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【エッセイ】餃子

 平日の昼に餃子を包む。皮の外側の端には人差し指で小皿に注いだ水を塗りつけ、ニラやキャベツ、ネギなどを混ぜた野菜たっぷりのタネを乗せ、空気を逃しつつ、しっかりと半分に折りたたむ。餡を沢山入れたいがためにひだは寄せずにただ閉じるだけ。
 母と妹、三人が集まって台所のテーブルを囲み、黙々と作業を繰り返していったのだがいざやり始めれば、妙に張り切って、いつ終わるのかも全く予想のつかない目標の五〇個に達するまで大して時間ははかからなかった。それにしても家族で協力し合ってこの料理に取り組むのはいつ以来だろう。昔はよく手伝ったが、当時は丁寧さが欠けてて外見が歪だったり、具を挟みすぎたせいで中身が飛び出すなどと失敗ばかり。経験を重ねるにつれ少しずつ技術が身につき、要領を得て、理想的な形に近づけたんだと思うと感慨深いものがあるし、久しぶりといえども、皆慣れており順序良く進行する様はリズミカルで痛快だ。

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