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<スペシャル対談>習慣化を語りつくす!「習慣化コンサルティング」×「WizWe」健康習慣成功の鍵とは?

今回の対談では、習慣化をテーマとしたコンサルティング会社である習慣化コンサルティング株式会社の代表取締役である古川武士氏をお迎えしました。

お互いが「習慣化」をテーマに事業を展開していることから、ヘルスケア領域における習慣化やコミュニケーションと習慣化の関係性など、「習慣化」についてたっぷりお話をうかがうことができました。

対談を通じて共通点を多く見つけ、それぞれの過去の取り組みは正しい方向性だったという確信を得る場面もあった「習慣化対談」をぜひご覧ください!

・習慣化コンサルティング株式会社 代表取締役 古川武士 氏
・株式会社WizWe 代表取締役CEO 森谷 幸平


ヘルスケア領域の習慣化

古川氏(以下、古川):私は、習慣化コンサルティングという会社を経営しております。人生や仕事、社会というのは習慣化で変わっていくと思っています。経営者のコーチングや企業研修を行ってきましたが、続かないので身に付かないですし、成果につながりません。分かっているけれどできない。そこがすごく大きなボトルネックです。

15年前くらい前の習慣化の領域というのは、どちらかというと根性論で、ハウツーがあまりなかった時代です。そこで、習慣化のメソッドを開発することができたら貢献できるのではないかと思い、習慣化という山を登り始めて12年というところです。

森谷:私が習慣化の領域に興味を持ったのは、2010年ぐらいからですね。当時はeラーニングを開発提供する会社の社員だったのですが、ユーザー様の学習が続かず困っていました。
 
スガタ・ミトラというインドの学者が、TEDでチャイルド・ドリブン・エデュケーションという発表をしています。子どもたちにインターネットにアクセスできるPCを与えて自己学習を促す教育法の実験です。子どもたちは自分たちで勉強し合って、どんどん学習を進めていくようになるのですが、ミトラはクラウド上に子どもたちの学習を見守り、励まし、時には質問し興味を引き出すという役割を担う、おばあちゃんという人的支援を作りました。

おばあちゃんという伴走者の存在によって子どもたちの興味関心が続くという効果を「おばあちゃん効果」と呼んでいるのですが、これを見た時に目からうろこで、これはすごいと思って伴走者の存在とビジネスをつなげるようになっていきました。そこから、初期的なモデルができるまで4年かかりましたが、2014年に原液のようなものができました。そこからですね。

古川:今、健康経営と言われるようになっていますが、健康は個人で自己管理していくものというところから、会社もそこに関わっていく時代になっていったときに、何かできることがあるのではないかと課題意識として持ち始めました。

ヘルスケアが重要だと思ったのは、昨年私が椎間板ヘルニアで全く動けなくなりまして、トイレにも行けず、食事も取れず、1週間ぐらいベッドから動けないという状態で、QOLがかなり下がったという経験からです。それがすごいインパクトでした。

今までずっと姿勢が悪く、何十年の慢性疲労が老朽化して突然やってきたのですが、そのときに、人生ではこういうふうに病気や健康崩壊に直面するのだなと思いました。ある日突然、がんかもしれないし、脳梗塞かもしれない。そういった病気に向き合うということは、人生のどこかのタイミングで必ずあります。

ただ、自分が防げるものと防げないものがあるとすると、予防したりケアしたりすることは、自分が愛する人たちのためには、すごく必要なのではないかなと痛感しました。子どもがまだ小さいということもあり、周りの人たちのためにも健康でいないといけないと思いました。うちのチームメンバーも含めて。そう考えていくと、習慣と健康でできることがあるということで、ヘルスケア領域の習慣化をスタートしていきました。

森谷:弊社の場合は、お客様からヘルスケアでのご要望をいただいたからです。ただ、Smart Habitを作るときから、健康領域の習慣化はあるという前提で、そこに転用できるように初期的なシステムのコンセプトを作っていました。生活習慣病は以前から問題になっていましたし、未病予防が続かないというのは同じ力学なのだろうと思っていましたので、WizWe創業時の会社の定款にもヘルスケアを入れていましたね。

古川:なるほど。私も初めから健康を主軸にとは考えていなかったですね。習慣化を自己実現系の習慣と自己管理系の習慣に分けてみたときに、どちらかというと自己実現のほうに興味があったので、そちらにフォーカスしました。
 
ただ、人生後半戦になって、もっと長く活躍していきたいと考えたときに、健康を当たり前のものという前提にはできないですよね。長期的な自己実現のためには体が資本となってきますので、健康と切り離せないと切実に感じました。そのようなタイミングで、周りに医療に精通したメンバーが集まってきたという縁もあり、私たちはヘルスケアに取り組むべきだと感じました。

生活習慣病は、生活習慣を変えなければそのテーマは終わりません。血圧が上がったから薬で下げる。それで血圧が下がったとしても、肝臓への影響などいろいろなことに関係してきます。それは分かっているけれど、聞きたくない、やりたくないというのが人間だと思うので、どうしたらやりたくなるのかということですよね。その探求は大きなテーマだと思っています。技術だけでも駄目ですし、危機感などの追い込みだけでも駄目ですよね。でも、誰もが避けて通れない、延々と続くテーマなので、追及しがいがあると思っています。

森谷:具体的には、どういった取り組みをされていますか?

古川:健康を考えるのにいいタイミングは健康診断だと思います。年に1回健康に向き合う習慣がある。それはすごくいい仕組みですよね。ただ、年に1回だけしか向き合わないので、悪い結果を見たくないから、健康診断の1カ月前から少し食事を減らそうかと考えたり、結果が出て医師にアドバイスをしてもらっても、その後は忘れてしまったりという課題があります。年始に抱負を立てて、年末に後悔するというのが習慣化の大きな課題だと思うのですが、健康も少し似ているかなと思いますね。

ですから、年に1回ではなくて、3カ月に1回健康と向き合うことができたら、もう少し短期スパンで考えていけます。もし3カ月に1回健康診断をすることができれば、その時点で変わるのではないかと思ったことがきっかけですね。
 
生活習慣病は生活習慣を変えないとよくなりません。それをどうするかということで、医師と習慣化専門家というところで私が、医学的なところと習慣化のアプローチから、健康診断の結果を踏まえた上でどんな習慣を扱っていくと全体が良くなっていくのかを実践、改善していくプロジェクトを行っています。3カ月タームで考えます。

それから、食事と運動と睡眠とストレス、還元されていくのはそこになっていくと思います。欲張らずにそのどれを扱っていくのか、その中でも、さらにどこをやっていくのか、そんな主題の深堀をしています。

森谷:お客様はどのような形で行動に移されるのですか?

古川:記録をして分析をして、それを共有してフィードバックを受けるという、この四つのサイクルをぐるぐる回していくことが鍵だと思っています。記録して自分で気付く、自分の生活実態と向き合うということを日々行うことが重要なので、健康ジャーナルというものを毎日意識的に付けて投稿してもらっています。
 
健康ジャーナルでは、まずKPIを1つ決めます。例えば、睡眠量、歩数、起きた時間、体重、血圧などがあります。これは、自分がどの指標を気にしていくのかということです。

そして、ジャーナリングがポイントとなりますので、健康負債と健康貯金について書きます。健康負債というのは、今日は5時間しか眠れなかった、食べ過ぎたなど、少し後悔している行動です。健康貯金は、スクワットを5回行った、昼は野菜を食べたというような、小さな貯金行動です。

そうやって1日に5分でも日々書いていくと、少し向き合えますよね。そうすると微妙にでも気を付けることができます。健康というのはすごく重要ですが緊急ではないので、優先順位が低くなってしまいます。どうしても後回しにしてしまうので、優先順位を高くするための施策を行っています。

まずは、ジャーナリングの習慣を付けることです。実は、「体重は増えてもいいですよ」と言ってあります。最初の1カ月は体重が増えてもいいし、血圧が上がってもいいし、どうなってもいいので、絶対にこの健康ジャーナリングだけやってくださいと。記録をつけることができたら、まず1カ月はOKですよということです。

では2カ月目はというと、例えば、今まで肝臓が悪いからしじみ汁を飲んでみたけれど、しじみ汁ではどうも肝臓は良くならないなと分かってきたら、医師の観点からこうすると変わってきますよというフィードバックと、習慣化の観点からのフィードバックをします。それは、ジャーナルがあると見えてくることなので、それを基盤にしています。

自分自身の健康管理が難しいということで、医師の方も受講しています。見ていると、ストレスがマグマとなって、お酒やたばこ、食事に行っているケースがとても多い感じがしますね。ただ、それをストレスと言われても、皆さんエネルギッシュに働いているので、あまり自覚意識がありません。ですから、ジャーナルからフィードバックしていくことがポイントだと思っています。

森谷:ジャーナリングを続けていける方は多いですか?

古川:面倒くさくしないというのがポイントで、少なく書けばハードルが低いかというとそうでもありません。すっきり感というか、今日も少し向き合ったなという感じです。ですから、健康領域以外の習慣化では、私は放電・充電日記を書くということを勧めています。1日の中でエネルギーを下げたことはいくつもありますよね。イライラしたことや食べてしまったことなどを瞬間に書ければいい。逆に上げたことも同様で、認知的に両方取るということです。

あとは、客観と主観を両方取れることも重要で、客観的な事象ばかり書こうとすると、気持ちの浄化作用もないので日記が続きません。でも、続いている人たちというのは、気持ちを上手に吐いています。2日連続食べてしまって駄目だな、でもその代わり1駅歩いて少し挽回などと書いておけば、どんどん発見できます。

コミュニケーションと習慣化

森谷:先ほど古川先生がおっしゃったように、習慣化はマラソンではないというところがあり、90日は非常に肝になっています。どうしてかと考えたのですが、人間の生活サイクルがそうなっていますよね。学校が基本3学期制で、社会人になるとクオーター制になって、人間は4カ月あるいは3カ月のサイクルでその空間にいます。

古川:確かにそうですね。そのように育ってきましたから。

森谷:生活者の個の視点として立ったとき、世の中のワンサイクルが90日になっていますね。その中に当てこめるので、習慣化のサイクルも90日になるのが適切なのですが、なぜかマラソンと思われるところがあります。まず、90日ごとにリフレッシュがあって、90日ごとに測定があったほうがいいのは間違いないです。

あと、人が「行動を始めるきかっけ」と「続けるきっかけ」を分析したのですが、人類史と近いところがあって、一つ目が会話です。対極ラインには孤独があります。孤独なところにはモチベーションの起点もなければ、継続するようなこともできません。対極概念にはない、コミュニケーション、会話を通じて自己分析、フィードバック、測定結果と会話、これが行動の肝になります。

もう一つのきっかけが文字だと考えています。文字として出す、あるいは行動記録として出すということがとても重要だと考えています。外に出した記録を見ながら、それをベースに会話をするということが、人間の行動メカニズム重要な気がしています。先ほどの古川先生のお話は、全部それが入っていると思っています。

私たちは、それを習慣化サポーターが伴走しながら行っています。少しライト目にですが、そんな印象を受けましたね。

古川:とても共鳴しますね。90日説はすごく納得しました。確かにそうですよね。本質だと思いました。あとは、やはりコミュニケーションを抜きには無理だろうなと思いますね。
 
弊社もみんなアウトプットするのですが、チームごとに、チームのリーダーやサポーターがお互いでコメントしてくれます。そのコメントがあるから続いたり客観視したりとなっていくので、それがすごく大きいと思います。

あとは、言語化、メタ認知というのは、客観視をしたら解決策は自分で見つけられると思います。自分の中でぐるぐるしていて、思考や感情もごちゃごちゃしていて整理できないというのは、客観視すれば自分で答えをいろいろ探っていけるということです。
 
生活も同じで、日々流れていっていると、無意識的にずっと通過していくだけだと思うのですが、客観視すれば、ここを少し変えてみようということに気付けると思います。それはすごく大きいですね。

森谷:そうですね。あと、中核だなと思うのが、周囲の巻き込みですね。やはり人間は1人で存在するのは難しくて、助けてもらうことで習慣化が実現していきます。講師の方や共に行く仲間、親しい方々などをうまく頼るとすごく習慣化しやすいというのは実感していますね。

周囲の巻き込みが整っている組織や研修体系の場合、ものすごく成果があります。巻き込みが整っていないという場合は、私たちが頑張っても成果が出にくいですね。

古川:習慣化と考えていくと、確かに環境はとても重要ですよね。人間は無意識に環境に適応していこうとするので、高齢者が健康になっていくプロセスを考えたときに、自分一人で家にこもって健康管理をしようと思っても、なかなか続かなかったり、食べ過ぎてしまったりということがあると思います。

ところが、高齢者が集まるコミュニティーのような所に行って、自分より年上の方が生き生きとしている姿を見ると、今まで「年取ったな、もうだいぶ衰えてきたな」と思うばかりだったけれど、「私もこんなふうになれるのかも」と、その方を通じて希望や理想を見出せます。そうすると、いったい何をしてこんなに生き生きしているのだろうと考えるようになり、今までなら全然やろうと思えなかったけれど習慣を変えていこうと気持ちが変化していく。まさに環境ですよね。

森谷:すごく元気でキラキラしている方々がいらっしゃいますよね。それは、コミュニティーが関係していると思っています。コミュニティーによって会話が豊富になっている気がします。会話の総量と自己承認の総量が比例していると思っていて、だから日々行動できる。元気なことを褒められるとうれしいですよね。

古川:確かに、会話は鍵でしょうね。環境と会話。企業の中でも、研修後に定着させることはなかなか難しいですから、上司と部下のコミュニケーションサイクルの中にビルトインされた話は、非常に続けやすいと思いますね。

森谷:最近、ウェルビーイングやキャリアオーナーシップという観点が話題になると、それが個人だけには紐づかないケースが多いですね。個人責任論というのではなく、人の周辺のユニットが重要になります。上司を巻き込まないと解決できないという状況も結構あります。自律自走というのは人とのつながりがないと実現できません。もちろん、例外的に自主的にずっと取り組む人もいますが、それは本当にごく一部であり、稀有なケースだと思います。

古川:そうですね。自発的に行動するタイプは約5%程度存在するかもしれませんが、その一部に照準を合わせると、仕組みがうまく機能しないと思います。

森谷:上司や導き手とのつながりがすごく重要だと思いますね。

古川:そもそも上司が関わるということがすごく大きなキーワードですね。上司が部下の課題に対して興味を持つこともそうですし、部下も期待されることで自分の課題が分かって、それを解決していく。その意味付けや課題に対する認識というのは、普段の文化の中でやってないと難しい。突然、研修を受けさせられて、強引に強化ギプスでやっていこうと思っても、それではみんな挫折するということですよね。

森谷:統制的習慣化は習慣ではないと思っています。強権による命令、やらされるという対極に習慣化がありそうな気がしています。

古川:そうですね。私たちが組織の中のコミュニケーションと仕事しているという、とても自然な環境の中に行った内容をひも付けるなど、自然な形で存在しないと、研修を受け終わった瞬間はモチベーションが高くても、次の日になると忙殺されて忘れていきますよね。

習慣化の時間軸

森谷:古川先生が見ていらっしゃる行動変容プロセスがあると思うのですが、どれぐらいの時間軸が必要になってくるものですか?

古川:そうですね。15年ぐらい前にメソッド化しようとしたとき、二つ課題がありました。1つ目は、3週間説もあれば、60日説もある中、どれを信じればいいのかという問題です。2つ目は、それでもやはり、例えば、喫煙をやめるというプロセスと、日記を書く、片付けをするなどの定着期間というのは一緒かなということです。

また、ポジティブ思考でものを考えるときに、ポジティブなほうに目を向けるというものの考え方をすることと、出したものをすぐ片付ける、朝コップ1杯の水を飲むというようなことが一緒の次元で語れるかというと、それは無理だろうと。
 
ですから、ジャンルを分けたほうがいいと思いました。最初は、行動習慣と思考習慣に分けました。行動的な習慣、朝コップ1杯の水を飲むというような行動は、30日説が正しいと思っています。30日も意識すれば、大体、エネルギーをあまり使わなくてもできるようになります。ところが、体のコミュニケーション、体の反応やメカニズムが変わってくるもの、喫煙や食事、早寝、早起きなどは3カ月ぐらいの期間がかかります。

思考習慣は半年すると変われますね。最初は意識していろいろ頑張るのですが、半年ぐらいすると、言われてみれば、今までみたいに悩まなくなってきたなというように、変わっている瞬間の自分に気付く。それが習慣化だと思います。

森谷:私の体感値とも合致しています。最初にモニターするのは3週間ですね。これはイニシャルの壁で、先ほどおっしゃっていた、簡単な行為が故に組み込まれるからです。その次の壁が60日から90日の間にあって、生活スタイルの中にちゃんと組み込まれて、続けられるような状態になったかというところです。

最後は6カ月の壁で、これは自己効力感だと思っています。6カ月ぐらいのタイミングで、何かしら成果が目に見えるので、フィードバックで他者から承認を受け始めます。そこまで行くと、続けている自分が素敵という感じになってくると思っています。6カ月間ってなかなか大変ですよね。

古川:そうですね。最初から6カ月というと大変なので、徐々に上げていきます。確かに、最初の3週間の行動というのは、原型としてはシンプルなものです。

それを現実としてやっていくと、まずはジムに行って、タッチして帰ってくるというようなことでも、取りあえず行っていれば、そのうち、あの人みたいになりたいと思うようになったり、トレーナーと関わったりと、いろいろな仕組みの中に巻き込まれて変わってくるというのは確かにあると思います。6カ月なら、よりいろいろなものに巻き込まれていく感じはしますね。

行動をロボットのように覚えていくというよりは、人間は環境の生き物なので、周りの人とのつながりなども含めて変わっていきそうです。

森谷:ワンサイクルをどれぐらいの単位で見ていますか?弊社はワンサイクル1週間が多いです。習慣の一つのランドマークポイントが、1周目の状態を見て、2周目を見てというように、月・火・水・木・金・土・日の週末までの1週間で1周だと考えているのですが。

古川:これも本当に同じですね。人間の区切りというのは、先ほどの90日もそうですが、1カ月、1週間など、もともと認知している枠組みに当てはめるのが鍵だと思っています。特に、最初の7日間をどう乗り切れるかですよね。

森谷:一緒ですね。1週間で分かりますよね。

古川:1週間と聞いたときは、それぐらいできるよと思いますが、1週間やり続けるというのは意外と大変だということに気付きますよね。そこでうまくいかないと、巻き戻しがすごく難しいです。

森谷:弊社も巻き戻しは成功経験がありません。離脱した人が途中で復活する可能性は0.5パーセントです。こうした場合は、滞った方をひたすらサポートするというリカバリプランはいったん置いておいて、滞った皆様は一旦全てストップして、つまり、ゼロリセットですね。スタートしたのだけれど、一旦、無かったことにして、また完全リセットして、もう一回、気持ちを全部入れ替えて、ゼロからやろうと。また、スタート地点に戻る。すると不思議とうまくワークする人も多く出ることが分かりました。

古川:それはいいですね。挫折している自分と向き合いたくないですから。リセットでいいですよね。もう一回スタートライン。そのリセットを、どれくらい考え方の中でもできるのかですね。三日坊主も10回やれば30日と言いますが、そういう人はだいたい続かない人が多いです。それでも、そういう再スタート。

最初の反発期の1週間をどう乗り越えるかが、一つのテーマだと思いますが、その次の段階では、できない日が出てきたときにすごく挫折した感が大きくなります。そこをもう一回向き合うというのが嫌で、挫折したままフェードアウトしていくっていう人がすごく多い気がしますね。

森谷:習慣化している方との会話で一番多いのは「ありがとう」という感謝の言葉です。習慣が難しい方々は「私は駄目です、すみません」が多いということがあります。これは、失敗してはいけない、挫折してはいけないという観念なのですが、とても戦後史的だと思っています。

人生100年と長くなったので、もっと失敗して、挫折して、リセットしてもいいのではないか、そんなに自分は駄目だと思わなくていいですよと。もう一回始めたらうまくいくかもしれないというのはあってもいいと思いますね。統計データを見ていても、リセットしたらうまくいくケースが結構ありますので。

古川:本当にそうですよね。続かない人は、自分を駄目出しトークで追い込みます。ですから、健康ジャーナルの1カ月目を付けるとき、それ以外やらなくていいと言っています。ですが、体重が増えてもいいので、とにかくその記録だけ付けるという1つの習慣だけでOKですと言っていても、「書いているだけで、何も改善してないです」となってしまいます。

できていないものを膨らませて、膨らませた揚げ句、そこに圧倒されてやめてしまう。やめてしまうくらいなら、できているところを見ていって、上げていく。例えば、夜食べ過ぎたから、その分歩いて帰ったということで、少し巻き戻したというような挽回の方法をいくつも入れておけば、1つ駄目だったから今日は全部駄目とならなくていいと思います。

健康ジャーナルは、実はそれを発見するために付けています。食べ過ぎて健康貯金に書くことがないけれど、取りあえずスクワット5回やって書くというようなレベルで自己肯定する。まさにコミュニケーションで、自分の中のコミュニケーションがネガティブ過ぎると、駄目出しがすごくて、少しでもできないと全然駄目となってしまいます。そのコミュニケーションを変えないと、すごくしんどいですよね。

森谷:典型的なパターンですね。皆さん、罪悪感があるので、そう思わなくていいということですよね。

古川:そうですね。ですから、ベビーステップという低いハードルにして、せめてこれだけできたらOKというような承認が救われる場合もありますし、例外ルールを作っておくなどで、自己肯定感を下げないということがすごく重要ですね。

森谷:皆さん、失敗したくないのでそこのマインドブロックをどう外すかですね。

古川:そうですね。健康ジャーナルでは、行動プラス感情を書くというようにしています。一日の中で健康負債もありますし、健康貯金あります。ずっと貯金で負債がないという人はいないので、それをいくつもパラメーターとして書きます。

他の人のものを見ると、すごくできているような感じがして、自分はできてないと思ってしまうのですが、みんなできてないということが如実に分かると、少し罪悪感が減ったり、自分にこういう日があっても仕方ないと思えたり、他の人を見ることで初めて救われるところがあります。ですから、共有する意味があると思っています。

森谷:そうですね。外に出すということは、すごく効果があると思います。あと、フィードバックは結構パワーがありますね。人は行ったことに対して、他の人に見てもらって、何か言ってほしい生き物なのかなと思います。自分自身もうれしいので。

古川:本当にそう思います。特に習慣化では、その能力を上手に活用しないとなかなか続かないですよね。

性格タイプ別に習慣化

古川:健康習慣の中で、性格タイプに分けること重視しています。例えば、夏休みの宿題は、最初に終わらせて、あとは遊ぶという選択をする人もいれば、ぎりぎりまで遊んで、最後の3日間で仕上げるというタイプもいます。私は完全にぎりぎり派で、最後の最後に一気に取り組むタイプなのですが、習慣化という意味では、こつこつやれる人のほうが確実で偏差値が高いです。

性格タイプを、うさぎとかめ、アリとキリギリスに分けた場合、うさぎタイプは短期集中で一気に取り組む力が素晴らしいです。かめタイプは長期戦において非常に優れた能力を持ち、アリタイプは与えられた枠組みを達成することが得意です。一方、キリギリスタイプは自ら目標を立て、ワクワクすることに対して頑張ることができます。

これを『うさアリ』、『うさギリス』、『かめアリ』、『かめギリス』といった4つのタイプに分けて、習慣化の考え方に当てはめてみると、例えば、ダイエットと言われると、キリギリスのタイプはとにかく我慢と思いこんでしまうので、あまりテンションが上がりません。このタイプには、ボディーメークなどの言葉に換えてダイエットを頑張っている人がいます。でも、ダイエットという言葉でも大丈夫な人もいます。
 
タイプによる行動の起動というのは、変えたほうがより視点は増えると思っています。ですから、ジョギングが続いていますという人に、なんで続いているのかを聞いてみると、「特に理想はないです。」と言われます。「何か楽しいことがあるのでは?」と聞いてみるのですが特になくて、続いている理由は、奥さんに「またやめたの?」と愚痴を言われたくないからだったりします。
 
そんなことがモチベーションになるのかと思っていましたが、よく聞いてみると、仕事を先回りしてやっておくことは、後で上司に何か言われたくないという気持ちから来ているようでした。

焦りたくない、困りたくない、失敗したくないといった回避系の動機を人を駆り立てたほうが続きやすい人は、他の人と約束をしておき、その人に迷惑をかけたくないといった動機を上手に組み合わせることで、続けることが容易になります。しかし、キリギリスタイプの人々に同じアプローチをすると、気力が失われてしまいうまくいきません。

ですから、性格4タイプ別を参考にして、自分のタイプを知ることが重要です。『うさギリス』は、とにかく一気にやって一気にやめるという特性があって、熱しやすく冷めやすから駄目となってしまうのですが、その代わり、集中力やテンションが上がったときの爆発力がすごくあります。

それを上手に生かしながら、どうやって何度も上手に起動させていくかということです。そこは、自己肯定感にも当てはまります。このタイプでいいのかというところから、それをベースに生かしていける。スタートラインが違うということです。
 
私にとって習慣化というのは、何百日続いているという数字ではなくて、その人にとって充足感がある日々や人生が送れるか、その主題の下に習慣ということがあるということが重要です。

ですから、『うさギリス』は、挫折してしまう、熱しやすく冷めやすいというテーマを扱ったり、『かめアリ』で抱え込み過ぎてしんどいということあれば、手放していくという習慣が必要だったり、よりよく生きていくためには、何が必要なのかを追及しているのがタイプ分けです。

健康習慣に関しては、タイプを知っていくとやり方が変わります。獲得系のモチベーションの人は、パワーアップするなど、何か得たという感じが欲しいので、何かを減らすというよりは、運動でも何でもいいので、まず達成感がすごく欲しい。そういったことですね。

森谷:自分のタイプを分かっていたほうが、できない自分を無駄に責めたりする必要がなくなるので、いいですね。

古川:それが一番大きいです。『うさギリス』か、それなら仕方がないということが分かれば楽になれます。自分だけじゃないと分かるので。でも、親と姉が『かめアリ』タイプで、自分は『うさギリス』ですとなると、「どうしてあなたはこつこつできないの?」と、小さい頃から言われ続けて、こつこつできない劣等感がすごく強くなってしまうこともあります。

逆もそうで、親と姉が『うさギリス』で自分だけ『かめアリ』の場合、ノリと勢いで一気に行くタイプに付いていけない自分という風になっていきますね。同じ育て方してきたのに、片付けをする子はするし、しない子はしない。親子の謎解きのような感じになってきて面白いです。

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今後の習慣化

森谷:今後の習慣化の話にもつながるのですが、戦後の社会というのは、あるべき論や正しさのようなものが強くて、そのとおりにやっていれば比較的幸せでしたが、少し変わってきたのではないかと思っています。大学時代に注目していた一つのコンセプトが、『美』です。自分の内面から出てきたことを、美しいと思う、少しできているとうれしさを感じるというような方向に世の中が変わってきている気がしています。

昔の美の水準から考えたときに、今グローバルで活躍している渡辺直美さんが1つ概念を変えたと思っています。近代的な美やスタイル、体型といった、一昔前はは強固であった固定観念を、ご自身のパフォーマンスと発信で変えていっている。彼女は、自分の美を堂々とパフォーマンスとファッションで披露します。それが「美しい」、「素敵」と皆に広がっていく。

芸能人に限った話でなく、人の「人生の物語」や、自分の内面というか、心から表出されてくる、メッセージや言霊って、すごくいいなと思っています。人生にはいろんなドラマがあるのですが、一筋縄ではいかないドラマに心が動き、その中に、その人が紡いできた、美があるように思います。「在りたい姿」という「自分で紡いでいく美」に近づいていく、そんな支援ができるような習慣実装をしていきたいという思いがありますね。

古川:習慣ということで、最初はセルフマネジメントなどのきっかけでやり始めると思うのですが、最終的にそこもコントロールできるようになると、私たちは何がしたいのだろう、どう生きたいのだろうという、自己実現的な思考に意識が行くようになって、次元がぐっと上がっていくと思います。
 
今、主題として研究しているテーマがボイスです。心の内側の深い部分で、本当の自分はどう生きたいと言っているのかというところですね。やりたいことを見つける、自分探しというテーマはあるのですが、なかなか主題に行かないことが多いです。何の職業に就いたらいいのだろうというようなことを追及している限り、これは合わないとジョブホッパーになってしまいます。

自分の心の内側の情熱を感じて、それを生き方に転換する。それでも、転換していった先では、一朝一夕では実現しないことだらけですよね。それを見据えていったときに、目標に向かって何をしていけばいいのかというところで、継続が生まれてきます。その目標を実現するためにはロングスパンで行わないと、習慣の守りは続かないとなってくると、健康にも気を使わなくてはいけないなど、目標に照準を合わせて、全部統合されていくと思います。
 
やりたいことがいろいろある人や、愛する人たちがいるなど、そういった人たちは、健康に長生きしたいと思っているはずです。ですから、次元を深くからやっていくと、森谷さんがおっしゃったように、あるべき論や枠組みではなくて、ニーチェが言うところの、『汝自身の価値と共に生きよ』のような、自分の価値や自分がどう生きたいのかというところから掘り起こして人生を転換していく、それがすごく重要だと思っています。
 
習慣というのは、2次的にどう生きたいかを実現させていく、人生を転換していくために絶対必須な分野ですが、まずは、自分の価値や自分がどう生きたいのかを掘り起こすことが重要ですよね。

森谷:最近、生成型AIがたくさん出てきたので、特にそう思います。人間が心の中から出してきた声というのはパワーがありますよね。そういった人の物語や感情などの時間の変遷に惹かれます。正解自体はあまり面白くないという世の中に変わってくるのかなと思います。

古川:そうですね。選択の自由がある分だけ、自分はどう生きたいかで価値判断基準を決めないといけませんね。

これからの生き方というのは、大企業に入って、「〇〇社に勤めていらっしゃるのですね」「そうなんです」ということでは成り立たないですよね。別に誰も聞いてこない、それがいいとも思わない時代になっていって、副業もできるし、自由に転職できるとなると、自分の生き方はどうしたらいいのかということを問わないと、耐え切れないのではないでしょうか。人生100年時代になっていったら。

森谷:自分の人生がある世の中ですし、選択権が個人によりなっていっていますよね。最近、ウェルビーイングとよく言われていますが、そういうことなのかなと思いますね。心の声を聞くというのは大事になりますね。

古川:日本人的な思考で言えば、森谷さんがおっしゃったように、これが正解、こうあるべきというものを探してしまい、枠組みの中に収まろうと頑張りますよね。でも、当たり前ですが、幸せというのはそれぞれ違って、自分で感情として感じるものです。感じている人にとっては、幸せというのはなんの問題もなく存在するものなのですが、頭で考え始めたら、その瞬間に難問になってしまうテーマです。
 
やはり、自分の内側にある本質が、どう生きたいと言っているのかを、常に受け取っていく。それは、ずっと螺旋的に進化していくものなのですが、中道にある力動的なパワーは変わらないと思います。

森谷さんも私たちも、あと10年したらまたいろいろなことをやっていると思うのですが、習慣という名のボイスのようなものは中心にあり続けて、それが次元上昇して変わっていくだけの話なのではないかと思います。
 
ただ、多くの人は、そこの中心にいないところから入るということが最初の段階でテーマでしょうし、人の評価や比較の中に生きている限りは、なかなかボイスという物語に生きることがすごく難しいですよね。

森谷:習慣の話から、だんだん哲学に。面白いですよね。

古川:森谷さんの話を聞いていて、共通する部分が多くて、間違えていなかったと思いました。

森谷:本当にそうですね。ありがとうございました。