治らない病気」という常識に一石を投じるかもしれません。

3.レカネマブ(レケンビ🄬)

2022年9月28日、バイオジェンとエーザイからアルツハイマー型認知症の新薬「レカネマブ」が発表され、2023年12月13日発売されました。

レカネマブはアミロイドβタンパク質の固まりになる直前になる状態に作用し、免疫反応でこれを脳から除去することによって、症状の進行を抑制できます。。

エーザイが発表した臨床試験の結果によると、全般臨床症状の評価指標であるCDR-SBスコアの平均変化量は、レカネマブ投与群がプラセボ投与群と比較して27%の悪化抑制を示しました。

認知症の世界的権威として知られている順天堂大学医学部名誉教授の新井平伊先生によると、現在使われている従来の薬と違い、継続的に症状の進行を抑制できる点で優れていますが、その効果はそれほど大きいものではありませんが、この薬が優れているのは、1年以上経過しても効果が持続している点です。副作用については、ベネフィット(利益)を考慮すれば、リスクは比較的少なく、日本でも承認される可能性は高いのではないでしょうか。

事実、このインタビューの後、2023年8月21日に厚生労働省はレカネマブを承認しました。

ただ、薬価が高く、年間で数百万円単位でかかりそうなことに加えて、対象者をどうスクリーニングするかについてなど、まだまだ検討すべき課題が多くあります。

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