ご免侍 六章 馬に蹴られて(十九話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬は、琴音を助ける。大烏城に連れてゆく約束をした。一馬は、琴音と月華の事が気になる。一馬達は西国に向けて旅立つが、宿で襲撃を受ける。敵は天狼か!
十九
山賊の権三郎が、血の気の引いた顔で突っ立ていると仲間の山賊達が八人くらい姿を見せる。三人の山賊が後ろを遮断するように刀を向ける、月華を見て今にも襲いかかろうとしていた。
「どうした、親方」
「早くやっちまおうぜ」
山賊達はすらりと抜いた白刃でいきなり襲いかかる。手慣れた男達は一馬を狙う。山賊は捕まれば殺されて首をさらされる。凶悪な手口で通行人を生かして帰さない。女達も散々にもてあそばれて売られるか、そのまま山賊達の妻として生きていく。その非情さが身についているので、躊躇がない。
山賊の剣筋は殺しに特化しているので、どこを切りたいか一馬には、丸わかりだ。
鬼おろしを抜くと回転しながら踊るようにくるくると体を動かす。幻惑された山賊の刀は一馬にふれることもなく、次々と刀を折られて斬られて死んでいく。
瞬きを十数回もしないで山賊は全滅する。後方の三人は月華が抜いた仕込みの忍者刀で一蹴されていた。
「なんだい、素人もいいところだね」
つまらなそうな月華の目つきは、冷たく凍るような無表情さを取り戻している。
「権三郎、お前のアジトに案内せい」
「……はい」
まるで亡霊だ、よろよろと案内する権三郎のねぐらは、猟師小屋のような雑然としたねぐらだった。
「ここです……」
「雄呂血丸、おろしてくれ」
大男の背中から降りると、昔のように足腰がしっかりしている。一馬達が家に入ると数人の女達がおびえたように固まっていた。祖父の一龍斎は、女達にやさしげに話しかける。
「もう安心だ、家に戻れるぞ」
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「お前を生かしたのは、当時はガキだったからじゃ」
「もうしわけありません」
山賊の権三郎は、土間で頭を地面につけて土下座をしている。
「獄門は覚悟の上だな」
「……へぃ」
「だが手助けすれば、生かして置くぞ」
藤原一龍斎は、権三郎をねめつけると、道案内を頼む。
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