見出し画像

【思い出は夕焼けの空のように】―Resplandor de la puesta de sol―


青春の思い出は、夕焼けの空に似ている。
つかのまのShow Timeなのに
未来永劫のスポットライトを浴び続けているから。



あるいは青春の思い出は、心豊かな音楽に似ている。
甘くせつなく、時にはほろ苦く
澄んだ感性の響きを持っているから。



あるいは青春の思い出は、人生で最初の友に似ている。
特製のアルバムのようでもある。
ほどよい歳月が経つにつれ、驚くほどの値打ちを出してくるから。
 


思い出は、自分が主人公の懐かしい物語――。
思い出はまた、一度きりの人生の確かな記念碑。



その反面、打ち消すことも作り変えることも
不可能なのが『過去』の絶対条件。
もとより過去に、我が身をとどめて置くなど到底、出来ない。
厖大な『時』の大河に、吞み込まれてしまうだけ。



過去のあらゆる出来事は、秒刻(とき)と共に、永遠に遠ざかって行く…。
膨張を続ける大宇宙の領域で、すべての銀河が後退し合う
そんな法則にも似て。
 


思い出はけれども違う。
思い出はいつまでも人の純粋な心の中に
昨日の出来事のように、寄り添って生きている。
話しかけてくる言葉のように、思い出は新鮮な感動を失わない。



身近にある様々な物質が、『現在』という時空の中にあって
変わりゆく運命にあろうとも、思い出は過去から現在
現在から未来へと、常に朽ちることなく生き続けている。



そして人の最期を見届けた後も
思い出は未知の国への招待状を手渡して、次なる旅立ちの準備をする。
 


人はいったい、どのくらい沢山の出来事を
思い起こすことが出来るだろう?
おそらく誰も、その大部分を覚えてはいない。
唯一、『思い出』という手掛かりを除いては。



思い出は過去の世界の『灯台』となって、ひときわ輝かしい光を放つ。
過去をなつかしみたい時、思い出は即座に黄金の翼馬車を駆り出して
親切な道案内をしてくれる。



万物自然を愛する心で、あらゆる生命 (いのち) を
温かく愛 (いと) おしむならば、かけがえのない思い出の世界へ
誰しも降り立つ事が出来る。 ≪思い出のふるさと≫ に立ち帰る事が出来る。
 


この世のどこにも、たった一人しか存在しない自分自身。
自分にはどんな思い出があるだろう?
そして思い出は、自分に対して何を語りかけるのだろう?



これまでの人生を振り返ることで
楽しかった日々が再び甦ってくるのなら、それは幸いと思う。
みずからの心の内に、至福の麗しい花びらを
何度でも舞わせてみるといい。



あるいは大粒の涙の雨に、打たれるとも良い。
悲しみさえもいずれ、その人の為になる。
過去あっての現在だから、あるがままの現実を理解できてこそ
人は思い出に浸る事が出来る。
 


もしも心のどこかに、素敵な ≪宝石箱≫ を持っているなら
そしてそれが、いっそう大切な物であるなら
思い出はそのような場所にそっと、コレクションしておくのが一番。
形や大きさは、人それぞれ…。



時たま丁寧に出し入れをして、日々の生活の励みにしたり
ほのかな薫りを確かめてみたり…。
もちろん、人生がいつまでも”青春”だと思えば
すべての思い出が『青春』であっても良い。
 


いつの日か宝石箱の中身が満たされたとき
人はどんなに充実した人生を
積み上げて来たかを知ることとなるのです。
                             建礼門 葵



******************************
♬BGM1曲目『夜空のトランペット』/ニニ・ロッソ
♬BGM2曲目『心の思い出』/ペリー・コモ
♬BGM3曲目『エンドオブザワールド』/スキータ・ディヴィス
******************************




 



※【関 連 記  事】下線のある文字をクリックしてね!

🔷【思 い 出 の 樹】|建礼門 葵 (note.com)


🔷【赤毛のアン】の贈り物 ―Anne of Green Gables― |建礼門 葵 (note.com)


🔷コート・ダジュール【CÔTE D’AZUR】|建礼門 葵 (note.com)




この記事が参加している募集

私のコレクション

with 國學院大學

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?