VRの持つ説得力を発揮した映像『Fresh Memories:The Look』:XR映画ガイド第4回
今回取り上げる『Fresh Memories:The Look』ではロシアのウクライナへの軍事侵攻によって爆撃を受け大規模な被害を受けた都市の1つ、ウクライナの北東部にあるハリコフを撮影しています。戦争の残酷さをVRで強く訴えてくる作品です。2023年のSXSWのオフィシャルセレクションにもなっています。監督のオンドジェ・モラヴェツは2022年に短編アニメーションVR映画『Darkening』でうつ病とそれに対処する方法を取り上げ、ヴェネチア映画祭のヴェネチア イマーシブ部門で発表しています。
『Fresh Memories:The Look』はプロジェクトの最初の部分ということで、後半部分は現在MRで開発中ということです。後半部分は想像できる最も安全な空間、つまり自宅で戦争に直面させ、戦争の悲惨さを体験者に伝える作品を想定しているようです。
見所:VRの持つ説得力を発揮した映像
2022年2月にロシアがウクライナに軍事侵攻しました。これによって起こったウクライナの市街地の惨状はニュースの映像を見ていても、どこか遠くの話のように感じている人は少なからずいたと思います。『Fresh Memories:The Look』では戦争によって破壊された場所に、そこに関係あっただろう人物が体験者を見つめて無言で立っています。それが10分間繰り返されます。場所は教室であったり、病院であったり、道路であったり、家の洗面所であったり、店であったり様々です。人も老若男女様々人々がこちらを見つめています。映し出された人々は言葉を多く語りませんが、空間を切り取らずに体験者を連れていくというVRの力を発揮し、VRならではの説得力で語られます。これから時が経ち、記憶が風化していく時(そうなることを心から望みますが)にもアーカイブとして強い力を持つでしょう。
フレームで切り取られた映像を見ているだけではどこか映画とかと一緒で遠い話に思えてしまいますが、VRでその空間に自分が連れて行かれると本当に強い力を持つということを改めて感じさせられます。
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