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蟲惑魔における《天獄の王》について考察【6213字レポート】

《天獄の王》の効果

星10/闇属性/岩石族/攻3000/守3000
このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):自分メインフェイズに発動できる。手札のこのカードを相手ターン終了時まで公開する。この効果で公開し続けている間、フィールドにセットされたカードは効果では破壊されない。
(2):セットされた魔法・罠カードが発動した場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。手札で公開されている状態でこの効果を発動した場合、さらにデッキから魔法・罠カード1枚を自分フィールドにセットできる。そのカードは次のターンのエンドフェイズに除外される。

遊戯王カードWiki - 《天獄の王》



蟲惑魔デッキにおける天獄の強み

次の6つが主に考えられる。(5と6については特に狡猾ループ軸における強み)

  1. 伏せ除去対策になる

  2. アクセスが容易

  3. 《セラの蟲惑魔》のリクルート効果に対して相手が《灰流うらら》をチェーンできなくなる

  4. 手札2枚から容易に8000打点に届く

  5. 《魂の解放》《天底の使徒》《おろかな埋葬》をはじめとする「墓地の罠を処理できるカード」にアクセスが容易になる

  6. 困難な状況を打破しうる

  7. 使いづらい罠も採用できる



強み1:伏せ除去対策になる


公開するだけでこちらの魔法罠カードの破壊を防ぐことができるため、罠の信用度が格段に上がる。
特に狡猾ループ軸においては、伏せ除去に伴う狡猾DL(墓地に罠が溜まった状態)に陥りづらくなる。狡猾ループ軸ではバック破壊対策のカウンター罠の採用が難しいため、この点は非常に心強い。

少し変わったところでは、天獄の効果でデッキから《王宮の勅命》をセットし、《ランカの蟲惑魔》の効果でそれを手札に戻すことで、天獄のデメリット制約(「そのカードは次のターンのエンドフェイズに除外される。」の部分)を無視して永続的に勅命をコントロールすることが可能である。また、落とし穴を手札に戻した場合は、アトラにより手札から落とし穴が撃てる状況となる。



強み2:アクセスが容易


天獄は岩石族であり、蟲惑魔では容易に成立するランク4のXモンスター、御影志士》からサーチが可能である。

パラレルエクシード》や《幻影騎士団シェード・ブリガンダイン》といった初動でランク4を立てられるカードを搭載している場合、御影志士自体は容易に成立するため、「後攻1ターン目で魔法罠カードを破壊される」という蟲惑魔の弱点を消すことができる可能性がある。

加えて、天獄の特殊召喚自体はセットした通常魔法を発動するだけでも可能である。これはすなわち、2体のレベル4モンスターから攻撃力2300(御影志士)と攻撃力3000(天獄)にまで総打点を伸ばすことができることを意味し、シンプルに打点を稼ぎ出すギミックとしても優秀である。なお、セットしてあった《金満で謙虚な壺》によって天獄を手札に加えた場合でもその天獄を特殊召喚可能。相手のライフが1500以下※の時、手札と場にモンスターがいない場合は金謙をセットしてから発動するようにしたい。
※金謙の制約で与えるダメージが半分になる



強み3:《セラの蟲惑魔》のリクルート効果に対して相手が《灰流うらら》をチェーンできなくなる


セラの存在下で通常罠を発動した後、公開されている天獄②の特殊召喚効果とセラ②の蟲惑魔をリクルートする効果が同じタイミングで誘発されるため、相手に優先権を渡すことなくセラをチェーン1、天獄をチェーン2と組むことができ、セラに対してうららを撃たれる隙がなくなる。
狡猾ループ軸においてこの利点は大きく、ティオのリクルートを止められなくなるため墓地の穴セットを安全に行うことができる。

※なお、公開されていない天獄の手札効果②はセラより後のタイミングで発動さるため、セラ効果発動後に相手にチェーンの有無を確認をする(優先権を相手に渡す)必要があり、ここでうららを撃たれる。

※5/15追記
5/15現在マスターデュエルにおいて、セラのリクルート効果発動後に相手に優先権が渡り、チェーンの有無を確認してからでないと公開中の天獄の特殊召喚効果を発動できない不具合が発生している。

おそらくマスターデュエル側が公開中の天獄を公開情報として内部処理していないことによる不具合であろう。

なお、私のルール把握ミスの可能性も考えられたため念の為5/14にOCG事務局に問い合せたところ、公開中の天獄の効果は公開領域にあるものとして処理するとのこと(回答内容の転載は控える)で、やはりマスターデュエル側の不具合であった。



強み4:容易にワンショットキルに届く

トリオン+天獄

「トリオン+天獄」の2枚で、次の流れでターンを跨いだワンショットが可能になる。(「任意の蟲惑魔+狡猾+天獄」という形でも可能)

  1. 手札の天獄を公開する

  2. セラ+狡猾を盤面に揃える

  3. (相手ターン)狡猾発動

  4. チェーン1:セラ、チェーン2:天獄

  5. 天獄を特殊召喚し、デッキから《ハーピィの羽根箒》をセット

  6. セラ効果でティオをリクルート

  7. ティオ特殊召喚時効果で墓地の狡猾をセット

  8. セラ効果で墓穴ホールをセット

  9. (自分ターン)5でセットした羽根箒発動

  10. 狡猾発動 ※相手のモンスターが存在しない場合もセラとティオを対象に取れば損失無し

  11. セラ効果でトリオンをリクルート

  12. トリオン+ティオでアロメルスをX召喚

  13. アロメルス効果で墓地のティオを特殊召喚

  14. ティオ特殊召喚時効果で墓地の狡猾をセット(墓地罠0枚になる)

  15. アロメルスに重ねて《旋壊のヴェスペネイト》をX召喚

  16. 以上、セラ(800)+ティオ(1700)+旋壊(2500)+天獄(3000)の総攻撃力が8000となる

上に示した天獄を絡めたワンショットは非常に信用度が高く、次のような強さがある。

  • 天獄を公開している限り、相手による魔法罠破壊を許さない

  • モンスターを最大4体破壊

  • 相手の魔法罠をすべて破壊

  • 《墓穴ホール》で盤外効果を無効化


蟲惑魔+天獄+通常罠

また、別条件として、「蟲惑魔+天獄+通常罠」でも8000打点に到達する。
前提として、《強制脱出装置》によって場の天獄を手札に戻した場合、手札に戻った天獄はそのまま手札効果②を発動でき、自身を特殊召喚することができる

  1. 手札の天獄を公開する

  2. セラ+通常罠を盤面に揃える

  3. (相手ターン)通常罠発動

  4. チェーン1:セラ、チェーン2:天獄

  5. 天獄を特殊召喚し、デッキから《強制脱出装置》をセット

  6. セラ効果でトリオンをリクルート

  7. トリオン特殊召喚時効果で相手の魔法罠1枚破壊

  8. セラ効果で墓穴ホールをセット

  9. (自分ターン)

  10. セラ(800)+トリオン(1600)+天獄(3000)で攻撃

  11. 天獄を対象に強制脱出装置を発動

  12. セラ効果でティオをリクルート ※必須ではない

  13. 処理後、手札に戻った天獄の効果を発動し、自身を特殊召喚

  14. ティオ(1700)+天獄(3000)で攻撃

  15. 以上、セラ(800)+トリオン(1600)+天獄(3000)+ティオ(1700)+天獄(3000)の総攻撃力が10100となる


天獄×2

天獄の攻撃力は3000であり、2体分の直接攻撃を通せば6000ダメージとなる。また、天獄はレベルが10であるため、その2体で《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》をX召喚しその効果を起動すれば計8000ダメージに届く。
*一応《ブラッドローズ・ドラゴン》もレベル10

上の流れはあまり発生しないことが予想され、一見グスタフの採用は微妙に見える。しかし、戦闘/効果破壊耐性を有し、戦闘が容易に行えることから《天霆號アーゼウス》の下敷き適正の高いことで知られるランク4のXモンスターである《No.27 弩級戦艦-ドレッドノイド》は、その効果でグスタフを特殊召喚できるため、蟲惑魔のEXデッキに「グスタフ+ドレッドノイド」を採用することは十分に可能であると考えられる。



強み5:《魂の解放》《天底の使徒》《おろかな埋葬》をはじめとする「墓地の罠を処理できるカード」にアクセスが容易になる


《ハーピィの羽根箒》や《強制脱出装置》といったワンショットキルに向かうカードにアクセスできるのは上で述べた通りだが、見出しのカードに代表される、狡猾DLを解消しうるカードにもアクセスできる。毎度ワンショットキルが上手くいくわけではないので、こういったカードにアクセスする状況も多いと考えられる。
ゆえに、天獄は”狡猾DLが解消できなくて負け”という狡猾ループ軸に宿命づけられた負け方を回避しうるカードにもなるといえる。



強み6:困難な状況を打破しうる


《エルシャドール・ミドラーシュ》は効果破壊耐性があるため狡猾で処理できず、2200を超える攻撃力で戦闘破壊したい。しかし、蟲惑魔は特殊召喚1回以内で2200以上の攻撃力を用意できず、これは現実的ではない。そのため、従来は「効果を無効化」「破壊以外の除去」によって突破するのが普通であった。そこに加えて、天獄は特殊召喚の容易な3000打点ということで、新たに「戦闘破壊」という有力な選択肢を得た。

また、《スキルドレイン》はトリオンの特殊召喚時効果では破壊できず、蟲惑魔にとっては苦手なカードといえる。天獄の魔法罠セット効果はスキドレの影響を受けないため、スキドレを除去できるカードを用意できる。

他にも、効果破壊耐性を除去しうる《強制脱出装置》や《バージェストマ・ディノミスクス》、対象耐性を突破しうる《禁じられた一滴》など、”困ったときに欲しい1枚”を幅広く採用した構築が強くなる

相手関係なく自分が苦しい状況として、蟲惑魔のダブりを防ぐ目的で蟲惑魔の採用枚数を絞った構築において多く発生する、「蟲惑魔が1枚も引けない」という状況でも輝く
こういった状況でも、「天獄+罠」さえ構えることができれば、その罠は破壊されないため確実に発動ができ、それに伴って天獄も確実に特殊召喚できる(手札誘発による無効化を受けづらい)ため、天獄効果でセットするカードを適切に選択することで状況の打破を図ることができる。たとえば、盤面を突破するカードでもよいし、蟲惑魔を引きにいくための《金満で謙虚な壺》でもよい。



強み7:使いづらい罠も採用できる

「使いづらい」とは、「攻撃反応型」に代表されるように使用タイミングが限定されているがゆえに、相手の展開を抑止する目的で使うことができず、展開途中に除去をうけやすい罠のことである。
天獄はこういった罠の使いづらさを軽減し、爆発的なリターンを実現しやすくする。

例示すると、狡猾ループ軸における大きな課題のひとつである「対象耐性・破壊耐性の突破」の解決策として有用な通常罠、《神風のバリアーエア・フォースー》は、その除去されやすさから敬遠されがちであったが、天獄登場以後は十分に採用圏内となるだろう。
単体でのロック性能が壊れている一方で今までは名前が挙がらなかった《絶対不可侵領域》ですら有益な選択肢に思えてくる。

ただし、使用タイミングが限定される罠は、天獄特殊召喚のトリガーを引くカードとしても天獄の効果でセットするカードとしても使いづらさが目立つのは否めない。



まとめ:狡猾ループ軸に採用すると

以上を総合すると、天獄によって次のような狡猾ループ軸の弱点を大きく解消できる。

  • 蟲惑魔を1枚も引けない事象

  • 伏せ除去に伴う狡猾DL突入

  • うららを撃たれ、セラ効果でティオをリクルートできないことによる狡猾DL突入

  • 狡猾DL突入後の決定力不足

  • テーマ内における狡猾DL解消手段の不在

  • 「効果破壊耐性」「対象耐性」「スキルドレイン」に対する突破手段の少なさ

このような強力なカードが、ランク4のXである《御影志士》からサーチ可能である。

このカードの登場以降、狡猾ループ軸は革命的に転換するといっても過言ではないであろう。



天獄登場以後における狡猾ループ軸の構築の変化

  • 天獄を特殊召喚する目的において、相手ターンにセットカードを発動する行為自体に価値があるため、"状況を選ばずに常にフリーチェーンで発動できる通常罠"(※)の価値がさらに高まると予想される(相手が行動しない限り発動できないような罠だと、無駄にターンを稼がれる可能性がある)

  • 通常罠に限らず、速攻魔法や永続罠など相手ターンに発動できるカードは全般的に使いやすくなる

  • ”困ったときに欲しい魔法罠”を幅広く採用したい(《金満で謙虚な壺》を採用する場合も、”困ったときに欲しい魔法罠”を薄く広く採用することで様々な状況への対応力が上がるため、この部分で採用原理は共通しているが、”困ったときに欲しい魔法罠”と"状況を選ばずに常にフリーチェーンで発動できる通常罠"を同時に満たすカードはおそらく存在せず、そのバランスの中で採用カードを選ぶことになる。)

  • エンドフェイズに除外されるという天獄の制約を考えると、セラ効果を誘発できるような、自分のターンに発動できる罠を採用したい(強制脱出装置でもOK)

  • 天獄と同じく伏せ除去対策として採用するカード、たとえば《魔封じの芳香》や《抹殺の指名者》の優先度は若干下がる

  • 初動でランク4を立てるギミック(《パラレルエクシード》、《幻影騎士団シェード・ブリガンダイン》)の搭載も視野に入る

  • デッキ内からセットできる魔法罠のバリエーションを減らしてしまう《強欲で貪欲な壺》は噛み合いが悪い

(※)
"状況を選ばずに常にフリーチェーンで発動できる通常罠"とは、次の1から3の条件を全て満たす通常罠であると定義する。

  1. カードの存在を要求しない(「〜カードを対象にとって発動する」「相手フィールドのカード〜」といったテキストがあると、フリーチェーンであっても発動できない状況が生じる)

  2. 発動条件がない

  3. フリーチェーン 

セラ+狡猾+罠の形でターンを渡し、相手ターンに伏せ除去を撃たれた場合、その罠が発動できるか否かで盤面のリカバリー能力が大きく変わる。具体的には、発動できる場合、セラ効果を誘発しティオを特殊召喚すれば墓地から狡猾を拾いつつデッキから墓穴ホールをセットできるため、相手は1枚消費、こちらは盤面が1枚増えるため単純なアドバンテージでは+2となる。一方、発動できない場合は1:2交換が成立し、アドバンテージ-1となる。
ここで発動する通常罠の効果が「発動ターン中持続する」タイプの効果が望ましく、「相手の展開を防ぐ」「セラを戦闘や効果破壊から守る」といった拘束・遅延・盤面維持系の効果だとなお良い。
セラがいない場合についても同様で、「相手の魔法罠除去に対してチェーン発動し、発動ターン中は永続的に相手を拘束できるか否か」はゲームプランを左右する大きな差である。

例:
• 次元障壁
• 異次元グランド
• 威嚇する咆哮(※自分ターンには発動できないため厳密には定義2に抵触する)
• 小人のいたずら(※墓地に溜まらない)
• アーティファクトの神智(※《アーティファクト・デスサイズ》の効果が持続拘束系)



今後の活躍の展望:対《D-HERO デストロイフェニックスガイ》能力の高さ

天獄はデスフェニの効果から伏せカードを守ることができ、強制脱出装置のような破壊以外の方法でデスフェニを除去しうるカードや、墓穴ホールといったデスフェニの墓地効果を止めるカードを安全に通すことができる。

とはいえ、
チェーン1:(自分)デスフェニの効果を使わせられる効果
チェーン2:(相手)デスフェニ効果
チェーン3:(自分)破壊以外の除去罠

といった形でデスフェニの効果を使わせてからでないとこれらの除去や妨害は通らないため、1枚以上のディスアドバンテージは覚悟しなければならないが、そもそも天獄がいなければ罠を2枚重ね撃ちすることは非常に難しいだろう。

上のように罠を重ね撃ちできない場合、天獄効果でセットする魔法罠を工夫すればデスフェニを解決できる可能性がある。たとえば《次元障壁》で蘇生を阻害したり、《ドラグマ・パニッシュメント》から《エルシャドール・アプカローネ》を落とし、《影依の巫女 エリアル》の墓地効果でデスフェニを除外したりといった形が考えられる。

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