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002 労災保険の給付

労災保険の給付を個別に見てみます。

療養補償給付または療養給付
(※間に「補償」が付くと業務上災害の事故、付かないのは通勤途上の事故による給付です。その他の給付も同様です。請求時の様式が異なりますが、給付内容は同じです。)
これは、いわゆる病院の窓口負担がゼロ円(負担なし)という現物給付のことを言います。
私傷病によって病院で受診をすると、健康保険証を提示して3割負担をしますけども、あれは逆に言うと7割の給付を受けていることになります。労災保険は10割給付をしてくれるってことです。

1回や2回程度の通院でしたら大した差ではありませんが、長期の入院等になれば、労災保険と健康保険の差がずいぶんと大きくなります。

例えば、仕事中に骨折した場合と休日に骨折した場合で、それぞれ1か月間入院して治療費が60万円かかったとします。
仕事中であれば、病院代はゼロ円です。
一方、休日に骨折した場合は健康保険を使うので3割負担となり窓口負担は18万円。高額療養費制度で上限額がかかったとしても6万円~10万円程度の負担が発生します。
ケガの程度や治療期間が長ければ長いほど、労災保険給付の手厚さが実感できます。
なお、労災保険の給付はこれだけではありません。その他の給付も、健康保険の給付より遥かに手厚くなっているので、仕事中のケガや通勤途上のケガについては、会社に隠したりせずに労災保険の給付をうけるべきです。

なお、たまに聞かれるのが「労働者の過失でケガをしたのだから、労災給付は受けられない。」という理屈です。例えば、仕事中にハサミで指を切ったとか、会社の入り口ドアに指を挟んだとか。明らかに労働者本人の不注意だから、そんなことに労災は使えませんよね?という指摘です。
い~え、それでも労災給付は受けられます。というか、労災給付でなければなりません。
業務上のケガについては、使用者側に全く過失が無い場合であっても使用者は責任を負います。これを「無過失責任」と言います。
使用者は労働者を使用して利益を得ている以上、業務中に労働者が自身の過失によってけがした場合でも補償をしなければならないのです。
ですので、業務が原因でケガをした場合には、たとえ本人の不注意であっても労災給付が受けられます。

なお、故意や重大な過失によるケガの場合については、労災給付が受けられない場合があります。例)飲酒運転による被災事故

労災給付の決定については、管轄の労働基準監督署長が行います。といっても、給付実務を行っているのは一(いち)職員です。ここで、はじかれると労災保険の給付を受けられないこともあります。ケガの内容によっては判断が困難なものも存在しますが、そのときに監督署の一職員の考え方によって給付の可否が分かれることがあります。
もし、労災保険が不支給と判断された場合も、不服申し立てを行うことができますので諦めないで調べてみてください。また、監督署の担当職員によっては「取下げ書」なるものを書かせて、労災給付請求を自ら諦めさせる方法に誘導する場合もありますのでご注意ください。なお、取下げ書を出したとしても再請求すればOKです。

情報を持っている人のみが得をし、持っていない人が損をするようなことが、国の社会保障制度ではあってはなりません。
おかしいなと思ったら、まずは調べてみましょう。



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