(閲覧注意)真っ白い部屋から初めて出た少女の話

「私は世界に興味もないし、他人に興味もない、ましてやあなたになんてもっと興味がない。」
「じゃあ、何になら興味があるのさ」
「鳥が飛んでいるから。」
「雨が降ってくれないのに」
「ずっと同じ場所から動かない虫はいずれ石になってしまうの。」
「ひどく退屈な話だ 吐き気がする」
「そういってあなたはまた金儲けの話ばかり読んでいるね。」
「僕の家のまわりには蛇がいて 悪い虫や動物をみんな飲み込んでくれる」
「でも、そのせいで窓が割れたの。」
「この部屋に窓なんてなかった」
「そんな些細なこと、どうでもいいよ。」
「些細というよりナンセンスだ」

「夜の理科室から早く逃げ出そう。見つかってしまう前に。虹色に光る水溶液の入った試験管が割れないよう気をつけて。」
「けれど エンドロールに君の名前はなかったじゃないか」
「怒り方も忘れてしまった。全部が大切じゃなくなってしまったの。」
「逃げよう」
「石でできた犬の置き物を烏がつついている。」
「はやく」
「門の鍵がかたく締まっているね。」
「ああ 僕の所為なんだっけ」
「ポストは郵便物でいっぱい。隣のインターホンも壊れていて使えない。」
「ごめんなさい 許して」
「電車に乗ったけど聞いたこともない名前の駅に着いてしまって、風景は見覚えがあるけど全然違う路線のものだった気がする。そうやって右往左往している間に快速電車はどんどん進んでいくけれど、いつまでも目的地にとまってくれない。」
「ごめんなさい」
「昔は教会だった廃墟には赤いペンキが無造作に撒かれてる。誰かの日常を食い潰しているように見えるけど、それはそれで美しく感じられる。」

直後、むせび泣く声だけが響く。

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