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科学がどれほど発達しても 人間が知っていることは 宇宙のほんの少しです。 知らない事や…

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科学がどれほど発達しても 人間が知っていることは 宇宙のほんの少しです。 知らない事や分からない事を 想像してみるのも、楽しいです。

最近の記事

万引き

「どうだった?」 「上手くいった。」 今週号漫画の週刊誌を 上着の中から取り出した。 「おじさん、この本のつづきを 探しているんだけど、どこに置いてあるの。」 最新号のチラシを見せながら 店主を誘導する作戦であった。 「どれどれ、ああこの本か。 確か向こうの棚の上の方だったかな?」 「こっちのほう?」 「わからないよちょっと見てくんない?」 と声をかけた。 「ちょと待って。」 そう言って店主は本を探しに 声のする方に移動した。 もう一人はそのタイミングを見て、 レジの横に

    • 不公平な世の中

      この世の中は不公平だ。 例えば、裕福な家庭と、 貧しい家庭に生まれてきた 子供は生まれながらに すでに差が付いている。 もしも神様がいるなら この事をどう思うか聞いてみたい。 こんな思いを持っている人は 世の中に大勢いるのではないだろうか。 悟もそんな大勢の中の一人だった。 「かあさん。どうして家は貧乏なの。」 友達の持っているゲームが欲しくて ねだっても、人は人と言って 取り合ってもらえなかった。 「貧乏なのは、間違いないけど かあさんは、お前や妹が元気で いてくれさえす

      • 記憶販売

        ぼんやりと駅のベンチで 行き交う電車に目を向けている。 雑踏の中にいるのに 孤独を感じる。 病院での診断結果が 頭の中を堂々巡りしていた。 「検査結果を説明します。」 そう言って 担当医は検査結果を見ながら 淡々と話し始めた。 確か最後に カウンセリングを受ける事も 提案してくれたようだった。 まさか自分がそうなるとは、 全く考えていなかったので 医師の説明は、上の空で 頭に入ってこなかった。 病院を出て、 今駅のベンチに座っている。 途中の記憶が定かでない。 これは、シ

        • 奇妙な物語

          大勢の人が、駅への近道の この公園を横切って行く。 それで朝夕は、 結構人通りが多い。 公園には、何故か同じ人が座っている ベンチがあった。 「どうしていつもここに居るのですか。」 「君はだれ?」 「ただの通りすがりです。 何時も座っているので気になって ちょっと声を かけたくなったんですよ。」 「ほー、ただの通りすがりの人?」 「この公園を通る時 あなたは、このベンチに いつも座っている。 どうやら、仕事もしていないようだし 最初はホームレスの人 だと思っていたけど それ

        万引き

          婚活物語のつづき

          「久しぶりに、帰りに一杯やらないか。」 「そうだな、じゃ、いつもの店でどうだ。」 「良いよ。じゃ20時という事でな。」 幼馴染からの誘いがあった。 いつもの居酒屋は、コロナ明けもあってか 最近はいつ行っても混んでいた。 やっと見つけた席に滑り込んだ。 「最近調子どう? 健康診断で引っかかったらしけど?」 「ああ、50代は激務だからな。 皆、それなりに持病の一つや二つ 抱えているものだしな。」 「でどこが引っかかったんだ?」 「胃潰瘍だよ。胃がんじゃないかと 心配したんだが

          婚活物語のつづき

          婚活物語

          「この後、軽くお酒でもどうですか?」 「ありがとうございます。 でも今日は、夜勤がありますので 無理なのです。」 「そうですか。ナースの仕事は それがあるので大変ですね。 それじゃ、休日は・・」 その時 「時間です。 座席の移動をお願いします。」 とアナウンスがあった。 彼の会話を遮る様に私は慌てて 少し会釈して席を立った。 (本当、しつこいのだから タイプじゃないって、察してよね。 夜勤の日にわざわざ婚活パーティーに 来るわけないもの・・)と 心でつぶやいて、次の席に移っ

          婚活物語

          宿題のレポート

          冬休みの宿題は今話題になっている 社会問題についてのレポートだった。 うちの学校は、自ら考えることを 重視していたので 特定の課題の指定は、無かった。 生徒にとってはめんどくさい この様な宿題を好んで出した。 俺は、冬休みが終わる間際まで このレポートに取り組んでいなかった。 何故なら、レポートなど 今話題のチャットGPTを使えば あっと言う間に終わるからだ。 最初から、ズルする事に決めていた。 友達も、多くはそうするようだった。 ・・・・・・・ 「最近の話題で、 学生程

          宿題のレポート

          追跡監視

          俺の仕事は、 日本の先端技術を守る事。 特に半導体の国際競争は激しい。 その中でも、 日本は基礎素材や 製造装置、テスト機器の分野で 世界のトップレベルにいる。 その技術は、日進月歩し 常に世界から狙われている。 それらの技術は軍事的にも 重要な位置を占めており 流失すると一民間企業の損失に 止まらず、自国や同盟国の国防にも 大きな損失を与える。 その先端技術の開発で 特に重要な人物を全て 監視するのが 我々の任務である。 俺はその中の ある一人を担当していた。 困難である

          追跡監視

          正直なお嬢さんですね

          「38番、入室してください。」 ドアを開けると 正面に長いテーブルがあり 4人の先生が座っていた。 私はテーブルの前に置かれた椅子に 座るように促された。 椅子の横に立ち 面接の先生たちに向かい 深々とお辞儀をしたのちに 浅く椅子に腰かけた。 面接の先生は、男性が2名 女性が2名であった。 年齢はわからないが 3名は中年で、女性の一人は 年配と言う感じであった。 若い方の女性の先生が 私の名前と出身校の確認をしてきた。 いよいよ、面接が始まった。 両手をかるく膝に置

          正直なお嬢さんですね

          決闘酒場

          俺は今 アメリカの開拓時代のど真ん中にいる。 一旗揚げようと ヨーロッパを追われた荒くれ達が 西へ西へと、大移動している。 秩序よりも、腕力が全ての時代だ。 俺は、そんな西部にある町の 一番大きなにぎやかなBARに入った。 そこには、体の大きな狂暴そうな 荒くれ者が大勢いた。 BARに足を踏み入れた途端 鋭い視線が四方から飛んできた。 俺は、彼らと目を合わさないようにして 中に進みカウンターの前に立った。 カウンターにいた金髪のBARの女が 「見かけない顔だね。 私に一杯お

          決闘酒場

          未来ノート

          夕方の人込みの中 すれ違いざまに 見知らぬ男から いきなり紙袋を渡された。 とっさの事だったので 状況が飲み込めずにいると 片手をあげて 「グッドラック」 そう言って、男は立ち去った。 手には、紙袋が残っていた。 警察に届けようと一瞬思った。 しかし、好奇心に負けて 恐る恐る開けて見ると 中には一冊の黒いビニールカバー の付いたノートがあった。 100均にでも売ってそうな ありきたりの物だった。 それならきっとノートの中には 大事な事が書かれているに 違いない。 そう思

          未来ノート

          家庭内バトル

          男は理想を語る 女は現実を語る なんて、聞いたことがあるような 無いような 今日のお題は・・・・ 「俺が先に死んで あの世があったら、 お前に謝りに来るよ。」 「俺は、死後は(無の世界)と思っている。」 「生死をさまよった人が 色々な体験談を語っているが あれは、意識混濁時の幻想にすぎない。」 「大体、生きている人の人数と 過去にさかのぼって 死んだ人の総和を比べると、圧倒的に 死んだ人の方が多いに決まっている。」 「一人が一つの霊魂だとすると 数えきれない数の霊魂

          家庭内バトル

          ループする時間

          「だから、 さっきから何度も言ってるだろう。」 「大事な事なのだから。」 「もう少し真剣に聞いてくれよ。」 「その所を少し直せば、 全体が良くなるって。」 うるさい奴だ。 いつの間にか突然現れて 頼みもしないのに、 さっきからあれこれ指示してくる。 このままで良いから、 黙っていてくれ。 いや、消えて欲しい。 「これは俺の作品なんだ。 アドバイスは求めない。 好きにさせてくれ。」 「そうはいかないぞ。 お前はこの作品で世に出るのだから。 悔いを残さないように そのため

          ループする時間

          ある病室での会話

          私は大学の、研究者で医師でもある。 もっぱら、脳に対する研究をしている。 今の私の研究対象は、 入院中の80代の女性の 認知症の患者で、 彼女は、家族の事も覚えていない。 でも若い頃の記憶は、鮮明に残っている。 ベットでうとうとしている時 よく苦しそうに、うなされている。 苦しかった記憶に、日々悩まされている。 私が取り組んでいる研究は この状態を緩和する事だ。 色々と試行錯誤を繰り返し 例えば、彼女の苦しんでいる時の 脳波を検出し、その時の電気信号を マイナスとして数

          ある病室での会話

          心の自動翻訳機

          清潔で、適度の温度、湿度 照明も程よい明るさと彩光で 管理されている。 重力もある。空気もきれい。 心地よい音楽も流れている。 未来の宇宙ステーションは その様な地球以上の 快適な環境が保たれている。 宇宙ステーションは これまでの物と比べ 大規模になっていた。 インド、アジアの一部、 アフリカなど発展途上国の 人口増加が止まらない。 このまま事態が進むと 地球のキャパを超える事が 大きな問題になり、 人類の一部は、他の惑星に 移住する必要に迫られていた。 量子コンピュ

          心の自動翻訳機

          凡人?

          早期退職者募集。 対象は45歳以上。 退職金は15%の割り増し 外部委託業者による再就職支援 その他の条件も添えた 社内メールがあった。 再チャレンジができるように 起業も応援してくれるらしい。 再チャレンジの言葉に惹かれた。 しかし、不安も募る。 自分は営業技術職が長く 帯に長し襷に短しで 営業も技術も中途半端で 果たして、世の中で通用する スキルがあると言えるのだろうか。 メールを見ながら ぼんやりとそう考えていた。 しかし、再チャレンジしたければ これは、絶好の好機

          凡人?