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ご免侍 六章 馬に蹴られて(二十四話/二十五話)

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あらすじ 
 ご免侍の一馬かずまは、琴音ことねを助ける。大烏おおがらす城に連れてゆく約束をした。一馬は、琴音ことね月華げっかの事が気になる。一馬達は西国の旅先で山賊の権三郎ごんさぶろうと出会う。彼を捕らえた一馬は……


二十四

 金鬼こがねおにが足を踏み込み藤原一龍斎ふじわらいちりゅうさいに、突きを入れた。

 土間に血がたれる。赤黒い血は、金鬼こがねおにの手首からしたたり落ちていた。一龍斎いちりゅうさいは、鉄貫てっかんを刀のみねで受けるとくるりと回して下段から上段に切り上げた。

 日本刀同士の戦いならば、手首は切り落とされていたかもしれないが、突いた後の引きが早いので少し切れただけだ。

「さすがですな、老いた剣士には通用しませんか」

 一馬は縮地の術を使うと金鬼こがねおにの足下めがけて、鬼おろしを振り下ろす。土間の板が大きな音を立てて砕け散った。

「分が悪い、これにてごめん」

 手首をつかんで金鬼こがねおに疾風しっぷうのように山賊の小屋から走りさる。

 一馬は肩で息をしながら自身の無能感にさいなまれた。

(まただ、お爺々様じじさまが居なければ、敵を倒すこともできない……)

「一馬、攻撃を受けたら体を回して切り上げろ」

 藤原一龍斎ふじわらいちりゅうさいは、ふらふらと立っているが、ふいに崩れるように座り込む。

「お爺々様じじさま

 みなが一龍斎いちりゅうさいの体を心配して集まった。

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「ここもダメだね、早く出ましょう」

 お仙は、山賊に捕まっていた女達に金を渡して一時的に尼寺に身を隠すよう伝える。金は山賊達が旅人から奪ったもので、十年は暮らせそうな額だった。

 藤原一龍斎ふじわらいちりゅうさいは顔色も悪く、雄呂血丸おろちまるに背負われてぐったりしていた。雄呂血丸おろちまるは一馬に

「これからどこにむかいましょう」
「伊豆の鍛冶屋と聞いている、まずそこまで行こう」
「ようござんす、ご案内いたします」

 権三郎ごんさぶろうは、すっかり猟師姿となり山賊には見えない。人知れずに進める山道を案内する。

#ご免侍
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