忍殺TRPGリプレイ【アーマー・ゾーン】02
前回のあらすじ:ヤンク暴走族あがりの男、ヤクザクランの下っ端であるニグチ・ショウヘイタは、ある時「マッドゴースト」と名乗る男に出会う。ハクスラ依頼人のエージェントをクローンヤクザごと殺した彼は、ニグチを手下に加えてカネモチ・ディストリクトへ向かう!カラダニキヲツケテネ!
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マッドゴーストは死体の傍らにいつの間にか立ち、指先から血を滴らせていた。彼はニグチなど眼中にないかのようにしゃがみ込み、死体の懐を探った。『ハメやがって……』彼はそういうと死体から財布を抜き取り、携帯IRC端末を握り潰した。何らかのトラブルがあったらしい。『おい』「ハイ!」
ニグチは震え上がった。依頼人のエージェントが殺された。自分も殺されるのか? 生きてこの場を逃げられても、ヤクザクランにこれを報告すればケジメか? 否、このトラブルに自分は何の関わりも『カネは手にいれた。ズラかるぞ』「アッハイ」マッドゴーストはすでに助手席に座っていた。
彼は顔を近づけた。『お前、名は?』「ニグチ、です」『よし。ニグチ=サン、俺の手下になれ。このまま……そうだな……カネモチ・ディストリクトに向かえ』「ハイヨロコンデー!」ニグチに選択権はなかった。マッドゴーストは得体の知れぬ化け物のように思えた。ユーレイか、あるいは……!
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カネモチ・ディストリクト八番街。カチグミ・ワナビーが集うこの繁華街の一角にある暗黒クラブでは、今宵も非合法のドラッグ・カクテル・パーティーが開かれている。マッドゴーストとニグチは厳重なセキュリティをどうやってか突破し、パーティー会場へと潜り込んだ。『カネのにおいがする』
マッドゴーストはそう囁いた。ニグチが周囲を見回すと、若者たちがカクテルやスシに舌鼓を打ちながら注射器を使い回してトリップしている。これもマッポーの世の一側面か。しかし、彼らからカネを引き出すには、どうすればいいのか。売りつけるドラッグも手元にない。マッドゴーストは……?
『ほら』ニグチの手に、マッドゴーストから何かが手渡された。年季の入ったパルスダガーだ。『ハクスラ・チームのスラッシャーが持ってたやつだ。そいつで殺して、カネを奪え』「え?」ニグチは訝しんだ。周囲には音楽と煙と熱気が溢れ、誰も彼らを気に留める者はない。ニグチは……頷いた。
彼の全身にアドレナリンが溢れ、ニューロンに暴走族のヘッドだった頃の記憶が蘇った。ヤクザクランの下っ端として、心の中にくすぶっていた火が燃え上がった。「イヤーッ!」ZZZT!「アバーッ!」眼の前を通りかかった無軌道大学生らしき男が、心臓にパルスダガーを突き刺されて死んだ。
ニグチがやったのだ。彼は口角を吊り上げ、昂揚した。『「ハハ……ハハハ!」』ニグチとマッドゴーストの笑い声がシンクロした。二人は次々に人を殺し、カネを奪った。あまりに無軌道に、簡単に。「アハハハ!ヤンバーイ!」「死んだ!ウケルー!」「刺激的!」「いいぞー!コロセー!」
ラリった男女たちがケラケラと笑い、カクテルを傾けながら突然の殺戮ショーを愉しむ。「『愉しく殺ろうぜ!アーハハハ!』」ナムアミダブツ!ここはマッポーの都だ。ブッダもジーザスも何千年も前に死んだ。血しぶき、悲鳴、折り重なる死体。なんたるアトロシティか。だが……その時だ!
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「「「ザッケンナコラー!」」」暗黒クラブの警備クローンヤクザたちが、一斉に銃口を向けた。やりすぎたのだ。マッドゴーストとニグチはとっさに踊り狂う男女の群れに身を隠し、肉の盾とする。BRTTTTTT!BRTTTTTTTT!「「「アバババーッ!」」」銃弾の雨が愚か者たちを無慈悲に薙ぎ払った。
ニグチは死体の下に隠れ、逃げ道を探る。昂揚が醒めてゆく。なんと無軌道なことをしてしまったのか。ヤクザクランやマッポにこのことが知られれば破滅だ。そもそも、ビズを終えた後にクランへ連絡を入れただろうか? 入れていなかった気がする。失態だ。ケジメでは済むまい。どうする?
『イヤーッ!』「アバーッ!」死体の陰から色付きの風が飛び出し、クローンヤクザの首を刎ねた。そうだ、マッドゴーストがいる。彼が敵を皆殺しにし、全ての証拠を湮滅すれば、何も問題ない。殺戮。殺戮。殺戮。赤と緑の血液が飛び散る。マッドゴーストは一方的に警備員を蹂躙していく……!
だが!BRTTTTTT!『グワーッ!』横殴りの銃弾の雨がマッドゴーストに降り注ぎ、無視できぬダメージを与えた!現れたのは戦闘兵器だ!『ドーモ。私は皆さんの安全を守るオムラ・インダストリのプロダクト、モーターヤブです。降伏受付時間は終了しました。テロリストを直ちに排除します』
『AARGHHHH!』マッドゴーストは怒り狂い、モーターヤブへ飛びかかる!SMASH!『ピガーッ!』攻撃命中!だが堅牢なオムラの戦闘兵器は倒れず、電磁ショックサスマタを振り回して反撃!『イヤーッ!』『イヤーッ!』マッドゴーストはモーターヤブと正面から殴り合う!なんたるカラテだ!
「スッゾコラー!」警備ヤクザの生き残りが、背後からマッドゴーストにマシンガンの銃口を向けた。ニグチはサイバネアイでそれを察知すると、即座にチャカガンを抜いてクローンヤクザを撃った!BLAM!「アバーッ!」即死!『イヤーッ!』SMASH!『ピガーッ!SAYONARA!』KABOOM!
マッドゴーストは恐るべきカラテでモーターヤブを破壊、爆発せしめた。『助けられたな』彼はスシを食べながらニグチの傍らに近寄り、彼を死体の下から助け起こした。『生きているのは俺たちだけだな。どんな気分だ? ソーマト・リコールは視えたか? サンズ・リバーは?』「……ハハハハ」
ニグチは空虚に笑った。何もかもが彼を通り過ぎていった。カネも女も、サケもクスリも、ヤクザクランのしがらみも。あるのはただ、暴力だけだ。シンプルで簡単な手段。圧倒的な暴力があれば、全てを手に入れ平伏させ、エゴを押し通すことができる。自由だ。彼はサイバネ化された拳を握った。
???
「イヤーッ!」シャウトとともに何者かが飛びかかって来た!『「イヤーッ!」』マッドゴーストとニグチの声がシンクロし、カラテで奇襲を防いだ。襲撃者は跳躍して距離をとり、アイサツを繰り出した。
「ドーモ、キルフィストです」
◆キルフィスト(種別:ニンジャ)
カラテ 3>6 体力 5>8
ニューロン 4 精神力 4
ワザマエ 3>4 脚力 2>3/N
ジツ 2 万札 24>0
DKK 0 名声 2>3
攻撃/射撃/機先/電脳 6/ 4/ 4/ 4
回避/精密/側転/発動 6/ 4/ 4/ 6
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
特になし
◇ジツやスキル
☆ヘンゲヨーカイ・ジツLV2
◉頑強なる肉体:体力+2
◉知識:公僕の流儀、伝統的アート(ショドー)
◉交渉:威圧、理路整然
○生い立ち:ショドー十段
能力値合計:14>18
キルフィストと名乗った存在は、キツネ・オメーンで顔を覆い、獣めいた異様な巨体にカラテをみなぎらせていた。そのバストは豊満だ。『ハハハハハハハ……!』嘲笑うマッドゴーストの輪郭が歪み、伸び上がり、ニグチに絡みついた。ニグチは思い出した。そうだ。俺は。俺は。010101010101
ショウヘイタ・ニグチ=サン、おまえはニンジャになった
◆ニンジャネーム:スモークアックス>???
【カラテ】2【ニューロン】3【ワザマエ】1【ジツ】2(カラテミサイルLv2)
【体力】2【精神力】3【脚力】2【回避】3 【交渉】1【名声】1【万札】0【DKK】0
生い立ちは『○サイバーゴス』。知識スキルは『◉知識:バイオ系メガコーポ』。
初期装備は『ZBRアドレナリン注射器』。初期サイバネは『サイバネアイ(ローンあり)』だ。
背景タイプ『秘密や陰謀』
ニンジャはアイサツされればアイサツを返さねばならない。古事記にも書かれている。ニグチは掌を合わせてキルフィストにオジギした。「ドーモ、キルフィスト=サン。マッドゴーストです」
◆マッドゴースト(種別:ニンジャ)
カラテ 3>5 体力 3>6
ニューロン 3>6 精神力 3>6
ワザマエ 3>4 脚力 3>4/N
ジツ ->2 万札 ??
DKK 多 名声 1
攻撃/射撃/機先/電脳 7/ 7/ 6/ 6
回避/精密/側転/発動 8/ 4/ 4/ 9
即応ダイス:2 緊急回避ダイス:2
◇装備や所持品
▶テッコLV1:カラテと回避+1
▶サイバネアイLV1:ワザマエ判定+1、射撃時さらに+1
▶ヒキャクLV1:脚力と回避+1
◆カタナ:強攻撃、精密攻撃可
◆パルスダガー:近接テック武器、ダメージ1+電磁1
連続攻撃上限2、精密攻撃可
◆チャカガン:射撃、ダメージ1
◆ストリートウェア:緊急回避+1
◆レッグガード:緊急回避+1、脚力ダメージ軽減1
◆ZBRアドレナリン注射器
◇スキル
☆カラテミサイルLV2
◉シャープシューター:集中時に射撃+3
◉ニンジャソウルの闇:体力・攻撃・射撃・発動+1
○生い立ち:テッポダマ
◉滅多打ち:回避ダイス2を消費し連続攻撃2(固定、痛打・殺伐なし)
◉知識:ストリートの流儀、ビークル
◇ニンジャソウル憑依直後、暴走状態
能力値合計:9>19
彼は思い出した。得体の知れぬ化け物「マッドゴースト」は、自分自身であったことを。依頼人のエージェントやクローンヤクザを殺し、暗黒クラブの客を殺し、カネを奪い、モーターヤブを破壊したのも。キルフィストはこちらを指差し、冷酷に告げた。「ニンジャめ。派手に殺ってくれたな」
ニンジャ。そうだ。ニンジャだ。自分はニンジャになったのだ。異形の怪物に!「……ザイバツか野良ニンジャか知らんが、ここはソウカイ・シンジケートのシマだ。オトシマエをつけさせてもらう」「俺は自由だ!」マッドゴーストは嘲笑った。「アンタみてェな飼われた犬じゃない!」自由!
「愚かな野良犬め。ならば貴様を打ちのめして連行し、再教育を施す。二度と我々に逆らえんようにな!」キルフィストはそう言い、カラテを構えた。一触即発アトモスフィア!
戦闘開始
【続く】
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