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愛のいちばん美味しいところ


今でも時々思い出す。

私が本当に本当に、本当に苦しい恋について相談したら、

「いいなあ〜羨ましいなあ〜」

と返された時のことを。
まるでビールの一口目を噛みしめるような表情で。

私が相談した相手は某人材系会社の役員(以降タカハシとする)で、それも夜の店で出会ったお客様だった。
店での関係が終わっても、私たちの“友人”としての付き合いは続いていた。

タカハシは頭のいい人だ。日本で1、2を争う国立大を出て、順調に出世して、
海外でも成果を上げて、その隙間で思う存分遊んで、人生を謳歌している人だ。
彼は一度も私に触れたことがないし、そういう関係に誘ったこともない。
すごく頭のいい人で、かつ、「超えてはいけないライン」を絶対に超えてこない人だ。

要するにすんごい信頼してるのだ。
だから思い切って相談したのだ。

当時の私はバツイチで、年齢もいろいろギリギリで、仕事も大したことないし(当時は本業もイマイチだった)、お金もどうなるかわかんなかったし(投資もしてなかった)、そんな中でよくわかんない、責任感のなさそうな、セフレみたいな扱いしかしてくれない男にどハマりしてしまっていて(今の夫です)、精神的にスーパー不安定だった。

死ぬべきか生きるべきか?みたいな感じになってたのだ、大げさでなく。
この恋をどうしたらいいと思う?と、私はタカハシに聞いたのだ。割と真剣に。
もう本当に苦しくて死んでしまいそうなんだと。死ぬか生きるかくらいの問題なんだと。

彼は同情するでもなく、共感するでもなく、顔を輝かせて、満面の笑みで私を羨んだ。

「いいなあ〜恋愛!楽しそうだなあ〜!!」と。

「話聞いてた?私本当に崖っぷちなんだけど。人生の」
「あはは〜ごめんごめん、そうだよね〜、でなんだっけ?彼が付き合ってくれないんだっけ?」
「まあひらたく言えばね」

何度でも言うが、彼は頭のいい人なので、
私に具体的なアドバイスと、抽象的なアドバイスを1つずつくれた。

具体的なアドバイスは、

「会うときは彼の家、って風にした方がいい。関係が長くなれば君のものをいろいろ置いておいたりするでしょ。そしたら他の女の子はだんだん呼びにくくなる。逆に君の家に呼んじゃうと、本当に都合のいい関係になっちゃう」

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