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怪しい量子力学より、数式で理解する量子力学

私は、高校生の頃から、物理学に興味を持つようになりました。特に、相対性理論に魅力を感じていました。(大学に入ると相対論と呼ばれることが多かったですが、高校の頃は、相対性理論と呼ぶ方がかっこいい印象を持っていました。)相対論とならんで、現代物理学(あるいは20世紀に進歩した物理学)の基本となっているのが、量子力学です。

物理が好きだったので、大学では物理学を専攻しました。相対論は学びましたが、必修の単位ではありませんでした。それに対して、量子力学は必修で、講義や演習の数も多かったです。実際、物理学のどの分野の研究をするにしても、量子力学は必須だと思います。物理学を専攻しなくても、化学や半導体でも、物理学は必須なので、理系学生の多くが、学んでいます。

量子力学は、正直、それほど簡単ではありません。物理学の基礎や、数学的な準備が必要です。量子力学の基本方程式としては、シュレーディンガー方程式が有名です。

$$
iℏ\frac{∂ψ}{∂t} = \hat{H}ψ
$$

表現方法もいくつかあるので、書き方によっては多少簡単に感じるかもしれませんが、これを理解するためには、微分方程式、偏微分、複素解析、ベクトル解析、……といった数学的準備が必要です。

理解するのに時間がかかる量子力学ですが、量子コンピュータの開発も進み、理系以外の方にも、量子力学あるいは量子論が身近になってきました。

量子力学をネット検索すると、理系向けの解説以外に、いろんなウェブサイトが見つかります。ただ、本来の量子力学とは関係なさそうなものも散見されます。

量子力学が扱うミクロな領域では、物質は、粒子と波の両方の性質を持ちます。この部分だけが1人歩きして、世の中は波動からできていると強調されることが多いようです。波動以外に、周波数、次元、エネルギーなど、物理学用語も登場します。

「量子力学は目に見えないものを扱う」⇒「意識、精神、魂を扱う学問」といった論法も見られます。目に見えないのは、小さくて見えないだけです。決して、精神世界を扱えるわけではありません。論理が飛躍しています。神経伝達は、電磁気学が関係していて、さらに詳細に考えれば、将来、量子力学がそのメカニズムの解明に寄与する可能性はあり得ます。しかし、目に見えないから量子力学の領域というのは、あまりに強引です。

にもかかわらず、「物理学で証明されている」と自信満々に言い切っているものが多いです。むしろ、科学者の方が慎重で、いろいろな理論も実験などで検証されないと仮説にすぎません。「これが真実」と断言するのは、科学より、宗教に近いものを感じます。宗教を否定するつもりはありませんが、科学のように語られることには違和感があります。

学生時代に、(本当の)量子力学を学んだ人なら、最近の怪しい量子力学は、きっとおかしいと感じるはずです。

怪しい量子力学は、それらしい絵と文章で語られています。文章だけの本を読んで、哲学的に量子力学を理解するのは、相当難しいです。正しく理解するなら、準備に手間はかかりますが、数式の方がわかりやすいです。数式というと、計算したら、こうなりましたと思われるかもしれません。実際、そういう部分はありますが、理解を深めると、数式自体にイメージを感じ取れるようになります。数式を読むあるいは味わうという感じです。

高校時代に、エネルギーが離散的(とびとび)とか言われても、信じるしかなかったですが、大学でシュレーディンガー方程式を解いてみると、納得できました。不確定性原理で、時間とエネルギーが同時に確定しないというのも、神秘的なイメージをもっていましたが、数式で導くとイメージがわきました。

怪しい量子力学を信じている人に、数学を勉強してくださいと言っても、拒否されそうですが、必要最低限の数学で、数式をイメージできるような説明ができないものかと考えています。

今回はここまでにして、いい説明が出来そうなら、また書いてみます。

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