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「かけられる言葉に、躊・躇・中!」

このエッセイは、急性骨髄性白血病になって半年の当事者(若葉マーク)からの「現場中継」的なスタンスで書き綴っています。ただし、私なりの一方的な受けとめ方に寄り気味なので、万人の白血病の方を同じとは思わないよう、よろしくお願いします。(これだって、当たり前過ぎて、ことわるほどのことでもないですかね)
 
さて、本題です。
長期入院中とはいえ、オンライン会議をやっていたおかげで、外の人たちとは意外とコミュニケーションをとる機会がありました。退院後も、まあまあ、仕事関係の人たちとはあまり距離を感じずに会えました。
 
でもですね、そこで感じたのが「ちょっとした躊躇」なんですよ。それが今回のテーマです。前々回の「あまり褒めないでほしい」のシーズン2と思ってください。
 

海に行ってきました!

まず、再会の時によくかけられるねぎらい&気づかいフレーズが、ほぼ同じなことに軽い驚きがありました。
「(いまの体調は)元気ですかぁ?」
「(こんな場所に出てきて)大丈夫ですかぁ?」
っていう気づかいフレーズ。もちろん、大人だから「はい、なんとか元気になりました」「もちろん大丈夫ですよ。ご心配をおかけしました」と返すけど、内心ではちょっと戸惑ってる自分がいます。
なんせ、まだ骨髄性白血病バリバリなんだから、「元気ですかぁ?」はちょっとキツイ。「大丈夫ですか?」って聞かれても、実際は大丈夫じゃないです、とも言えないし。なんとか頑張って来ているわけで・・・。
 
もちろん躊躇してしまっている気持ちは言葉にしません。みんながかけてくれる言葉は優しさで溢れていますから、全部ありがたく受けとめます。
でもねェ、内心では「ちょっと違うんだよなぁ」って気持ちが消えないんです。
 
この件がずっと頭の片隅で魚の骨のように微妙に引っかかっています。
悩むほどのことじゃないですが、なーんか、戸惑ってしまうんですよね。
内心で自分ツッコミをしてしまったり。それが回転木馬のようにグルグルと増幅されているうちに「なんでこんな風に考えちゃうんだろう?」って、劣等感が湧いてくることもあるんです。
 
それにね、立ち話や会話の最後にかけられる「別れぎわ言葉」にも躊躇してしまうんですよね。はい、実は。かつての自分ならあんまり深く考えなかったからこそ、驚きです。
この手のフレーズって、私たちの生活の慣用句になっていますしね。じつに浸透していますよね。それが・・・これ。
「ムリしないでくださいね」
「まずは健康第一にしてください」
「好きなことを目一杯楽しんでください」
どれも優しさといたわりに溢れる言葉です。だけど、実は当事者のみなさんのなかには、戸惑ってしまう人がいるんじゃないかと思うんですよね。
なんせ、私がそうだから。
 
では、内心の声を再び聞いてみましょう。
「つらいけど、少しは無理しないと何もできないんだけど」
「キツイんだけど、ムリしないと誰もやってくれないし」
「健康第一にって言われても、休んでると生活費稼げないし」
「好きなことを目一杯楽しんでと言われても生活があるし」
「好きなことって自分にはとくにないから、どうしたらいいの?」
 
優しさといたわりに溢れる気づかいの言葉をかけていただけるのは嬉しいけど、実際に受け入れてその通り実行できる人って限られてると思うんですよ。
特にね「無理しないで」と言われると、動くのさえつらい時なんか「じゃぁ、やるのはいっかな」とマジでやる気が失せてしまうこともあるんです。

でも実際、少しは無理をしないと何もできなくなるのも事実ですしね。
今回、抗がん剤治療の2クール前に大腸2か所の穿孔(せんこう)を切除する外科手術をしました。一昼夜、集中治療室にいた翌日に病室に戻り、なんと3日目から歩くリハビリがスタート。筋力を落とさないためだそう。しかし、これが実はとってもキツかった。術部の腹筋は痛いからまったく力が入らないのに、「がんばって歩きましょう」とうながされる。「これって相当なムリを強いてくるな」と。ムリしないとダメなんですよね。
 
要はムリをしないといけない状況になってからムリを促されるのは正直、モチベも上がりにくいですよね。それに、何をムリしてはいけないのか、も正直わからない。
だって、相手にじゃあ、どうすればいいんですか?と問えないし、ね。
 
これがけっこう肝心なことなんですが・・・
「無理しないでね」と言ってくれた人に、具合が悪くなったことや再発したことを言いにくくなってしまうことをわかってほしいですね。だって、「ほら、無理しないでって言ったじゃないですか」と言われるかもと想像すると信頼関係が崩れてしまいそうで怖いからです。
それに無理をしたのは自分であって、悪くなったのも自分のせいだから、言った相手のせいにはとてもできない。「無理しないで下さいね」というのは、言った先方さんの側にはけっして責任がかぶってこない言葉だということです。つまりやさしさの仮面をかぶった「予防線」と断じてしまうのは、ちょっと言い過ぎでしょうか、ね。(書きながら言い過ぎかな・・・と反省しています)
 
こんなふうにしか考えられない私は、かなり疑心暗鬼な嫌な奴すぎる輩なのかな、と思ったり。
 
じゃあどんな言葉をかけてもらえばいいのでしょうかね。
これも千差万別だから一概に言えません。まさに人によって心に響く「ソウル・フレーズ」はいろいろでしょうからね。
私的には、というと意外とシンプルですね。
「がんばってください」
「応援しています」
「手伝えることがあれば言ってください」
それと・・・
「大事になさってください」
ですかね。う~ん、この言葉が、いまんところ激ヤバに嬉しいですなぁ。
 
 偶然にも3日前、87歳の女性の方と談笑する機会があり、別れ際に「お大事になさってください」と言葉が自然に出てきました。
 すると満面の笑みで「ありがとうございます」とお礼が返ってきました。
 
とても、うれしかった。

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