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【雑感】2024/3/3 J1-第2節 浦和vs東京V

終了間際に相手を崩したとは言えない状況でのPKゲットで勝ち点1を取れたことはラッキーだったなと思うような難しい試合展開でした。前節存在感を発揮した前田がまさかの体調不良でメンバー外になり、ソルバッケンはいまだゼロバッケンということでヘグモさんの志向する4-3-3で肝になる突破量のあるWGを控えに置けない、後半からのブーストが望みにくいという中での試合になりました。

スタメンで言えば前節はWGが関根を左、松尾を右でスタートさせつつ、流れの中で左右入れ替わりも許容するようなスタンスでしたが、この試合は最初から松尾が左、関根が右という配置で流れの中で入れ替わることは無かったと思います。この辺りは単純に松尾が左の方がやりやすそうだったのでそのままやらせてあげようとしたのかもしれません。


久しぶりにJ1に帰ってきたヴェルディは前節の横浜FM戦と同様に4-4-2でミドルブロックを作って、相手のパスをひっかけてカウンターを狙うというのが試合の大半の姿勢ではありました。非保持の基本姿勢としては2トップが縦関係になって片方がアンカーを消しておいてもう片方がCBへ出て行く、SHは内レーンを締めるところからスタートしつつ縦並びになった2トップの脇へ縦スライドも狙うということで、浦和のビルドアップ隊から2トップ+4MFの中へはボールを入れさせたくないという立ち方をしていたと思います。

一方で浦和が4-4-2非保持に対して準備してきたであろうこと(試合の中で何度も表現しようとしていたこと)というのは、SBが手前に引いて相手SHを引き出すのを基準にして、WGとIHで相手SHの背中、相手SBの背中をそれぞれ取るという外レーンでの縦並びで3vs2を作るようなアクションでした。

浦和がこれを多く繰り出せたのはどちらかというと左なのですが、そうすると突破力のある松尾が手前に引いて、器用にボールを扱う小泉が裏に抜ける役割になっていて、選手のキャラクターとタスクにミスマッチがあったと思います。

また、ヴェルディの方もSHが内を締めるところからスタートしているだけでなく、CHもそれぞれSHとの間に浦和のIHが立つのですが、そこへボールが入る時に中から外へ寄せていくので浦和が外から前進しようとしてもSH、CH、SBがそれぞれ中から外へ矢印を出して浦和のボールが中へ入って来ないような対応が出来ていたと思います。

浦和の方は4-4-2の相手が空きやすいところを狙っていたと思いますが、ヴェルディ側はそれは想定内という具合にきちんと対応できていて、ヴェルディ側はあまり困っていなかったのではないかと思いました。浦和のやりたいことがヴェルディのやらせても構わないことだったという印象です。

浦和が後半から関根を左IH、小泉を右WGに変えたのは左で前に出て行くとしても小泉より関根の方が飛び出した後のプレーが期待できるのと、小泉は手前に引く役割の方が合っているからというものだったと思います。


ヴェルディの保持はビルドアップ隊は2CB+2CHが担っていて、SHが内、SBが外に立つのが多かったかなと思います。浦和のIHが早めに寄せてくることもあって繋ぐことに固執せず、FW目掛けてボールを飛ばしてこぼれ球を回収するというのが共有事項としてあったのではないかと思います。2トップ+両SHの距離が近いので浮き球で競り勝たなくてもこぼれ球を作れればそれを拾って前進できるというイメージだったのかなと。

そして、38'00~は最後尾からFWへのロングボールのこぼれ球を拾ってから染野→齋藤が近い距離でパスを繋いで上がってきた深澤がクロス、この流れで浦和を押し込んでCKを獲得し、3分間CKを浴びせ続けてゴールを奪いました。


浦和の非保持はこの失点の前の場面もそうでしたが、プレッシングに出て行くIHに連動するようなアクションが無いのが気になりました。CFと片方のIHでプレッシングをしようとするのですが、その周りの選手は前向きなアクションを起こさないのでIHの外側へボールが出た時にIHが縦→横の二度追いをした結果、もともとIHが出していた矢印によって切れていたコースでボールを出し直されるという場面がありました。

しかも、前節はリサイクルに対してはWGが前へ出て行くアクションがあったのですが今節はそれもかなり控えめだったと思います。22'55~のヴェルディのビルドアップでは浦和の左サイドへボールが入ったところを押し返してバックパスがマテウスまで戻っていったのですが、逆サイドの関根は脇にいるSBの深澤を見ていて出ていけておらず、マテウスから谷口へボールが入った時には逆IHの小泉が横向きに寄せています。その結果、小泉の矢印の根元にいる森田へボールが入ってしまいました。

5バック、あるいは5MFの並びであれば初期配置の段階で横幅はある程度まかなえるので、横方向より縦方向のアクションを増やしやすい並び方ではあります。ただ、浦和は昨季までの4-4-2での横方向のアクションの意識が取り切れていないのか、チームとしての矢印の向け方が揃っていないのが気がかりです。

マテウスから谷口へパスが出た瞬間だけを切り取れば関根から谷口までの距離は遠いですが、22'02に山越→林、林→マテウスの2本のパスが動いている時間でスプリントをかけて関根が縦方向に矢印を出しても良かったのかなと思います。そこで関根の矢印の裏へロングボールを出されてもそこには酒井、ショルツ、ホイブラーテンがスライドして弾き返せば良いのかなと思います。

配置の特性として前向きな矢印が増える、その結果相手が捨てたようなロングボールを入れてくることは増えますが、そこは許容した上で相手に対して強く縦方向の矢印を出す必要があると思います。チームとしての矢印を出すのが難しくなるのはボールに近い選手の矢印が曖昧でどこを切れているのか分からないことです。同じ選手が縦に行ったり横に行ったりすることで周りの選手からするとボールの雲行きが見えにくくなります。


後半の63'40~のプレッシングでも敦樹が前へ、右へ、左へ、追いかけさせられた結果、規制がかけられず脱出されています。この場面で言えば矢印の向きだけでなく、岩尾が興梠の右後ろまで流れてきていてチームとしての配置バランスも整っていない状態でした。

プレッシングに行くとしても周りの配置が整っていない状態から出てしまうと周りがそれに連動することも難しくなるので、プレッシングに出て行っても良い状態に周りがなれているのかというのが上手く判断できていないのかなと思います。そういう時に周りから「行け」「待て」の指示が上手く出来れば良いのですが、まだ良い塩梅を掴めている選手がいないので指示も上手く出せていないのかもしれません。

全体の矢印が揃わないからプレッシングに出る選手と後列の選手との距離が空いてしまって、相手がプレッシングに対してボールを蹴ってくれてもこぼれ球が発生するエリアに人数が確保しにくかったり、プレッシングに出た選手の背中が遠くてカバーが間に合わず3人目で前を向かれてしまったりするのは前節から引き続きの課題かなと思います。


浦和の保持の停滞感は先述した「浦和のやりたいことがヴェルディのやらせても構わないことだった」という点にも繋がるのですが、ヴェルディ側がボールを出されたくない場所へボールを刺すことが出来なかったということが原因として挙げられます。

ボール保持では基本的に相手がいない場所へボールと人を送り込むことなのですが、非保持の初期配置で相手がいない場所というのは非保持側がそこにボールが来るであろうことを想定してアクションを準備している可能性があります。つまり、そこへボールが来ることを許容している可能性があるということです。浦和の外からの前進はヴェルディ側が許容していたのかもしれません。

逆にヴェルディ側が嫌がっていたのは初期配置で埋めている中央を使うことだったと思います。グスタフソンを必ず2トップの片方が消す、SHは内レーンに立ってビルドアップ隊から直接ハーフレーンにいるIHにボールを通させない、CHは中央からスタートして脇を取る浦和のIHに中から外へ寄せる、そうしたアクションが出来ないようにする、あるいはそれをわざとやらせて本来消したかった場所を使うということが浦和は出来ませんでした。

グスタフソンを必ず2トップの片方が消すという点については早い段階からグスタフソンがヘソの位置から動いて相手FWのポジションをズラすかついてこなければCBからのボールを受けるというアクションを行っていました。ただ、そこで相手FWがいなくなった場所へ代わりに誰かが入るということが無かったので、元々消していた場所を使うことは出来ていませんでした。


24'50~のビルドアップではホイブラーテンがボールを持っている時にグスタフソンはヘソの位置でスタートしています。ヴェルディは木村がグスタフソンを消すように立っているのですが、その背中からスッと動いたことで木村もヘソの位置からいなくなって2トップ+2CHのボックスが崩れています。

例えばこのグスタフソンのアクションに合わせて敦樹が相手の中盤ラインのゲートから下りてボールをはたいて右サイドへ展開する流れがあっても良かったと思います。

35'40~にはショルツがボールを持った時にグスタフソンが木村の背中からスッと外れて今度は染野ー木村のゲートを通してグスタフソンへボールが入り、V字でホイブラーテンへボールを渡しています。染野、木村がショルツ、グスタフソンへついているのでホイブラーテンはこれでオープンな状態でボールを受けられるわけですが、ショルツ→グスタフソンの後に自分がボールを受けるイメージが無かったのか、ボールの移動中は静観していたため、ボールを受ける位置が低くて前進しようとするまでに時間がかかっています。

グスタフソンはホイブラーテンがこの辺に来ているだろうという位置へボールを落としているのですが、ホイブラーテンはそれよりも5mくらい後方にいました。ホイブラーテンから山田ー森田のゲート奥の小泉へボールは通っていますが、時間がかかったことで森田が十分に小泉の脇まで動いて中へ向かせないポジションを取れている状態でボールが入っています。

グスタフソンのアクションやそこへボールが入った後の未来はまだ実体験が少ない分、「こうなったらこうなる」という想像が湧いていないのだろうと思います。これは何度もプレーを共にしたり、コミュニケーションを取ることで理解を深めていくしかないと思います。日常でいかに積み上げられるかという部分になるでしょう。当面のビルドアップでのカギは周りがグスタフソンと以下に繋がれるか、同じ未来を共有できるかなのだろうと思います。


また、この試合ではSB、特に渡邊が手前に引いて相手SHを引き出すことを狙ったのではないかと思いますが、相手SHを引き出すのはあくまでも1つの方法であって、相手SHを前後左右問わずいかにコントロールするのかというのがメインであるべきだと思います。脇を取ればCBからのパスで相手を越えていけるかもしれないですし、あえて相手に近づいて明確にロックさせれば別の選手がその脇や背中を取りやすくなるかもしれません。この試合では酒井も渡邊もそういった工夫が足りなかったかなと思います。

4-3-3をベースにすると決めている以上、各選手が自分の近くにいるであろう相手は想像しやすくなります。勿論それは相手からしても非保持の時に基準にする対象が分かりやすくなることでもあるのですが、それにしてもこちらから仕掛けることがワンパターンすぎないか?というのは気になりました。


思えば昨年のキャンプでスコルジャさんが最初はトレーニングの開始の15分前集合としていたのに、選手たちがさらにそれより前に来てしまうので本来の時間を集合時間にするようにしたということがありました。これは日本の文化や特性として言われたことはきっちり守ろうとするというものなのですが、今のチームにもそうしたことが起きているのかもしれません。

キャンプから「このポジションはこう動く」というのがヘグモさんとしては原則(それをベースにしつつ状況に応じて判断して欲しい)と思って提示しているものが選手たちはルール(それをやらないといけないと思ってしまう)として受け取っている可能性があります。

その中でこの試合ではベンチメンバーにWGを置けなかったからというのはありますが、試合終盤に髙橋、興梠の2トップにするなど、理想とする形だけで縛らないようにする柔軟さをヘグモさんは見せたと思います。言っていることは正しくても、それを上手に受け取らせるのは難しいものです。ましてやヘグモさんは初めて日本で指導するわけで、この力加減はまだまだ試行錯誤の途中のはずです。

そういう点ではナチュラルに規律をクラッシュする中島のような選手はこれから存在感を見せていくかもしれませんし、岩尾も試合展開はあったと思いますが意外とポジションに縛られずにグスタフソンと繋がりながらポジションを動いているように見えました。なので、原則はあるとしてもそれに縛られすぎないでプレーできる選手を見つけていくことで少しずつ保持の可動域を広げていくことになるのかもしれません。

ただ、この少しの逸脱は本筋が上手くいっているからこそ「たまにはこんなことをやってみたらどうだろう?」みたいな遊び心から出てきやすいものでもあると思うので、内容は悪いままでも早いうちになんとか勝ち点を取ってしまって気持ちに余裕が生まれる状況に出来ると良いなと思います。


今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。

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