ご免侍 六章 馬に蹴られて(十八話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬は、琴音を助ける。大烏城に連れてゆく約束をした。一馬は、琴音と月華の事が気になる。一馬達は西国に向けて旅立つが、宿で襲撃を受ける。敵は天狼か!
十八
「あははははっ」
「そんなに笑わないで下さい」
お仙から琴音の話を聞くと月華が大笑いした。一馬はそのまま起きて月華と入れ替わり朝まで起きていた。あれからは追っ手は襲ってこない。
「私はそんなことをした覚えはないです」
「寝ぼけすぎよ」
女三人が話に花を咲かせながら楽しそうに旅をする姿は平和そのものだ。
「雄呂血丸、このまま裏街道に入るぞ」
「承知しました」
まるで馬のように雄呂血丸に行き先を示してさびれた道を進む。雄呂血丸は徹夜なのに平気そうだ。
「お爺々様、裏街道は危なくないですか」
「そこは蛇の道は蛇じゃ」
裏といっても本来の道ではない、山賊や夜盗がでる危険な道になる。宿場町はなく、あるのは怪しげな商人宿しかない。渡世人や無宿者、御法度の品物を売る商人が旅する道だ。
「なによりも関所がない」
「それは良いですな」
雄呂血丸は、祖父を背負いながらも元気よく歩きながら上機嫌だ。
(雄呂血丸が居なかったら、俺が背負う事になるのか)
狭い街道は馬が通ればそれで一杯になるくらいに細い、行き交う人も居ない道はさびれて暗い。どこまで歩いても目印になるものがまったく見えない。一里塚すらないので本当に正しい道なのかすらわからない。
「雄呂血丸、止まれ」
祖父が短く鋭く停止させると、後方の女達もすぐに追いついた。
前方からゆっくりと毛皮をまとった男が現れると太刀を抜く、そして大声で口上を叫ぶ。芝居じみた見得を切ると手足を大げさに広げた。
「天下往来、裏の道、ここに迷いこんだが運のつき、金と女を置いて引き返せ」
「権三郎か、まだ生きてたか」
祖父が名を呼ぶと驚愕した顔に変わり、山賊の体が固まる。
「一龍斎様……」
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