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雑多な怪談の話

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記事一覧

SS 赤い靴【#白い靴】 #シロクマ文芸部

 白い靴を見つめる。真新しい白い長靴はおかあさんが新しく買ってくれたけど、ぶかぶかで歩くと転びそうになる。 「大丈夫、すぐに大きくなるから……」  おかあさんは、なんでも勝手に決めてしまうので困る。ぶかぶかだから足をぶらぶらさせると、ゆるゆるする。 「赤い色が良かった」  赤い靴♪ はいてた♪ 女の子♪  悲しげな歌は、今の自分にはぴったりに思えた。大人は何もわかってくれない。  イジンさんに♪ 連れられて♪ いっちゃった♪ (イジンってなんだろう?) 「イジ

怪談 湖畔の古い旅館

「この旅館だ」 「古い旅館ね」  オカルト好きな俺と彼女は、幽霊が出ると噂の旅館に泊まる。静かな山奥の旅館は、古い湖畔のそばに立っている。 「いらっしゃいませ」  年老いた仲居は、皺だらけで表情すら判らない。薄暗い廊下は電灯もついてない。 「ここです……」 「まぁきれい」  窓から見える静寂で深い湖は緑色に染まり、ぞっとするような雰囲気でシュチエーション的に最高だ。 「幽霊でるかもな……」 「楽しみ」  脳天気な彼女は、マニアック過ぎて俺は飽きていた。彼女は本気

SS 消えた先生【放課後ランプ】#毎週ショートショートnoteの応募用(400文字位)

 放課後ランプを持って薄暗い階段を降りる。階段の踊り場にある大きな姿見が私をうつす。 「変な顔……」  キャンプ用のLEDランプはミカン色であたたかく感じる。 「なにしてる」 「先生……」  そろそろ定年の担任が私をじっと見ている。 「鏡に興味があるのか」 「別にないです」  数年に一度、学校から女生徒が消える。鏡に吸い込まれたと噂になる。夕暮れで薄暗い時間に誰にも知られずに消える。 「俺も定年で引退だ」 「……さみしくなりますね」 「俺はさみしくないよ」 「そ

SS 井戸の鬼【#子どもの日】 #シロクマ文芸部

 子どもの日が来た。村の大人達は数日前から準備をはじめている。僕は親戚の縁側で足をぶらぶらさせる。畳で横になる従姉は、だるそうだ。 「端午節って何?」 「鬼に憑かれない支度……」  親戚の家にGWにおとずれるのは初めてで父親は親戚たちといそがしそうだ。  従姉は十六歳で県内の高校に通っている。 「小さな子は、鬼になるからね……」 「……迷信だよね」 「前に端午節を、さぼった子がいた」 「それで」 「鬼になった」 「嘘だ」 「なったよ、だから井戸に落としたんだ」 「……

SS 色のある世界

「これで見えるようになります」  白衣の医者が自信に満ちた声で私に告げる。私は幼い頃に事故で頭部に外傷を受けて目が見えない。  見えないのは不便だが、馴れてしまえば生活はできた。でも両親は諦めきれずに治療法をさがしていた。 「新しい治療方法が見つかった、これで視力が回復する」 「良かったね」  父と母はとても嬉しそうにしているので、私は黙ってうなずくのみだ。 (見えるってどんな感じ……)  とても幼かったので私は見える事の記憶が無かった。顔は覚えている、部屋は覚え

孤独な少女【新生活20字小説参加作品】

新しいクラス、新しい友達、新しい無関心で その新しくもない世界で、孤立を望む少女は 何も関心がなく、ただただ椅子に座るだけで そんな彼女を見つめる一人の男子は心揺れる 「彼女と友達になりたい」手を差し出す勇気 いつも彼女を追い求める瞳は、少女に伝わる 「私に近づかないで」無機質で無感動で冷静 「君と友達になりたい」男子は彼女に近寄る 淡く影の無い少女は、彼を見て微笑を返した 「死んだら一緒に」腕をつかみ彼と窓から… #新生活20字小説 #シロクマ文芸部 #

SS 人魚【#水槽のうんこ】 #爪毛の挑戦状

 地下の水槽は汚れてやすいので浄化装置の稼働だけではなく塩素の錠剤を入れる。白い錠剤を入れるとぶくぶくと泡を立てた。うんこをするので浄化のためだ。 「ちょっと苦しいけど我慢してくれよ」  人魚が顔を出した口をパクパクさせている。この施設では彼女たちを実験のために捕獲して閉じ込めていた。人魚が顔を出して俺に話しかける。 「オサカナアル?」 「あるよ」  バケツから鯖をまるごと投げると手で受け取って食べ始めた。人の言葉を理解して真似る事ができる人魚は小学生くらいの知能はあ

SS 黒いオルゴール【#小さなオルゴール】#青ブラ文学部(520文字くらい)

「黒いオルゴールがあるの」 「どんなオルゴール?」 「小さくて、真っ黒なの……」  小さなオルゴールを開くと、美しくきれいな曲が奏でられる。 「先生、これあげる」 「あ……ありがとね」  手製のオルゴールは、どこか歪んだ印象がある。そして黒い色をしていた。  都市伝説でよくある怪奇現象が起きる話で、黒いオルゴールを聴いていると精神を失調して最後は……ありがちな話だ。  生徒達が工作の授業でオルゴールを作り、生徒は自分の作品を持ち帰る。だけど一つだけ余っていた。誰が作

SS 夢 【#春の夢】 #シロクマ文芸部

 春の夢を見たと彼女はつぶやく…… 「――春の夢なんですよ、桜が咲いていてとてもきれい」 「良かったですね」  胸元は鎖骨が浮きでて痛々しい。 「私も桜を見たい」 「もう葉桜ですからね」  布団から体を起こしているのもつらそうに見える。しばらく話して別れの挨拶をそこそこに部屋を出た。部屋の外で待っている母親がつぶやく。 「来年までは、もちません」 「……そうですか」 「婚約を解消しましょう」 「わかりました」  婿入りの予定だった、次男の自分にはもったいないくらい

SS 孤独な男【花冷え全員集合】 #毎週ショートショートnoteの応募用(440字くらい)

「元恋人が部屋の中に座ってるのですか……怖いですね」 「付き合ったつもりはこちらはなかったんですけどね…」  事故物件、それは前の住人が死亡した賃貸の事である。次に借りる人には告知義務があるが、誰か借りた後ならば必要ない。 「それであなたは事故物件専門に住んでいると……」 「はい……安いので」  花冷えがするのか雨で寒い。陰鬱な青年は憔悴して顔色が悪かった。 「それでどうしたいのですか?」 「早く楽になりたい……」 「引っ越すとか?」 「ついてくるのです」  彼は事

SS 発明品【オバケレインコート】 #毎週ショートショートnoteの応募用(410字くらい)

 博士が透明なレインコートを着ている。その前に一人の記者がメモをとっていた。 「博士、発表されたオバケレインコートとは、どんなものです」 「着るとオバケになります」  記者は質問を重ねた。博士の作った素材で霊界と接触できる。画期的な発明で興奮をした記者は 「死んだ人に会えますか?」 「可能です」  博士と記者がレインコートを着て、墓場に到着するとオバケが居る。 「見えますね」 「レインコートの力です」  博士がオバケに挨拶する、記者も取材できた。死んだ理由やオバケ

SS 祈るとき 【#祈りの雨】#青ブラ文学部(760文字くらい)

 薄暗い森に逃げ込む。追っ手の村人は、しげみを棒でつつく。 (もう少しよ) (あい、姉さん)  雨が降らない、雨を降らせるためにはイケニエが必要だ。幼い妹が選ばれる。 「村から逃げましょう」 「でも村のためには……」 「迷信よ、去年はイケニエの娘が死んでも雨はふらなかった……」  賢い姉は大人達の偽善を知っている。少しでも前の年と違うなら口減らしのために女を殺す。そうしないと村に人があふれてしまう。  追っ手が消えて足音を忍ばせて逃げ出すと……若い男が姉に合図する。

殺人少女の告白【#変わる時】 #シロクマ文芸部

 変わる時は誰にでもおとずれる。 「私が祖母を殺しました」 xxx  祖母はやさしい人で怒った事もない。いつもニコニコして誰からも好かれいた。私が友達にいじめられるとやさしくしてくれる。 「おばあちゃん、みんながいじめるの」 「あら、泣いているの? 大丈夫よ」  祖母はブリキの缶から包まれたラムネを取り出すと食べさせてくれた。子供の頃は祖母になついていたが、彼女は老いると性格が変わる。 「私のお金を盗んだでしょ」 「盗んでませんよ、おかあさん」  母は介護ノイロ

【怪談】 公園の風船 【#虎吉の毎月note参加作品】

 春の風がまだ冷たいが、桜の季節…… 「もう四月なのに……」  暗い公園を通り抜けようとしたが、何か潜んでいるようで怖い。でも桜を見たい気分で、大丈夫だと自分に言いきかせる。 「夜桜だぁ!」  街灯の光は、桜のピンク色をより一層鮮やかに照らし出し、夜空に咲き誇る桜の姿は……何か怖い。  ふと気がつくと桜色の風船が浮かんでいた。ちょうど人の頭の高さに浮かんでいる。だらりとぶらさがるひもをつかむ者はいない。 (――なんで風船)  ちょっと意地悪な気分になる、風船を割