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ご免侍 六章 馬に蹴られて(二十二話/二十五話)

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あらすじ 
 ご免侍の一馬かずまは、琴音ことねを助ける。大烏おおがらす城に連れてゆく約束をした。一馬は、琴音ことね月華げっかの事が気になる。一馬達は西国の旅先で山賊の権三郎ごんさぶろうと出会う。彼を捕らえた一馬は……


二十二

「山賊を連れていきたい」
「あのヒゲだらけの男ですかな」
「……」
 
 一馬が切り出すと雄呂血丸おろちまるはうなずくが、水野琴音みずのことねは黙っている。

「信用できないかもしれない……それでも」
「命を助けたいのですね」

 男装姿の琴音ことねは、顔をぱっと上げると嬉しそうに一馬の手をつかむ。

一馬かずまにまかせます」
「わしも問題はない、あの男は罪を犯しているが食うためにやってますからな」

 無造作に仲間にすることを反対されるかと一馬は思っていた、不思議そうな顔をしていると雄呂血丸おろちまるは笑いながら

一馬かずま殿、みなが信用したのは、あの男では無く、あなた自身ですぞ」
「きっと……大丈夫ですよ」

 一馬がその言葉に救われたような気がした瞬間に、ガタンッと大きな音がすると山小屋の戸板が蹴破けやぶられる。

「ご免侍は、どいつだ!」

 頭に金色の鉄輪をはめた男は黒装束で、両手には金属の鉄貫てっかんをつけている。

 体は鎖帷子くさりかたびらなのか、鉄製のくさりを編み込んだ服を身につけていた。それだけでも十分に重いと思うが、予想を超える早さで一馬に迫る。

「ご免侍!」

 名乗りを上げると同時に琴音ことねから離れて、敵に向かう。鬼おろしを皮のさやから抜くと、敵の武器を確かめようと距離を取る

(刀は……持っていないのか)

 男は一馬を標的と定めて腕で突きを入れる、拳には刃がついた鉄貫てっかんを握っていた。

 鬼おろしでふせごうとしたが、正拳が見えないほどの早さで、一馬の腕を斬る。腕から血が流れた。

(まずい、鬼おろしでは防ぎきれない)

 鬼おろしは斧と同じで、素早い攻撃に対応できない。鬼おろしを盾にして防ぐ事しかできない。

「なんだ、四鬼の【一人】を倒したと聞いたが、こんなものか」

 覆面ふくめんから見えてる目が、ゆがんだ笑いを浮かべる。

#ご免侍
#時代劇
#馬に蹴られて
#小説


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