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【向日葵は枯れていない!】14.ギラヴァンツ北九州ミニレビュー~第14節 vs 松本山雅FC ~

先週の天皇杯福岡県代表決定戦後の福大、乾監督のコメントは非常に含蓄を感じさせる内容で、今シーズンの北九州のチーム力アップについても触れてくださった点が、筆者のように細やかながらギラヴァンツを応援している者にもちょっとした自信になっています。

この乾監督のコメントでは、北九州の相手プレスを回避する力についても触れられていたのですが、今回の松本戦では残念ながら相手のプレスに後手を踏む場面が目立ってしまったような気がします。
まだまだレベルアップが必要と感じた一戦でした。
しかし、それでいて勝点1を積み上げられたというのもチーム力の向上であるとは思いますので、負けなかったことを自信にしながら、この試合から見えた課題に向き合ってほしいと思います。
追いつかれる試合は嫌ですが、追いつく試合は前向きな気持ちになれますよね。

J3第14節 松本-北九州 メンバー

メンバーはこのような感じでした。久々に(11)喜山康平が復帰、(7)平原隆暉がトップ下に入ります。一方で最近起用が続いていた(8)若宮拓海はメンバー外となりました。
松本は(11)浅川隼人が復帰してから好調ですね。トップ下が本職の(10)菊井悠介がLSHに入った点も目を引きました。

北九州は序盤から松本のスピード感のあるビルドアップと前線への配球、そして(11)浅川、OFM(14)安藤翼の2枚に加え、(10)菊井とRSH(22)佐相壱明が交互に仕掛けてくるハイプレスにより、陣形全体を間延びさせられます。

8分、松本の先制点は北九州の陣形がこうした理由により間延びし、松本のビルドアップの各局面で北九州のプレッシャーが全く掛からず、楽に左に展開されクロスを上げられたことによるものでした。

この先制点には、松本が攻撃時にLSB(17)山本龍平を一列、二列前に押し上げる3-1-4-2または3-4-3のような可変を行い、北九州との間にギャップをつくった効果も出ていたと思います。

北九州もこの失点の直後からGK(27)田中がかなり高い位置に出てビルドアップを開始していましたし、その後も比較的(50)杉山耕二と(13)工藤孝汰の2CBは松本のハイプレスに苦しみながらも、高いライン設定を試みていたように見えました。

これはコンパクトな陣形を再構築するという動きといえます。
今の北九州の強みのひとつは、このようにピッチ上で起こった問題をすぐに認知し、修正を図れる点にもあります。

しかし、北九州は攻撃においても苦労します。
それは、普段は強みであるサイドの攻防で前半ほとんど前進出来なかったことです。
特にRSB(22)山脇華織はボールの獲り所として、松本に完全に狙われていたと思います。
松本としては先制点のように、左サイドからの崩しが強みですから、ボールを奪う位置としては合理的なんですよね。
また左に入っていた(10)菊井の正確なサイドチェンジも松本の攻撃のアクセントになっていたと思います。配置には理由があるということですね。

(22)山脇が単独で松本のプレスを剥がせなくても、CH(34)高吉正真らがサポートに入るのですが、そのパスコースも素早く松本に消されていました。ワンタッチであれば出せそうな雰囲気はあったのですが、(22)山脇はなかなか出せませんでしたね。後ろに戻すシーンが多かったと思います。

この試合全体的に松本のプレスに苦しんでバックパスが多くなっていました。

一方で、サイドがダメなら中央という北九州のボール運びは有効で、20分中央で(7)平原が持ち運びサイドに展開(22)山脇のクロスから(29)高昇辰が枠内シュート放った場面や、38分の(7)平原が中盤まで下りてスルスルっと持ち上がってシュートを放ったシーンも惜しかったです。

これまでの松本の試合を観ていて、前への圧力、スピードは磨かれたものを感じるのですが、構えて守るのは少々苦手なのかなという印象も持っていましたので、この攻撃は非常にねらいが良かったと思います。

もう少しこういう場面があっても良かったと感じた前半でした。
劣勢の前半でしたが、それなりに北九州が挽回するヒントも見えていたように感じました。

後半は前半停滞していた両SBが気持ちを出してくれたと思います。
この点はハーフタイムにしっかり修正が入ったのだと想像しています。
(22)山脇は87分に(10)菊井と(27)田中が1対1になりかけたところをよく戻りシュートブロック、(24)前田もCKのキッカーとして奮闘してくれました。

特に(22)山脇は上手くいかないことの方が多かった試合であったと思いますが、献身的なプレーを絶やさなかった姿勢は次に繋がると思いますし、終盤の大事な場面で松本の追加点を許さなかったことが、ATの同点ゴールに繋がったと思います。

後半、北九州が盛り返すことが出来た要因には、松本のガス欠もあったと思います。前半から非常に運動量が多かったと思いますし、気温が高かった影響もあったように感じました。90分通して、あのハイプレスを続けるのは難しいのでしょう。
また、1点リードということもあり、守備ブロックを敷いてカウンターに専念していた時間帯もありましたので、北九州もボールを持つことが出来ていたと思います。北九州の終盤のボールキープという点では(19)井野文太の投入も効いていたと思いました。

このミニレビューの中で、度々J3のチーム間の実力差は小さいと述べ続けてきましたが、今日の松本との間に関しては強度とスピードの点で北九州の選手との間に差があったように思えました。

しかし、前半ハイプレスに晒されながらもボールを繋ごうと試みたことや、(22)山脇のカバー、CKを蹴る(17)岡野凛平にサポが声掛けをするなど、北九州全体の諦めない気持ちが勝点1の獲得に繋がったのだと思います。

若い選手も多いですし、技術的な面はまだまだこれからトレーニングで成長できると思います。
そして、劣勢の展開でも勝点を積み上げられる実力を既に北九州は持っているのだと思いました。

次のリーグ戦は6月までありませんが、天皇杯も含めて良いコンディションで試合に臨んでほしいと思います。

以上、簡単でしたが本日の松本戦を振り返りました。

お読みいただきありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
岡山のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

北九州大学(現:北九州市立大学)法学部出身
北九州は第二の故郷ということもあり、今シーズンからギラヴァンツ北九州もミニレビュー作成という形で追いかける。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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