29歳になりました。

29歳になりました。誕生日おめでとう、私。

28歳は、自分の枠が緩やかに伸びていく様子を見ていた。これまで自分だと思っていたものは何とも曖昧で、確かな自分というものはなかった。

あまりにも身体が痛くて痛くて、とうとう起き上がれなくなるくらいに痛くなってしまって、これはついに身体と真剣に向き合わなければならない、さもなければ死ぬと切羽詰まった気持ちからヨガを始めた。何かを新しく始めるときの、自分の身体に馴染まない感じがものすごく苦手で、どこか演技しているような感じがあって、いつだって逃げ出したい気持ちになるけれど、その先に待っているのはどう考えたって早死で、死にたくないので続けた。今ではすっかり慣れて、身体が凝り固まってくると自然にヨガしようと思う。

それで自信がついたのか、さらにボルダリングも始めた。最初は一番下のレベルを一つか二つ、ものすごく頑張って登れるくらいで、自分でも笑ってしまうくらい出来なかった(別に出来ないからって自分を笑う必要なんてないのに笑ってしまうのが私の悪いところだと思う)。それでも素直に楽しかったし、もっと上手になりたいと思って通い続け、今は一番下のレベルならだいたい登れるようになった。週一で通っても上手くならないね、週二で通わないとだめだね、というくらいに真剣である。ダブリンの友達に言ったら、「ゆかがボルダリングしているところなんて想像できないけど!?」とびっくりされた。

私も、こういうのは自分じゃないと思っていた。自分じゃないと思っていたものは、何ともあっさり自分になった。自分を変えるのがこんなに簡単だとは思わなくて、拍子抜けしてしまった。今まで思っていた自分とは何だったんだろう。

優柔不断でいつまでも悩むこともあれば、すぱっと直感で決められるときもある。面倒臭がりだからすぐ部屋がごちゃごちゃになるけれど、面倒臭がりだから食後の片付けを楽にするために料理しながらどんどん片付ける。本当に友達だと思っている人たちのことをすごく大切だと思っているはずなのに、他人は究極どうでもいいと思っていたりもする。

自分で自分がよくわからないなぁと思う。複雑で曖昧で不確かな自分は不安になるけれど、この矛盾した存在がそうか自分なのかという気がする。

曖昧な私は、これからも自分の存在が曖昧になっていくことを歓迎している。それが28歳の一番の変化だった。変わりたいんじゃない。自分の可能性をもっと開いていきたい、思いもよらない方向へと大きくなっていきたいのだ。

就活しなかったこと、留学したこと、必死に英語を勉強したこと、海外で働き出したこと。シンガポールダブリンパリと引っ越してきて、目の前にはまだ大きな山があって、ため息つきながら何とか登っている。登り終わってみればそれは晴れやかで華々しくて大きなことのように見えるんだろうけど、それまでの一歩一歩は地味で暗く、このままどこにも辿り着けないんじゃないかという気さえしてくる。それでもまあ、登れるんだろう。今までもずっと登ってきたから。

29歳はどんな一年になるんだろう。楽しいことたくさんありますように。


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