見出し画像

音階ってなに? ~数字と心をつなぐもの~

小さい頃からひたすら音楽をやってきました。きっかけは小学校の担任の音楽の先生。ひたすら楽器を練習しながら「音ってなに?」ということを考え続けました。トロンボーンという楽器を練習しましたが、金管楽器を演奏すると、「倍音」というものを意識することが多くなります。

倍音というのは、その字のごとく、周波数が倍数の関係になっている音のことを言います。
「ラ」の音は国際的に440Hzと定められていて、その倍、880Hzの音は1オクターヴ上の「ラ」になります。
つまり「1オクターヴ」の関係にある音の周波数は1:2の関係。
一方2:3の関係になるのは「ド」と「ソ」になります。ドが2回振動するたびにソは3回振動して、一周回ごとに位相が合って、また離れる。それが人の耳には「和音」として心地よく聞こえるわけですね。

このように、音階の中にある全ての音は、一番下の「ド」を1としたときにその何倍の音か、という比率で表すことができます。

これを順番に表すと、
1:ド
2:ド(1オクターヴ上)
3:ソ
4:ド(2オクターヴ上)
5:ミ
6:ソ(1オクターヴ上)
7:シ♭
という順番に音が出現します。
ドミソは一番有名な和音ですよね。7コ目に出てくる「シ♭」はコードでよく「セブンス」と呼ばれる音です。ちなみに倍音の7コ目が「セブンス」と呼ばれるのは、ただの偶然です。
こう見ると、和音を構成する最も重要な音から順番に出現することがわかります。

もうちょっと先の倍音を見てみましょう。
8:ド(3オクターヴ上)
9:レ
10:ミ(1オクターヴ上)
11:ファ
12:ソ(2オクターヴ上)
13:ラ
14:シ♭(1オクターヴ上)
15:シ
16:ド(4オクターヴ上)
ここまで来て、ようやく音階の全ての音が出現しました。
ちょっと法則のようなものが見え始めます。偶数(=2の倍数)は既出の何かの音のオクターヴ上。3の倍数は既出の音と「ド:ソ」の関係ですから、「初出の奇数」、11番目や13番目に「ファ」「ラ」のような音階の中で重要な音が初出することになります。
次に「初出」する重要な音は何だろう?「ド、ミ、ソ」の派生音である「2、3、5」の倍数は全てバツ印をつけて削除します。「シ♭、ファ、ラ」の派生音である「7、11、13」の倍数も削除・・・あれ、この作業何かやったことある?

これ何かやったことあるな?

この作業何でしょう?「世界のナベアツ」ではありませんよ。
これは素数数列を求める方法で、「エラトステネスのふるい」と言うのですね。

つまり素数の数だけ音の種類が存在する? 素数は無限に存在することが数学で証明されています。

ビートルズがインド音楽のシタール奏者、ラビ・シャンカールに音楽の教えを乞うた時、ラビは「君たち西洋の音楽には12個しか音がないのだろう?」と笑ったそうです。インド音楽の伝統では、この無限数の音をすでに感じ取っていたのでしょうか。

16番目までにドレミファソラシドが既出したということは次の素数の音は何なのかが気になります。

17番目の音。これは16番の「ド」と18番の「レ」の間にありますから、「ド#」。コードで使うと相当気持ち悪い音ですね。でもジャズやブルースギターを弾く人はこの音がフレーズに頻出することをよく知っているでしょう。

19番目の音。これは「ミ♭」になります。マイナーコードですね。「ドミ♭ソ」を鍵盤上で鳴らすと「悲しい和音」が響きます。なぜ悲しいのかを説明できる人はどこにもいません。「誰もが悲しく感じる」という事実があるのみです。

23番目の音。これは22番「ファ」、24番「ソ」の間に挟まれているので「ファ♯」ですね。いわゆるブルーノートの主要音です。

29番目。「シ」と「シ♭」の中間の音になります。ここに来て初めて、西洋の12音階(Chromatic Scale)に現れない、「半音以下にズレ」て、かつ既出の音とは異なる独立系の音が存在することが示唆されます。ピアノでは出せない音なので、ギターをお持ちの方はこの音をスケールの中で聞いてニュアンスを確認してみましょう。

それぞれの音にはそれぞれの「感じ」が人間の感情と結びついてたりしますよね。コードに「シ♭」が出現すると、「次の展開が広がりそうだ」という「感じ」が現れます。「ソシレ」というコードが響くと、「シとレ」に挟まれた「ド」、トニックコードに戻って落ち着きたいな、という「感じ」が現れます。

まとめますと、音の種類は素数の数だけ無限に存在する。それぞれの素数は「7:次に広がる」、「19:悲しい」などの人間の感情と結びついているようだ。もう、この世の中は、神様がどのように設計したのだろうか。わけが分かりません。

音楽をやりながら、そんなことをずっと考えていました。音楽はやればやるほど、奥が深く、そして楽しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?