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クマスプレーのレンタルサービスをはじめます in 帯広

北海道の登山を通じてクマスプレーは必須アイテムであると実感した経験やレンタルサービスをはじめた経緯の話になります。


■はじめに

”クマスプレー”をご存じですか?

クマスプレーとは、クマが迫ってきた際にクマの顔(特に目鼻口)をめがけて噴射し、撃退することを目的にした携帯用のスプレーです。熊撃退スプレーあるいはベアスプレーともいいます(※)。強力な催涙スプレーのようなもので、毒性はありません。

クマスプレーは北海道での登山やアウトドアでは欠かせない必須アイテムだと思っています。ただ、私のように都内から飛行機で北海道に訪れる登山者にとっては、いろんな意味で調達が難しいアイテムでもあります。

「北海道の山に登りたいのにヒグマ対策はどうしようか?」など”私と同じような悩みを持っている方もいるのではないか”、そう思ったときに思いついたのがクマスプレーのレンタルサービスです。

※『クマスプレー』や『熊撃退スプレー』は有限会社アウトバック社の代表者が考案した造語とのことです。

有限会社アウトバック(岩手県盛岡市手代森16-27-1)社の
パンフレット『本物の熊撃退スプレーはこれだっ!!』より

■”クマスプレーは必須”と感じた背景

2023年は、熊による被害がクローズアップされた年でしたが、統計的にも近年増加傾向にあります。全国の被害者は217名と前年の約3倍です。
そのうちヒグマによる被害者は10名、内死亡者は2名です。

ヒグマによる被害状況(2024年4月現在)

被害の多くは、山中あるいは麓で発生しています。
2023年10月には、大千軒岳で大学生がヒグマに襲われ死亡しました。登山中のヒグマによる死亡は53年ぶりのようです。
登山中にヒグマに襲われることは希かもしれませんが、もしクマスプレーを携行していれば、状況は変わっていたかもしれません。

登山を通じた実感

ヒグマと人の接触の兆候は、大雪山(北海道)の登山を通じて薄々と感じていました。そのため2023年は、シーズンを通してクマスプレーを携行して登りました。

私は、大雪山に年に4、5回登り、そのたびに3日ほどテント場等で過ごしています。2018年シーズンまではヒグマの存在を気にすることはありませんでしたが、2019年シーズンに初めて出会いました。

はじめて出会ったヒグマ

2020年シーズンは、コロナ禍と白雲避難小屋の建て替えのため、あまり登らなかったため会うことはありませんでしたが、登山道に生新しい糞があるなど気配を感じることは数度ありました。

2021年シーズンからは出会う頻度が増えたため、熊鈴は必ず鳴らすようにしました。そして2023年シーズン。7月上旬に登った際にはじめて仔連れのヒグマに会いました。400m程度離れていたため2頭の仔がじゃれ合う姿を微笑ましく見ていました。ただ、近距離だったらそんなことは言ってられません。子連れの母熊がもっとも危険と言われていることも知っています。

2023年7月上旬に出会った親仔(雪渓の右端にもう一頭の仔)

この親仔が白雲避難小屋のテント場に入ってくるようになり、7~8月は白雲避難小屋やテント場が閉鎖になりました。閉鎖が解除された9月に登った際も白雲岳から見下ろしたハイマツが茂る広尾根に親仔はいました。
仔は、7月に会ったときと比べずいぶん大きくなっていました。

2023年9月に再会(?)した親仔

もうこのあたりは彼らの生活圏内なのでしょう。ヒグマの寿命は20~30年のようなので、来年この仔たちが独り立ちしても、しばらくは共存するしかないと思っています。

大雪山でのヒグマとの出会いの詳細は、次の記事で紹介しています。

クマスプレーの調達と保管

「2023年シーズンはクマスプレーを携行した」と書きましたが、都内から飛行機で北海道を訪れる私にとって、自宅からクマスプレーを持って行けないという問題をクリアする必要がありました。

クマスプレーは飛行機への機内持ち込みも手荷物としても預けることもできません。だったら北海道で調達すればいいわけですが、帯広市(※)に購入店を見つけることができず、レンタル店も見つけられませんでした。
※大雪山に登るときは十勝帯広空港経由で行くため

ただ、購入できたとしてもヒグマ用のクマスプレーは2万円程度と高いのです。命を守るためとはいえ、北海道での登山のたびにこのコストは痛いです。また、クマスプレーを使い捨てにすることは、環境にも全然優しくありません。

幸いにして、帯広市の友人宅に預かってもらうことができ、問題は解決しました。Amazonで注文し、友人宅に直接配送してもらいました。クマスプレーには4年程度の使用期限がありますが、しばらく使えるので費用対効果は十分だと思っています。

■クマスプレーレンタルサービスの経緯

私の場合は、友人のおかげで余計な手間やコストをかけずにクマスプレーを携行できましたが「同じような悩みを持っている方もいるのではないか」、そう思ったときに浮かんだのがクマスプレーのレンタルサービスです。

道内の方でも登山などのアウトドアの初心者やたまに山に出かける方にも使ってもらえるのではないかと思っています。

既存のクマスプレーレンタル店

北海道内でクマスプレーをレンタルしている会社を検索すると数件ヒットします。その中の数店舗は最近オープンしているようでした。クマスプレーのレンタルがオリジナルのアイディアではなかったのはちょっと残念ですが、先行者がいるということは需要がある証だともいえます。

なお、私が利用している十勝帯広空港から登山口までの経路には同業者はいないようでした。

起業の決意!

とはいえ、ただ大雪山が大好きなだけの私に本当にできるのか。。。

でも、気軽にクマスプレーを携行し、少しでも心に拠り所を持って山に入ってほしい。

そして、あの美しい景色や自然を共有したい。

人もヒグマも最悪の事態にならないでほしい。

私自身も大好きな大雪山にもう少し関わりたい。

この気持ちで、まずは小さくてもいいのでレンタルサービスをはじめようと起業を決意しました。

■さいごに

大雪山に限らず北海道であればどの山にもヒグマは住んでいます。
ただ、そばに居たとしても人の気配があれば出てくることはまずありません。人を襲ったことがないヒグマは人が怖いのです。
そのため山では最低限、熊鈴は常に鳴らす必要があります。
会わなければ事故は起こりません。

ただ、沢の近くや作業に集中しているときなどに遭遇は起きています。
私も花の撮影に夢中になって10分ほどじっとしているときに近くのハイマツからヒグマが現れました。

クマスプレーがあれば100%安全とはいえませんが、万が一の際の最後の砦になります。
もしもに備えてクマスプレーを携行してほしいです。


■クマスプレーのレンタルサイトの紹介

2024年5月下旬オープン予定です。


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