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巨大ネタ寿司と、鉄板大お好み焼き

大相撲の力士が駆け付けてくる巨大ネタ寿司屋

私が小さいころ、近鉄南大阪線の沿線の阿部野橋駅から数駅のところ辺りに有名な寿司屋があった。実は私自身はこの店に直接行ったことはないのだが、親父が週に一度は大きな寿司折りを土産として持ち帰ってきていたのだった。この店の寿司はネタが巨大で、穴子やウナギは一つの握りにそれぞれ一匹分のネタが載る。蛸は、大きな足の部分を四等分したものが一つの握りに載っている。その他のネタもすべて異常に大きくて、小さな握りのメシを大きなネタが重なるように包んでいるといった具合だった。小学生だった私が一つの握りを食べると、ネタの種類によっては、口中が泡だらけになるような気がしたものだった。ちょっと大げさに言えば、小さな子供なら、一つの握りで結構お腹がいっぱいになるほどネタが大きかった。

一つの握りの上にまるまる一匹のウナギ

近鉄南大阪線の路線のこの寿司屋のある前後数か所の駅の住民の間では、この寿司屋は特に有名で、とりわけこの店がタイムリーな話題になるのは、大相撲が大阪にやってきているときだった。大相撲大阪場所は難波の府立体育館というところで行われるが、難波とこの寿司屋は電車で行けば乗り換えなくてはならないが、タクシーで移動すれば実際の距離はそれほど離れているわけではない。だから大相撲大阪場所が開かれている間は、夕食時から夜間にかけて、様々な部屋の多くの力士がこの店に詰め掛けていた。残念ながら、私は一度も店に行ったことがないが、大きなネタは何度も食べて知っている。そういうことで、場所中にはこの店に大勢の力士がたくさん集まっていたという話はあくまで親父の経験談だ。
子供心にも、いくら店が大きくても、一つの店に多くの力士が集まるということがなんとも納得できず、何度も親爺に聞くのだが、親父はそれでも大勢の力士が、何とか折り合いをつけて、この店で寿司を食べているという。確かにこの店のことは、わが家だけではなく、周辺の多くの人がうわさしていて、口をそろえて実際に多くの力士が集まっているというのだ。

おいしくて圧倒的な料理の量を誇っても老舗にはなれない

この巨大ネタの寿司屋の話を口すると、やはり京都は五条の壬生川辺りにあった、一人前で鉄板が山盛り一杯になるような大きなお好み焼きや焼きそばを客に出す店があったことも話さなければならない。この店は私が幼いころではなく、大人の私が何度も行っていたので、これは私の実際の経験だ。なぜ、超巨大な料理の量で客を圧倒する飲食店のことを店のことを書いているかというと、私の経験では、おいしくて圧倒的な量で評判を呼んだ店には、何代も続く老舗がないということを言いたかったのだ。
その理由を私も考えたが、一つはおいしくて圧倒的な料理の量を誇る飲食店は、儲けの視点で見ると、最終的にコストパフォーマンスがあまりよくないということになるのではないだろうか。確かに、おいしくて圧倒的な料理の量を誇る店は長期的に集客力がある。しかしそれでも経営が続かないという現実を考えると、結局飲食店は、ほどほどうまくて、ほどほどの料理の分量があるということが一番無難な経営方針ではなかろうかと思い至ってしまうのだ。


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