見出し画像

SS 消えた先生【放課後ランプ】#毎週ショートショートnoteの応募用(400文字位)

 放課後ランプを持って薄暗い階段を降りる。階段の踊り場にある大きな姿見すがたみが私をうつす。

「変な顔……」

 キャンプ用のLEDランプはミカン色であたたかく感じる。

「なにしてる」
「先生……」

 そろそろ定年の担任が私をじっと見ている。

「鏡に興味があるのか」
「別にないです」

 数年に一度、学校から女生徒が消える。鏡に吸い込まれたと噂になる。夕暮れで薄暗い時間に誰にも知られずに消える。

「俺も定年で引退だ」
「……さみしくなりますね」
「俺はさみしくないよ」
「そうなんですね……」

 今も私をじっとみている。

「なぜ鏡を見たいんだ」
「……なんかもう嫌になって」
「そうか……数年に一回は、お前のような生徒が来るんだ」
「……」
「鏡の中に入るか?」
「……え?」

 私の腕をつかむと先生が鏡の中にすっと入る、腕だけ外にあって私をつかんでいる。

「中は楽しいよ」

 腕をふりはらって私は逃げた。先生はそれっきり姿を見せない。

#毎週ショートショートnote
#放課後ランプ
#怪談

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?