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目黒駅周辺で唯一の立ち喰いそばが消滅

目黒駅前を通っていてハッとした。駅の真向かいにある立ち喰いそば「田舎」が閉店していたのだ。それも去年の8月。もう半年も前のことだった。目黒駅は山手線のターミナル駅でありながら、周辺になぜか立ち喰いそば屋がない。小諸そば、富士そば、ゆで太郎は一軒もない。唯一「きらく」があるが、これは目黒駅構内なの入場料を払わないと入れない。加うるに「はなまるうどん」はあるが「丸亀製麺」もない。もちろん座って食べる蕎麦屋は数軒ある。このような立ち喰いそば砂漠の中で唯一気を吐いていたのが「田舎」だった。チェーン店ではなく独立系で、年配のおじさんが一人で切り盛りしていた(ときどきお釣りを届けに来ていた年配女性がいたが、あれは奥さんだったのだろうか?)。ある意味で目黒駅前を象徴するお店であった。
 味もそこそこ美味しいし、安くて気楽に行けた。いつもだいたい春菊天やイカ天を乗せて、そばよりうどんを食べていた。細くて柔らかい茹で麺だった。吹きっさらしのお店で、なぜかいつも雨だの雪だの悪天候の日に行っていた。ここで面白かったのは、大将の世間話。周辺のキャバクラ嬢の噂話とかを、馴染みの男性客に聞かせていた。彼女たちはお店の営業が明けた朝方にやってきて、身の上話をするそうだ。その内容は、世の中の景気不景気や世知辛さを反映していて実感のこもったものだった。ざっくばらんな大将だからこそ、女性たちも心を開いてペラペラ喋っていたのだろう。50年以上の営業だそうだったが、大将が身体を悪くされたのか(もともと腰や頸椎を痛めていたとか)、コロナ禍が経営を追い込んだのか。なくなるその時に立ち会えなかったのが残念である。そしてこれから立ち喰い蕎麦を食べたくなった時、われわれ目黒駅周辺の人々はいったいどうすればいいのだろうか。
https://tabelog.com/tokyo/A1316/A131601/13113507/

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