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【ファジサポ日誌】18.二つの幸運~第31節vsレノファ山口~

こんにちは。
いきなりですが…

「中間ポジション」とはなにか。読んで字のごとく「間」のポジションなのですが、これは「相手と相手の間」を意味します。相手の目の前に立つのではなく、相手と相手の間である「中間ポジション」に立つことでどのようなメリットがあるでしょうか。最大のメリットは、相手を迷わせることです。

「中間ポジション」でググると一番上に出てくる「サカイク」のHP(下に貼っておきます)に書かれている定義です。
今は育成年代の初期から中間ポジションを学ぶのですね。
この中間ポジションを上手くとることが、ポジショナルプレー、ボールを支配するサッカーの鍵となるようです。

昨夜の対戦相手レノファ山口は、このポゼッションスタイルに優れており、今回の対戦も山口にボールを支配される時間が長くなりました。

特にボランチの(8)佐藤謙介、(15)前貴之の中間ポジションの取り方は上手く、前半の岡山はこの2人を掴まえられず、山口に多くのチャンスを作られていました。

しかし、その前半も岡山はPKによる2得点を奪い、山口に2失点しながらもリードされずにイーブンで後半へ折り返すことができました。

そして後半の両チームのコンディションの差、岡山の効果的な選手交代により、岡山は徐々に攻撃の時間を増やし、得意のセットプレーで勝利することができました。

岡山としては、山口のポゼッションを「割り切って」許容しながら、山口の変化を見極め、次の手を打つ。その時間帯、方法が良かったように思います。

前置きが長くなりましたが、今回は山口のポゼッションの肝である両ボランチの動きと岡山の対策を中心に8月唯一のホームゲームを振り返りたいと思います。

まずはメンバーと試合結果です。

山口戦スタメン

■ 山口のシステム変更とキーマンの不在、そして新戦力
レノファ山口は今シーズン、(8)佐藤謙介をアンカーに置く4-1-2-3をずっと採用していましたが、29節の仙台戦から3バック、2ボランチとする3-4-2-1にシステムを変更しています。

チームとしての意図は明確にはわからないのですが、攻撃のパワーを減らすことなく、最終ラインの枚数を増やす、アンカー脇のスペースを消すといった一般的な守備面での効果、そして中盤の底を2人にすることでこれまで以上に確実にマイボールを運ぶねらいがあったのではないかと推測します。

更にこの岡山戦での大きな変化は、これまでIHやボランチの一角を務めていた(20)田中渉の出場停止でした。

ご覧のとおり、山口の攻撃タクトを振るう選手です。個人的にはパスレシーブでチャンスを作っている印象が強いです。

守る岡山側として、不在で助かることは事実ですが、一方で山口のボールの出所が見えにくくなるのかなとも思いました。

田中渉の代わりにダブルボランチの一角に入ったのが(15)前貴之です。

1年でJ2復帰を目指す松本山雅のキャプテンであり、ピッチ上のキーマンと思っていましたので、古巣山口とはいえ、J3も昇格争いが佳境を迎えるこのタイミングでの移籍には驚きました。

それでは、この(15)前と前述の(8)佐藤の中間ポジションが起点となった山口の攻撃を振り返りたいと思います。

■(8)佐藤謙介と(15)前貴之の中間ポジション
前半11分、山口(31)寺門のゴールキックを岡山(5)柳がヘディングで跳ね返すシーンです。

山口戦前半11分

(5)柳は山口(49)梅木と競りながら強いヘディングで前方へボールを送りますが、このセカンドボールは岡山ボランチ(27)河井、(26)本山と(15)デュークの中間スペースで待ち受ける山口(15)前に渡り、山口ボールとなります。

単純な構図ですが、山口の(15)前と(8)佐藤は岡山のトップとボランチの「中間」スペースでのポジショニングを徹底していました。
よってこのシーンのように岡山最終ラインが跳ね返したボールや、逆にデュークが落としたボールの回収に成功、山口攻撃の起点となっていました。

そして、このシーンの特筆すべき点は(15)前と(8)佐藤が近い距離にいることです。仮にこのシーンで(15)デュークの戻りが間に合っている、または岡山両ボランチのうちの一人が柳の跳ね返しの落下点に走り込んでいても、このスペースでは山口が2対1で数的優位となります。山口ボールとなっていた可能性が高かったといえます。

ひょっとしたら(27)河井はそこまで予測して前には行かなかったのかもしれません。

山口戦前半11分②

次の局面です。
(5)柳の跳ね返しを収めた(15)前は自分でボールを運ばず、横にいる(8)佐藤に運ばせ自身は前方へ岡山(26)本山と(14)田中の中間スペースへ移動します。このスペースで山口(41)桑原のパスを受けてドリブル、サイドで張る(32)高井へパス、最終的に山口がCKを獲得しました。

このシーンも(15)前の中間スペースへの走り込み、そして数的優位を作る動きが光っていました。
一方、岡山は(26)本山と(14)田中のボール奪取を見込んで(15)デュークはスプリントを開始、(27)河井も同じくボール奪取後のこぼれ球の対応に備えていたように見えました。

今、振り返ったシーンはほんの一例ですが、山口の(15)前、(8)佐藤はゲーム中の様々なシチュエーションで時に近づきながら、時に離れながらも常に岡山選手間の中間ポジションでボールを受け、数的優位を作っていました。その動きはダブルボランチというよりもアンカーが2人いるようなイメージです。(20)田中渉のような一本のパスで局面を打開する選手も脅威ですが、この日の山口両ボランチの動きは、岡山側としては非常に厄介に映った前半でした。


■ 岡山の振る舞い
それでも、山口中盤のパスミスからカウンターを仕掛けて岡山もチャンスを創り出していきます。例え自陣からであっても、一度(7)チアゴに渡せば一気にゴール前までボールを運べますし、フィニッシュまで繋がらなくても得意のセットプレーがあります。

チームとして得点パターンが機能している自信、そして最終ラインで相手の攻撃を跳ね返せる自信、この2つの自信から中盤でボールを握られても構わないというような「割り切り」を今の岡山からは感じます。

前半途中5バックの時間がありましたが、これも低い位置でしっかり相手の攻撃に網をかけるねらいがあったと考えます。あえて、不利となる中盤での攻防は放棄して、ストロングである最終ラインを強化する振る舞いであったように見えました。

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■ 状況一変の後半
前半終了間際の失点は痛かったもののスコアはイーブン。攻撃にフォーカスしている今年の岡山にとって、得点を奪わないと勝てない状況は却って選手の闘志を引き出したのではないでしょうか。

後半開始早々から岡山は相手陣内で猛攻を仕掛け、後半8分の(7)チアゴの強烈なシュートなどチャンスを迎えます。

まさに状況一変でした。
前半、ワンタッチで小気味良いパス交換をしていた山口でしたが、この後半開始早々は各選手のボールタッチ数が増えていました。山口各選手のタッチ数が増えることにより、岡山のプレスが間に合い岡山ボールになっていたと思います。

山口のボールタッチ数が増えた原因は、運動量の低下にあると推測します。
運動量の低下により、スペースへ走り込むスピードが落ち、タイミングが遅くなることにより、パスの出し手のタッチ数が増えたのではないでしょうか?

この傾向は前半と変わらず中間ポジションを取り続ける(15)前や(8)佐藤にも顕れていたと思います。

推測に過ぎませんが、この展開は岡山にとって幸運であったと思います。

■ 明暗を分けた選手交代
ベンチはこの山口の変化も見極めていたと思いますが、後半15分の選手交代、特に(44)仙波大志の投入は効果的でした。

私の目視での確認ですので正確かどうか自信はありませんが、(44)仙波投入後のフォーメーションです。

岡山後半選手交代

(27)河井から(44)仙波、(15)デュークから(38)永井に交代します。交代直後、(38)永井と(44)仙波のパス交換でいきなりチャンスを作りました。

少し誇張した図になりますが、(26)本山、(27)河井が横の関係なら、(26)本山と(44)仙波は縦の関係といえます。ダブルボランチの一人が前へポジションを取ることで、2トップとの距離感が良くなり、連携した攻撃がみられるようになりました。そしてこのシステムを支えていたのが、(22)佐野と(14)田中の驚異的な運動量です。

アンカーのようなポジションをとる(26)本山の両脇スペースのカバーから、ニアゾーンへの侵入、両SBとの連携と広大なスペースを埋めながら多彩なタスクをこなしていました。

今の岡山を支えているのは、実はこうした労を惜しまない走力とそれを裏付ける若手選手の無尽蔵なスタミナなのかもしれません。

思い返せば、走るサッカーは一時期の岡山の代名詞でした。この時間帯、タイプは異なりますが、何となく田所諒を思い出したりしていたのでした。

一方で山口は失点後に(49)梅木に代えて(18)高木を投入します。
(18)高木は(49)梅木と同じCFに入りますが、彼のストロングは右サイドからのアタッキングゾーンへの侵入やクロスです。CFでは持ち味は活かせず、最終的には後半28分の(9)岸田投入により右サイドへ移りますが、山口側の事情があるにせよ、この約10分間は山口にとってもったいなかったように見えました。

岡山の選手交代は、山口両ボランチの中間ポジションに対する手当てではなかったと思いますが、山口の運動量低下と岡山の選手交代も含めた運動量アップにより、結果的に山口のポゼッションの効果を落とすことに成功したと思います。
両チームの選手交代が明暗を分けたと思います。

■ PKの2得点について
レビューと言いながら、ここまで全く得点シーンに触れてはいませんが、PKに関しても幸運があったと思います。

幸運の意味ですが、先制点は審判団が山口(2)菊地の裏のスペースの(23)バイスまで見えていたこと(ひょっとして審判は新潟戦バイスの決勝点を見ていてくれたのか?…)、2点目のPKはよりゴールへ近い位置へ向かおうとする(7)チアゴの体の入れ方を主審が理解してくれたこと、この2つの意味で幸運であったと思います。

■ 若手選手不在の可能性と新戦力
今回の山口戦の勝利は、運動量低下など相手の要因に助けられた面は否定できないと思いました。
岡山はこの先、しっかりしたポゼッションをしてくる相手として再開試合も含めて2戦を残す山形、中間ポジションを徹底するチームとして、リーグ戦序盤で完敗した町田と、難敵との対戦を残しています。

この先も相手のポゼッションをある程度許容する戦いが現実的だと思いますが、その戦いは(22)佐野航大、(14)田中雄大の両SHの豊富な運動量があってこそ可能なのだという気づきをこの山口戦から得ました。

今や岡山のサッカーに欠かせない存在になりつつある(22)佐野航大ですが、9月のU-20アジアカップのメンバーに選出された場合、9月序盤から不在となる可能性があります(15日からのトレーニングキャンプメンバーには選ばれていませんので、招集の可能性はなくなったのかな?…)

また(14)田中雄大が累積警告2枚、(26)本山遥については3枚と出場停止にリーチが掛かっています。

仮に彼らが出場できなくなると、この先の難敵相手の戦いも難しいものになりますが、この度とても頼りになりそうな戦力が加わってくれました。

ブラウブリッツ秋田から完全移籍!
輪笠祐士選手です。14日のトレーニングマッチにも出場していたようですが、やはり秋田のフィジカルを全面に出したサッカーを経験している点、そしてその中でも前線への正確なフィードやテクニックも兼ね備えている点がストロングポイントのようです。
現レギュラー陣の代役のみならず、ボール奪取、展開の両面でプラスαをもたらしてくれる選手として期待しています。

■ まとめ
それではまとめます。
・山口の中間ポジションに手をやいた前半
・それでも幸運なPKで得点
・後半、山口の運動量が落ちる幸運
・明暗を分けた選手交代
・岡山の強みは若手のスタミナ、走力
・期待の新戦力

昇格も含めて多くの期待を持ちながらも一戦ずつ大事に見届けたい、応援したいと思っています。
原則ホームゲームのみのレビューですが、次のホームゲームまで間隔が空くため、ひょっとしたら横浜FC戦か群馬戦はレビューするかもしれません。その際はよろしくお願いいたします。

お読みいただきありがとうございました。

※敬称略

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