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AIブームは「これで最後」なのか?

いまはAIブームの真っ只中だが、過去にも何度かブームがあったようだ。

一番最初のブームは、まさにコンピュータそのものが誕生したときだ。コンピュータが誕生した時点で、すでに「コンピュータに思考させる」ことのコンセプトはあった。

コンピュータ登場以前はすべてのことを人の手で行っていたのだから、自動で結果を返してくれるコンピュータの存在はさぞ衝撃的で、いずれはすべての作業をコンピュータがやるようになるに違いない、と思った人は多くいたことだろう。

いまではパソコンやスマホを個人で使うのが当たり前の時代だけれど、昔はもちろんそんなものはなかった。そもそも、いまの端末の性能からしたらおもちゃのようなものである。それでも、人間ではなく機械が自動で計算をしてくれる、というだけで画期的なことだったのだろう。

当時の人は、「機械にすべてのパターンを記憶させれば、どんなことでも機械が自動で応対してくれる!」と思ったに違いない。が、実際にはそれほど簡単なことではない、ということに気づく。

現実世界に存在するあらゆることのパターンは無数に近く、すべてをプログラムすることなんてできないし、仮にできたとしても「適切な応対をしてくれる」人工知能には程遠い。たとえば外国語を翻訳するといった作業は、単純に単語を置き換えているだけでなく、文脈に応じていろんな単語の意味を変換している。

要するに最初の段階では「人間がやっていることを機械に置き換える」だけなのだが、これが本当に難しい。人工知能の研究とは、人間の知能の研究であり、人間がどういうことを思考し、実行しているのかを解明することに近い。

コンピュータというものが世界に誕生してから、何度も「人工知能はすごい!」「やっぱりダメだ!」というのを繰り返してきた。だが、その期待と失望はついに終着点に辿り着いたのだろうか。やはり、ChatGPTをはじめとする現代の生成AIの登場が歴史的にも大きな転換点となりそうである。

今までにもチャットボットというのはあったけれど、それほど賢いものではなく、自然な会話というよりは指示された言葉を再現するのがせいぜいだった。

ChatGPTはそれらとは確実に一線を画す。明らかに会話が成立しているし、人間には思いつかないようなアイデアも出してくれる。文章の翻訳どころか、要約してくれたり、ゼロから生成すらしてくれる、と。

素人からしたらそういった変化についてはただ一言、「すごいなあ」なのだが、いまはAIの技術分野の進歩がすさまじい。ChatGPTはOpenAIという会社が開発したものだが、GoogleやMicrosoftも参入していて、それぞれ自社サービスを展開している。

インターネットの普及によってGAFAが台頭してきたように、このAIの時代をどう乗り越えるかで、次の覇権企業が決まってくるのだろう。もともとパソコンやインターネットの世界は変化の激しさから「ドッグイヤー」などと呼ばれていたが、AIの世界におけるスピードはその比じゃないらしい。それこそ、毎日、毎時間、世界で革新的なことが新しく起きているのだとか。

しかし、その技術革新の渦には僕は全く参戦できない。厳密にいえば、chatGPTを日常的に利用することで微小に関わっているといえるが、影響力はほぼゼロといっていいだろう。

戦後、高度経済成長期の頃なら、日本の発展にたとえば工場で働く工員として貢献することができたかもしれないが、AI時代においては、そういった知能や技能を持たない人は1ミリもそこに参加できない。まあ、なんともシビアな世界ではある。

まだここまでAIが急速に発展する前は、AIが十分に発達したら人間の知能は解き明かされるんだろうな、と思っていた。人間の頭脳はコピーすることができないが、コンピュータのプログラムであれば、コピーすることができる。もちろんプログラムの中身を覗くこともできる。だから、どういうメカニズムで思考が行われているかが解明されるだろう、と。

しかし、実際にAIが人間の知能に迫り発展してわかったのは、AIがどういう原理で思考しているか「わからない」ということだった。機械学習で自動的に学習させて、自ら学んでいくAIは、中身をのぞいてみてももはや人間にはなんでそうなるのか仔細にはわからない、という。アルゴリズムも、それを見ることはできるのだろうが、それがなぜそうなるのかはもはや人間には理解できないのだろう。

生成AIはもちろんそうなのだが、将棋AIのようなものでさえそうらしい。いまは人間の棋士をはるかに凌駕する「強い将棋AI」があるが、どういう仕組みで思考しているのか、細かなところは開発者でもわからない。開発者はAIをプログラミングするが、自動で考え、自動で強くなるAIなので、完成したアルゴリズムがどう作動しているかは複雑すぎて読み解けないのだ。

もっともっと人工知能が進歩していくと、そのうちAI研究者も不要になってくるのだろう。そのとき、「覇者」はどういう原理で決まるのだろうか。

なんか、これは果てしない問いであり、自分の手には持て余すようだ。しかし、思考することで少しは前進するかも。

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