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本阿弥光悦の凄み

先日つぶやきましたが、ビックリするくらいあっという間に時間が過ぎました。東京国立博物館 - 展示・催し物 総合文化展一覧 日本の考古・特別展(平成館) 特別展「本阿弥光悦の大宇宙」 (tnm.jp)
展覧会の軸は作品の背景となる光悦の内面世界でして、作品をみた当時のひとびとの気持ちや社会背景などもふくむ、視座の高いものでした。

これは、また行きます。じ~んと痺れた作品の中で、会期後半に少し入れ替えもあるようですし、それでなくともまた行きます。宇宙は広すぎた。。

今回ご紹介できますのは1作品のみです。みなさまご存知、そう、重要文化財《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》。昔の作品は、作陶なども長い名前が多いですね。それだけでウッとなることもありますが、これは、生きているうちに絶対ご覧になったほうが良いのではないでしょうか。ウッと呼吸が変わるのは、実際の作品を観た時です。ご興味の無い方でも、一度実物をご覧になればきっと他の方にも勧めたくなるでしょう。

俵屋宗達 絵、本阿弥光悦 書。

上記の写真のように、よく資料で検索できる部分ではなく、今回は巻物全体を一挙公開、なんと13.6メートルの終始を自分の目で観ることができるのです。これは、実際に観て初めてわかるその価値の高さ。この作品を、切って一部を見ちゃダメです!(画像に載せているけど)
作品の始まりから終わりまで、歩を進めて「体験」するレベルのダイナミックさですよ。眼福の極みでして、あの時こぼれたため息は、我ながらバラ色だったに違いない。。。

鶴の動きにリズムをつけるちらし書き

切り取りの画像ですと、鶴が群れ飛ぶ流れにのって和歌が表されているという事実の情報になってしまいがちですが、この作品はそんなものではない。
13メートルを体験している間は、上質なリサイタル舞台を思い出したほどです。本当に、音楽が聞こえてくるかとびっくりしました。

幕が上がるのは、地上の鶴の群れがいよいよ飛び立つ、というシーンからです。

これは飛び立ったあと

群れは高く海を越え、彼方だった陸地へまた降り立つのです。そのムーブメント(ナゼか英語)のダイナミックなドラマの上に書かれた、光悦の和歌の配置、文字のちらし具合、何よりも唸るような美しさの肥痩のある運筆が、これ以上ない訴えかけをしてくるのが胸にせまります。
何か、日本人のDNAにある深いところを呼び覚まされる思いがしました。
太古から、日本人は何をあがめてどこに美学を置いてきたのか、ということに思い至るような。

陸地へ降り立った。

出発は左向きへ進み、着地後は右を向くという全体のバランスを締める幕引きも完璧に素晴らしい。
作品から一歩引いて、全体を観ようと退いてもひとにぶつからない配置で展示されております。国立博物館、本当にお流石です。

さて、これまでの画像は、下記を写したものです。

便利堂さん

ミュージアムショップで一瞬で買いました。広げたあと巻き取るのが大変。。だって、壮大なドラマがのってるからね。

本当は資料室へ立ち寄りたかったのですが、この日は休館。また参りますのでその時を楽しみにしております。
つねづね申しておりますが、やはり日本の作品にある独特の「捧げる・祈る・込める」スピリットは、他のアートとは別質の、むしろ「凄み」を含んでいると感じます。そして、その覚悟に似た凄みに出会うと、本当に底からの感動を味わえるのです。


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