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夕遊の本棚

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ひと仕事終わって、おいしい珈琲や紅茶を片手に読みたい本。仕事で読む本。とにかく、たくさん読みたい、楽しみたい私の本棚をご紹介します。
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記事一覧

ファンタジーと歴史とSFと。ケン・リュウ『母の記憶に』古沢嘉通他訳

有名すぎるくらい有名なケン・リュウの小説。これまで、なかなか時間とタイミングがなかったで…

夕遊
8時間前
6

歩いてみたくなる古都の風景『台湾の歴史と文化』大東和重

最近、台湾について読みやすくて専門的な本が入手しやすくなりました。読者としては単純にうれ…

夕遊
2週間前
35

南の島の生命力と詞の世界。『雨の島』呉明益(及川茜訳)

台湾の呉明益さんの小説は、日本語訳がいくつかあります。現実とフィクション、現在と過去が行…

夕遊
2週間前
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なぜ紙の書籍が売れなくなったか――中国の書籍販売事情

行舟文化 張克溯  昨年、私事で中国上海に一時帰国した。用事をすべて済ませてから、学生時…

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「14億分の10憶」のリアル『中国農村の現在』田原史起

読む前から、間違いなく田原先生の本なら面白いだろうなと期待させられる本。そして、実際隅か…

夕遊
1か月前
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耽美をめぐる社会情勢と魅力『BLと中国』周密

以前から興味を持っていた分野なので、すごく読みたかった本ですが、発売前から重版がかかるほ…

夕遊
1か月前
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『東洋の至宝を世界に売った美術商ーハウス・オブ・ヤマナカ』朽木ゆり子

京都の泉屋博古館にいくと、とんでもなく古い青銅器がたくさんあって、しかもそのうちのいくつかは、世界で2つか3つのうちの1つだとか学芸員さんに教えてもらって腰を抜かします。そんなものが、なんで日本にあるのかと驚くのですが、よくよく考えると清朝末期に多くの国宝が流出したことは映画『ラスト・エンペラー』でも、陳舜臣さんの直木賞を受賞した小説『青玉獅子香炉』でもおなじみでした。 あとは、何気なく読んでいたラノベ『宝石商リチャード氏の謎鑑定』では、古美術のオークションがあって、古美術

ノスタルジー上海。『長恨歌』王安憶(飯塚容訳)

予備知識ゼロで手に取った、王安憶の長編『長恨歌』。白居易の『長恨歌』と同じ名前の現代小説…

夕遊
2か月前
34

知らなかった日本のタイル文化。『和製マジョリカタイル―憧れの連鎖』INAXライブミュ…

先日、台湾の彩色タイルの本を買って、ちょっとづつ楽しみながらパラパラめくって読んでいたら…

夕遊
3か月前
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【香港島】天官賜福。筲箕湾の道教寺院(廟祠)めぐり。

2023年夏、仕事ででかけた香港島。せっかくの機会に、飛行機までの半日を観光しないわけにはい…

夕遊
3か月前
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ポップな懐かしさ。『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』康鍩錫

台湾の裏通りや下町を歩いていると、レトロな建物や壁、看板があって、歩きながらみているだけ…

夕遊
4か月前
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『踊る大捜査線』エッセンスも楽しめる密室殺人ミステリー『厳冬之棺』孫沁文

最初のページからひきこまれる、一気読み必至の良質なエンタメです。文章のテンポがよくて、構…

夕遊
4か月前
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「中国」との相克の戦後史。『台湾のアイデンティティ』家永真幸

タイトルを見たときは、現代台湾事情を中心にビギナー向けにまとめた本なのかなと思いました。…

夕遊
4か月前
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中世の豊穣な海を旅する。『戦国時代を見た中国人 』上田信

15世紀から16世紀は、日本でいえば室町時代から戦国時代。中国は明の時代。高校日本史の教科書にも載っている「日明貿易」は、遣唐使ならぬ遣明使が「勘合」(=通行証)を持って、海をわたり、中国のルールにしたがって交易をしていました。 ただし、密貿易をする人や海賊もいたので、16世紀の中国人にとって、直接知ることのできる日本人は野蛮人。当時の百科事典にも、中国の海岸にやってきて収奪、強盗する「倭寇(わこう)」と書かれていたそうです。現代の研究では、倭寇が日中その他混成チームで、中