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渡辺惣樹「虚像のロシア革命 後付け理論で繕った唯物史観の正体」

渡辺惣樹「虚像のロシア革命 後付け理論で繕った唯物史観の正体」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
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2020年から2年間にわたって月刊WILL誌上に連載された「ロシア革命再考」の書籍化。著者による第一次世界大戦の分析と総括である。現代の国際間諸問題にも通じている。これまで協商国よりだった歴史が、同盟国側の苦衷から見て論じられている。日本のみならず世界中で横行している、米英に都合の良い報道や世論の欺瞞を暴いている。特に英国🇬🇧の歴史的政治家として称えられるチャーチルの虚栄心や好戦姿勢が引き起こした愚行について、事の発端を求めている。一方で国際連盟の産みの親とされる、アメリカ🇺🇸大統領ウィルソンの外交オンチにも言及している。ロシア革命は歴史の必然ではなく「風が吹けば桶屋が儲かる」結果であった。
 ここで著者が声を大にして伝えたいことは次の2点。
1️⃣チャーチルは狡い。
・英国海軍の力を誇示して、自らの首相就任を演出しようとした海軍大臣・チャーチル。アイルランド紛争から自国民の眼をそらす目的もあった。墺(オーストリア🇦🇹)・セルビア🇷🇸の争いに英国が参戦。このことで局地紛争が世界大戦に発展した。自分さえよければ、自国さえよければいいという身勝手な行動。
2️⃣世界の平和はチャーチルによって壊された。
・ドイツ🇩🇪からの和平申し出を無視して、米国🇺🇸を無理矢理に戦争に引きずり込んだチャーチル。困窮したドイツがボルシェビキ(レーニン)の支援という対露停戦策に走った。その結果、共産主義の名の下に恐怖政治が始まった。第一次世界大戦の戦後処理における「ベルサイユ条約」の極端な不公平も、ナチスドイツの台頭を招いた。アメリカの日本🇯🇵への原爆投下も、躊躇うルーズベルト大統領の背中を押した。
 久しぶりに世界史の本を読んで、興味深かった。ボリシェビキ、メンシェビキ、トロツキー、スターリン、10月革命、血の日曜日、ソビエトなどということばを聞いたのは何年ぶりだろうか。自分の学生時代には、学生運動は既に終わっていたので、机上の空論だった。共産主義が生まれたのは、欧州列強の駆け引きの結果。最後は強引に暴力革命を唱えたレーニンの一発逆転勝利。「共産主義は歴史の必然ではなかった」と著者は述べるが、しぶとく自らの可能性を信じて疑わなかったレーニンという狂信者の勝利だったのかもしれない。それと現在のウクライナ🇺🇦情勢は、ロシア🇷🇺の側から見れば、ベルサイユ条約で苦渋を飲んだドイツと同じ状況なのかもしれない(擁護はしないけれど)。


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