贅沢三昧な私とあなた

学校や勤め先などで辛いことがあった場合、自分自身を慰める方法は世間的に言えばいくつかある。好きなコンテンツに逃避したり、寝たり、より矮小な存在を意識してみたり、より巨大な物事に向き合ってみたり。

教科書的には「昇華」と呼ばれる方法で、創作や自己研鑽にイライラのエネルギーを向けるのが一番良いとのこと。そんなことが全人類できるならこの世界にストレスは存在しなくなるはずなのだが。イライラを他人にぶつけて、ぶつけられた当人がイライラするからさらに他の人に当たってしまうという循環構造である。私はできる限り自分にとどめようとも思うがそんなに上手く行ったら人生楽チンなんだろうなぁ。

私が最近よく実践?しているのは、「この仕事どうせそのうち辞めるしな」と思うことだ。実際、今の仕事を続けるか辞めるかは決めていない。が、何となく他のことで食べて生きていければいいなーと漠然と考えている。つまり、今現在向き合っていることが些細で矮小な物事なのだと言い聞かせることで逃避しているのである。(土日休みとか何者かの下についてタスクを与えられるのが向いてないという気持ちも一方としてある。そのため一概に見下しているわけではない。)(ひとまず今回は逃避が正しいか間違っているか、学校や仕事に向き合わないことの是非は置いておこう。)

ただ、そう言うと家族からは「もったいないからやめとき」と言われる。まぁ確かに面倒くさい試験と面倒くさい面接をくぐり抜けて今の職に就いているわけなので、もったいないのはまぁおそらく事実ではあるだろう。

ただ、私としては今の職から見える景色を知ることができたこと、面倒くさい試験と面接を経て知見が広がったこと、そして今「仕事を続ける選択」と「仕事をやめる選択」を抱え込むことができている時点で、就職活動当時の労力に見合った報酬は獲得できていると感じている。

割と「生涯安泰」と言われがちな仕事をしてることもあって、世間の平均から見れば「辞めるなんてもったいない」というのが多数の意見だとは思うが、私としてはそこまで「もったいない感」はないのである。

そう考えると「もったいない」というのは非常に相対的な概念である。もったいない、と考えるときには「誰にとって」を必ず付随させて考えなければならない。家の台所に出たゴキ○リを殺虫スプレーでやっつけて捨てることでさえも、それを食料とする爬虫類やアシダカグモからしたらもったいない行為なのである。

(脱線、兼発展問題:どのような存在者にとっても「もったいない」行為はあるだろうか。有益なことを捨てる行為、というように強い一般化をもってすれば説明できそう。ただ、断食中の人であれば食事という有益なものを断ち切っているので「食事という有益なものを捨てる」という行為をしていると言えるが「食事をしないなんてもったいない」とは言わない気もする。食事がその人にとって有益でないのだ、という主張で反論されそうだが、そうすると有益さの定義が必要になってくる。客観的な有益さと主観的有益さは別として考えるべきか?)

そういえば私の兄が持っている本を全て裁断しスキャナにかけて廃棄しているのを見て何となく「もったいないな」と思ったことを思い出す。ただだからといって裁断された書物がほしいとも思わなかったのだが。

個人的には本は物体として所有したい欲求があるので、きっとそのようなことはしないだろう。物体があるからこそ責任や所有の概念が意識しやすくなると考えている。(このあたり、サブスクアンチとかレコードCD派閥とかとも関係してそう。)

そう考えると、ある事物について自分と比べてより低い評価に基づいて行われる他者の行為を見たときの気持ちを「もったいない」と呼ぶのだろうか。なんとなくそんな気がする。

たとえば時間に関して言えば、時間に対する評価が高い人、つまり時間を大切にする人ほど、ただなんとなく時間を過ごしている人に対して「もったいない!」と言うということだ。

ただまぁ、私としては「そんなのもったいないよ!」と言ったり言われたりするとなんだか上から目線な気がしている。したがって、「もったいない」というのを「贅沢」という概念に置き換える、というライフハックを大学生の時に身に着けた。(なにせコロナ禍のステイホームで、寝るか好きなことをするかしか時間の過ごし方がなかった時期があったのだから、そのくらいのメンタリティはないとやってられない。)

もったいない、が相対的な概念なら、見方を変えればそれは贅沢に置き換えても差し支えない。したがって、「仕事なんていつでも辞めれるし」という逃避も、誰かさんの焚書もどきも、ある種の贅沢である。昼寝しすぎた時もyoutubeを見すぎた時もこう自分に言い聞かせればいい。「贅沢に時間を過ごしたのさ。最高!」

何が言いたいかというと、こんな雑な記事を読んで時間を浪費した読者のあなたに対して、私は思うのだ。
「贅沢に時間を使っているなぁ。」と。

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