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【経済評論家 岸 博幸 氏と語る vol.3】日本の一番の成長産業は農業である

vol.2で、「農業が一番の成長産業」と語った、Wizの顧問【岸 博幸氏】。今回はその真意を探るべく、「これからの日本の農業」について語り合いました。

▼【vol.1】中小企業の淘汰の時代と生き残るためのポイント

▼【vol.2】地方の中小企業が生き残るには!?

参加者
・株式会社 Wiz 代表取締役社長 山崎 俊
早稲田大学理工学部卒業後、大手通信商社に部長職で入社。最年少で執行役員に就任する。2012年、同社を退社し、「ヒトにフォーカスした仲間を集める企業を作りたい」そんな思いから30歳で独立し株式会社Wizを設立。

・元経済産業省官僚/慶應大学大学院教授 岸 博幸 氏
一橋大学卒業後、通商産業省(現・経済産業省)入省。コロンビア大学経営大学院にてMBAを取得。小泉政権で竹中平蔵大臣の補佐官・政務秘書官を、また菅政権では内閣官房参与を務め、構造改革を立案、実行。現在は、テレビ番組のコメンテーターや講演会などで幅広く活躍している。

・株式会社 補助金ポータル 代表取締役社長 福井 彰次 氏
月間利用者100万人。国内最大級の補助金・助成金のプラットフォーム「補助金ポータル」を運営。分かりづらい補助金・助成金の概要や、申請方法など国と企業を繋ぐというミッションのもと事業を展開しており、会員数も30,000名を超えている。

・株式会社ウィルゲート 専務取締役 共同創業者 吉岡 諒 氏
1986年岡山生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代表取締役の小島と共に2006年に株式会社ウィルゲートを設立。個人として累計で3,000社のWebマーケティングの課題解決提案を実施。また事業開発も中心となり、2018年にSEOのAIツール「TACT SEO」、2019年にはオンラインで編集チームが作れる「EditorU」、M&A仲介支援サービス「ウィルゲート M&A」をリリース。さらに、2021年はSNSを活用した営業支援「ソーシャルセリング支援コンサルティング」、2022年にはマーケ・セールス領域の業務/人材支援事業「プロトル」をリリース。現在は、COO兼M&A事業の管掌役員を務める。

日本の農業はイタリアから学ぶべき

Wizが麻布十番にて運営する「Wiz Kitchen」にて

山崎:地方でやったら面白いと思うビジネスとして、農業を挙げられていましたが、詳しく教えてください。

岸:私は今、農業が日本の一番の成長産業だと考えています。農業は真面目にやれば儲かりますし、地方の産業活性化や雇用の観点からも、農業は絶対ありですね。
半導体の工場誘致などに力を入れている自治体もありますが、日本は農業改革にもっと力を入れるべきです。

山崎:農業は儲かるんですか?

岸:そうですね、ビジネスとしてちゃんとやれば儲かります。

山崎:赤字になっているところはないのでしょうか?

岸:赤字はないけれど、収入は低いです。農業の協同組合はビジネスとして農業をやるという意識が低く、また自治体も農業を利益が上がる方法に変えていこうとしていないのが現状です。地域の関係者の、農業に対するビジネスの意識が低いから、利益が上がりにくい米とか、露地野菜ばかり作ることになるので、収入が増えるはずがないですね。

山崎:農業は赤字にはならないけれども、収入が低いのはそういう理由なんですね。

岸:収入が低いから、農業は担い手がどんどん減少し、今の農業従事者の平均年齢は65歳を軽く超えてます。耕作放棄地も増えていて、非常にもったいないですよね。
福島県の楢葉町では原発事故をきっかけに、儲かる農業をやりましょうということで、消費量が多いさつまいもの生産に転換し、6次産業化にも力をいれ、儲かる形に改革しているという例もあります。

山崎:6次産業化とは農業者が生産だけでなく、加工や・販売まで行うことですね。

岸:そうです。また、日本で農業をどう変えるかという議論になると、農場施設の大規模化・集約化を行い、いかに生産コストを下げるかというオランダ式農業に行きついてしまうんです。
私は、オランダ式は日本には合わない、日本が合うのはイタリア式だと考えています。
イタリアは実は80年代頃から、いわゆるオーガニックに注目し、ブランド化させることで、6次産業化を推進したんです。日本の農業を考える時、イタリアが一番勉強になりますよ。すごく賢いです。また、旅行者が農場や農村で、休暇・余暇を過ごす観光形態であるアグリツーリズムなど、農業周りのサービス産業もイタリアは非常に強いですね。

山崎:私たちは日常的に、スーパーで野菜を買っていますが、本当はキャベツは〇〇産、大根は〇〇産と、消費者側がもっと広く選べる仕組みにするべきですよね。そうすることで、日本の農業業界が切磋琢磨する環境になり、地域の活性化にも繋がると感じます。

ホワイトカラーの二極化から1次産業に人材が流れるのか

福井:今、少子高齢化で農業の担い手が不足する中、農水省は新規就農支援などに力入れてますよね。

岸:そうですね。ただ、若い人がダイレクトに農地を買って農業を始めるというのはハードルが高いので、本当は企業が参入し、若い人とともに農業を行うことができたらいいですよね。

吉岡:生成AIの普及などでホワイトワーカーの仕事が減り、農業などの1次産業の方に人が流れてくることはないのでしょうか?

岸:それは重要な課題だと感じています。既にアメリカで起きてる動きとして、AIがどんどん普及する中で、いわゆるホワイトカラーの二極化が進んでるんですよ。AIを使いこなせる優秀な人間とAIに代替された人間とに分かれてしまい、後者の方は、他にいかざるを得ないわけです。

おそらく、これから日本でもホワイトカラーの二極化が起きます。大企業では既に社内失業者が多くいて、今、黒字企業でも早期退職を募っているのは二極化の予兆です。これまでは、仕事がない社内失業状態でも雇ってくれたけども、インフレになって、国際競争になると、そんな余裕はなくなってくると思います。

吉岡:都内よりも、地方に住んだ方がランニングコストが低く済むので、そういった意味でも地方の1次産業に人が流れそうですよね。

岸:今後、地方や1次産業に人材が流れるようになっていかなければなりませんが、現状はまだその流れはできていませんね。一番の問題は大学だと考えていて、基本的に大学の卒業生はホワイトカラーになることが前提なんです。
本来はサービス業、農業、その他どんな仕事に就く場合でも、ある程度、技能が必要なはずですが、その教育を全然してないから、1次産業になかなか人が流れにくいんです。
日本でホワイトカラーの二極化が起こった時に、仕事がなくなるホワイトカラーの人材をどう活用するかは、日本において深刻な問題になります。

吉岡:農業などの1次産業で、高収入を得ているロールモデルのような情報が世の中にもっと出ればよいですよね。

岸:農業やその他の1次産業に関わる方たちの、ハッピーな声をもっと聞く必要がありますね。

農業と地方活性化におけるM&Aの可能性

山崎:農業はビジネスとして行えば収益を上げられるということですが、農業業界でM&Aは加速していくのでしょうか?

岸:なかなか難しいと思います。農業の世界はまだ規制が多いため、株式会社は参入しづらいです。兵庫県の養父市のように、株式会社による農地取得が認められている例はありますが。

山崎:農業法人でないと農地は持てないということですね。

岸:そうです。農業法人を作るかまたは、農家さんから農地をを借りるかになりますね。

山崎:農業法人を買収することはできるんですか?

岸:買収はできますが、農業法人は役員の過半数が農業に常時従事する必要があるなど様々な制約があります。経営者が残った状態であれば、買収しやすいとは思いますが、その経営者が何も変える気がなければその後の経営は難しいですね。

山崎:農業だけではなく、地方の中小企業をM&Aで買収して再建することに、ビジネスの可能性はありますか?

岸:あると思います。特に今、地方の中小企業は後継者不足がかなり深刻です。ただ、地方の中小企業のM&Aは収益が上がらないことも多いので見極めが難しいですね。

吉岡:経営者の高齢化によって、2025年までに日本のGDPが約22兆円も失われるという試算もあるので、これは国の大きな課題ですよね。
都内のクラウドワーカーは劣悪な条件で下請けしている場合も少なからずあるので、そういった人材が地方の活性化に繋がる案件を請け負うというのも一案かと思うのですがどうでしょうか。

山崎:地方創生クラウドワーカーはありですね。収入面よりも、地方に貢献したいという人が集まりそうです。

岸:結構来ますよ。私が携わっている佐賀県でも、皆さん本業を持ちながら、自分の地元ではなく、報酬も高くはなくても、地方で自分のやりたいことをやれるという部分に惹かれて参画してくれています。
意外に思われるかもしれませんが、地方で新しいことをやる場合、副業やパートタイムで入ってくれる方を集めると良いチームができますよ。

山崎:私は東京育ちだから、地方への憧れがあります。やっぱりふるさとが欲しいんですよ。今深く関わっている鹿児島県も、本当に魅力的なところだと感じていて、地方には、貢献したいと思わせる何か大きな陽のオーラがあると思います。
地方の企業とM&Aで繋がり、そこにマーケターやインフルエンサーを集めてビジネスを行うというのはすごく良いですね。

地方のみならず各産業で人手不足が顕著になる中で、国からの補助金は今後どのような方向性になるのでしょうか?

次回は、“2024年度の補助金の活用”について語り合います。
5/20(月)に記事の公開を予定しておりますのでお楽しみに!

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