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NEWS「アメリカ中間選挙結果」

l  勝敗

11月9日にアメリカで中間選挙が実施された。中間選挙は元々、政治に対して関心の高い層が投票に行くという傾向がある。今回は、そう言った層に加えてインフレ、人工妊娠中絶問題や民主主義など国民自身に直接的に影響のある論点が多いため、通常よりも選挙参加者が多いと予想される。
肝心の勝敗であるが民主党が下馬評を覆して善戦している。バイデン大統領も結果が出ていない中での会見で終始、安堵したような表情を浮かべていた。他方、共和党は目論見通りに行かずヤキモキとした結果であろう。しかし、善戦したとは言え負けは負けである。民主党は下院で過半数を失った。これにより議会は動かなくなってしまった。大統領が民主党で議会は共和党というねじれを作ってしまった。民主主義は往々にして多数決で物事が決まるため議会と大統領が違う党であると法案が中々、通過し辛くなってしまう。下手するとレームダック化しオバマ政権と同じ道のりを歩むことになる可能性がある。

l  トランプ氏の影響

 今回の中間選挙を通して未だにトランプ氏は著しい力を共和党内に有していることが判明した。今回、共和党から出馬して当選した候補者のほとんどがトランプ氏からの推薦を得ていた。これにはある種のカラクリがあって、現状トランプ氏から推薦を得られなければ選挙資金を獲得できない構造が出来上がっている。アメリカではロビー企業や大富豪がこぞって自己資金を選挙に投入している。一説によれば、大手メディアを駆使してもどれだけの資金が選挙に投入されたかを把握できないとも言われている。この様な状況で、共和党より立候補するためにはトランプ氏の後ろ盾が必須になっていると言える。
 一方で、国民全体で見たときにトランプ氏の影響が絶大かと言われると疑問符が吹くところである。今回の選挙では最終盤になるにつれてメディアが民主主義の問題を世論調査の中で強調する様になった。アメリカのメディアは党派色を出すため一種の戦略とも言えるが、衝撃的な議会襲撃事件を再び思い出すには十分だった。無党派層には受け民主党の票を伸ばす手助けになったかもしれない(単純に多様化し人口動態が変化したため民主党が存外の結果を得たと指摘する人もいる)。

l  今後の議会運営

さて今後の議会運営であるが、共和党が下院をとったことで上述したように動かない議会が誕生した。バイデン政権としては、これまでインフラ法案や気候変動対策、コロナ対策などバイデン大統領自身が実行したい政策を通すことができていた。しかしこれからは、バイデン大統領は共和党議員にも賛同できるような法案作りをしていかなければならない。特に、予算については下院が権限を握っているため、共和党に譲歩する必要がある。アメリカは党議拘束がないため比較的、民主党の政策に賛同できる共和党議員に対して積極的に働きかけを行うと考えられる。いずれにせよ、2年後は大統領選があり今後も目が離せない。


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