「ぶりっこ」なんて言わないで
昨夜、小学2年生の娘が、かわいらしい顔立ちでモテる女の子に対して、
「Aちゃんが『あの子はぶりっこ』っていっていたからそうなのかも」
と言いました。
娘大好き、大甘母な私ですが、その言葉が心のトラウマを刺激して、
「ぶりっこなんて悪口は最低だよ。そんな言葉はモテる子に嫉妬をする悪役の言葉だし、恥ずかしいと思う。」
とキツい言葉でいってしまいました。
娘に、
「ママは何も知らないじゃない」
と言われ、それはその通りだと思い直しましたが…。
きつい口調になったのは、教育といいたいところですが、個人的な瘡蓋が剥がれたからです。
穏やかに、
「そういう悪口はやめてください」
というべきなんだけど。
「男子と女子の前で声が違う? それであなたにどんなご迷惑がかかったの? 関係ないでしょ。そんなことで悪口をいうのはただのヤキモチ。まんがなら悪役のクソ野郎だ」
(クソ野郎っていうやつがクソ野郎、と言い返されてそこは謝りました…)
どう考えても言い過ぎた。2年生に向かって、クソ野郎はいらなかった。私が2年の頃も、「おとこずきだよね」「ぶりっこー」くらい、言いかねなかったし。
どうしても、27年前の春の記憶がしんどすぎて、言葉尻が尖ってしまう。自分のトラウマを子供に押し付けちゃだめなんだけれど……。
新学期に先生が沈鬱な面持ちで、モテすぎて仲間はずれになってしまった美少女が、自死したと告げた時のこと。
頭が良くて、不器用で、大人しいけど芯が強くて、文章がうまくて、背が小さくて日本人形みたいな可愛い子でした。
それを聞いて、
「あたしのせいだ!」
と唇を青くしてガタガタ震えながら泣き叫んでいた、華奢な女の子のこと。
亡くなった子と直接揉めたその女の子は、好きな男の子を取った取られたで、けんかになった。
取られた方の彼女も、本来、かわいくやさしく気を使う女の子。でもその時ばかりは、怒っていた。
うろ覚えですが、知らないところでそういうことになり、もうランチは一緒のグループではできない、的な話だったような…
どの程度、「私が好きと知っていて話してくれなかった」タイムラグがあるかで印象は変わるけど、どちらにしろよくある「ぜっこうきーった」案件ではある。
別にどっちも悪くないし、告白したのは男なら受け入れる権利もあるし、でもそうなった以上、なんで早く言ってくれないのもう仲良くできないともめること自体は普通にことだしな。と思った。
モテた側はモテただけだしいつ言うかタイミングに迷うよな、でも、取られた側はショックかな。とか。
それだけなら、1対1の揉めごと…。
ただ、その後、空気が変わった。
芸能人でいうと、松田聖子さん、裕木奈江さん、紗栄子さんのような、かわいいし才能もあるけどつかみどころがないフェミニンなタイプの女の子に対する「ぶりっこ」と遠ざける空気ができあがった。
その子のサークルは、外から見ると女子はほぼみんなかわいかった。ただ、モテたその子が、素朴でふんわりしたかわいさを放っていた。
ハーフのような美少女や女子アナのような華やかな子なら他にもいたけど、モテるのは彼女だった。
結果、2回くらい彼女に「好きな子を取られた問題」が勃発した後に、「なんであの子だけモテる? かわいいや美人なら他にもいるのに。そうだぶりっこなんだ」的な空気で仲間はずれになる流れになりました。
そんな意地悪なことを直接言う子は、私は見ていない。
でも、誰が図ったわけでもなく、そういう空気が形成された。
私は、その揉めたサークルには入っていなかったけれど、クラスの近い位置にはいた。
19歳の自己中な私は、自分のことばかりにかまけて、何もしなかった。
今思うとSOSはあった。「茶道部なんだ? 茶道に興味があるんだよね」と言われた時に、「茶道部見に来なよ」となぜいわなかったのか……。とか。
お互い様ではあるけれど、コミニケーションが少し不器用で、たまにキツく思われるような物言いをする彼女を、少し煙たく思っていたのかもしれない。
今思えば率直な物言いをするしないは、誰よりの高い偏差値の高校からうっかり短大に入った彼女と、お勉強が苦手な高校出身の私の「文化の違い」だったのかもしれない。少し皮肉な言葉も、賢いならではのウィットだったのかもと今なら思う。
でも、彼女は素敵な彼氏もいて、裕福なご家庭で、サークルも辞めていなかった。精一杯気を張っていたのかたまにこぼれる強気な言葉に、「負けない」オーラ感じて、心配はしていなかった。
最終的には、元いたグループの面々より真面目で大人しいタイプの女友達もできて、お昼を食べていた。
一度だけ、行きがかり上、慰めたことがある。
たまたま電車で会って「サークルのことをサークル外の人に相談したかった」と相談を受けて、
「うん。分かるよ。反感を食らう時期は誰にでもあるから。私もあったな何年生だったかな。でもずっとは続かないよ。終わるから大丈夫」
そんなもっともらしい事を言いながら、涙を流すかわいい小さな頭を撫でていたけれど。
内心、
「私も彼氏に振られて鬱ギリギリだから私よりましじゃない」
とか、自分のことで精一杯だった。
当事は、「でもかっこいい彼氏はいるじゃん」と羨ましくすら思っていた。
いま娘ができて、当時の19歳という「まだ子供」な年齢を思うと……。
グループから締め出され、2回めに頼ったところからも気を使いつつも「ごめんうちのグループはもう出来上がっているから」と言われた、小さな女の子の胸の内を思うと、30年たっても喉が詰まる。
お願いだから、ぶりっ子なんて言う理由で、モテる女の子を締め出さないで。
もちろん、彼氏や好きな人を取られたら、揉めてもいいし仲良くしなくてもいいけど、1対1の問題で収まるといいなぁ。
直接関係ないなら、実害がないならぶりっこなんていわないでと思うし、自分が言われてしまったらそこから逃げてほしい。
SOSを感じとったら、おせっかいでも助けて。無理だったら、せめて助けられそうな人にアサインするとか、できるだけのことをすることは相手のためだけじゃない。
仮に自分から見て完璧な性格じゃなくても、かわいそうな思いをしている子を助ける意味はある。未来の自分のメンタルのためにも。
上記の彼女たちとは関係ないけれど、福祉の仕事をしている親族に聞いたことがあります。
「緊急で助けなきゃいけない人ほど自業自得に思えたり、ストレスでこちらに酷いことをいってきたりする。でも、AIのように淡々と助けることが、自分のためになる。仕事の評価的な意味でも、プライド的な意味でも、後悔しないためにも」
と。
2度もグループを追われて仲間はずれにされた、ふっくらほっぺの小さなかわいい女の子と、不和のきっかけになったことで「私のせいだ」と震えた華奢な女の子の記憶は、30年たっても薄れません。
という話を、何年生にならしていいのかな。
自死を含む内容だから、8歳には早いのかな。
と思って、昨日は感情を飲み込みました。
…スクールカウンセラーさんに相談しよう…
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