カサブランカ/Casa Blanca

知人からカサブランカの球根をもらい初めて鉢植えにした。それから毎日声をかけ追肥をし見守…

カサブランカ/Casa Blanca

知人からカサブランカの球根をもらい初めて鉢植えにした。それから毎日声をかけ追肥をし見守った。4月、一郎から順に発芽。ところが陽を求めて植木鉢を移動中、楓の小枝で五郎を傷つけてしまった。どんなことでも夢中になり、ときどき、しく じる私の名は”Casa Blanca”です。

最近の記事

雨漏り

 1年ほど前になる。ポタ、ポタ……、玄関の近くの天井で水滴が落ちる音がした。初めてそれに気づいたとき、私は気のせいだと思った。  噓だ。最初から、空耳なんかじゃないってことぐらい分かっていたはず。  雨が降るたび、雨音はだんだん大きくなっていくのに私は無視していた。気づかないふりをしていた。何事にも逃げないで立ち向かう私には珍しいことだ。  弁解すれば、雨漏りに慣れっこになっていたからかもしれない。 夢のマイホーム。実は雨漏り住宅だった。和風の家にベランダを取り付けたことが原

    • 思い込み、がとまらない

      #創作大賞2024 #エッセイ部門  いつの間にか、世の中はデジタル一色になっていた。  アナログ人間と呼ばれる私たちの世代にとって、デジタル化とは未知の得体の知れない世界だ。携帯電話もずっとガラケーだった。  だけど、こんなにも急速に進む現代社会の中ではそこを無視するわけにはいかなくなった。自分がデジタル社会の難民になりつつあると実感した。  そこで私は、私にとっての禁断の扉だった、パソコン、インターネットの世界へと入った。  すべての手配はお兄ちゃんがしてくれた。 1年半

      • 葬儀をおえて

        #創作大賞2024 #エッセイ部門  人が死ぬと、通夜があり葬式をだす。 それぞれが生き難い世を何とか生きて、もと来たところに還っていくのだから家族も親族も弔問客もただそこだけを見つめればいいのではないか。  なのに人はそこに歪んだ思いを交錯させていく。 先日、兄の四十九日が京都であったのだが、半月ほどしてとても嫌なことが起きた。  事の起こりは、父の勲章だった。  平成8年、父の叙勲の知らせを受けて、私たち兄弟三人でお金を出し合い勲章を入れる額を父にプレゼントした。父は大

        • 南天とメジロ、私のなかでひかり輝くもの

          #創作大賞2024 #エッセイ部門  初夏のある朝のこと。  玄関先の南天に、メジロが巣をつくった。それに気づいたのは視線だった。朝な夕な、ちょっとした用で玄関を出入りするたび強い視線を感じて、そちらに目を向けるとメジロの小さな黒い目と私の目があった。  しばらくじっと目を合わせているうち、私の心は不思議なほど穏やかになった。 と、いうのもその頃、私はチャックという犬を亡くしたばかりで心の中にポッカリ空洞を抱えていたからだ。  チャックは野良犬だった。 初めて会ったのは、リ

          卵孵る、ヒナになる、哀しい結末

           「孵らぬ卵」の記事を投稿した翌日、小さな命が二つ生まれた。 巣を見つけてから私はなるべく玄関の出入りを避け、勝手口で用が足りることは済ませた。  メジロを怯えさせないよう遠くからそっとそっと見守らなきゃ。だが、おっちょこちょいの私は知らぬ間に巣に近づいてしまう。メジロは驚きパッと飛び立つ。ええーい、こうなったらちょっと失礼して巣をのぞかせて頂きます。そこには標本のような卵が四つあるはずだった。だけど、あの日。  えっ? えっ? わあー、何なの、なんなの……。 ちっちゃな茶色

          卵孵る、ヒナになる、哀しい結末

          孵らぬ卵

           どうもおかしいことに気づいたのは、三日ほど前のこと。抱卵期間11日~12日なんてとうに過ぎて、もうどのくらいになるだろう。メジロの卵が孵らない。  10年前の失敗を繰り返さないよう、自分の思いつくことすべてをした。  まず、南天の木の下にネコ避けのマットを敷き、木の真ん中あたりに念のためまたネコ避けのマットを取り付け、足元にはネコ忌避剤を置いた。  朝、目覚めると私はすぐ玄関の戸をそうっと開けメジロの巣の安否を確かめる。何事もなければ、ホッ。昼も夜も、眠る直前まで見守った。

          ことしの桜

           いつもより開花が遅く、洋ちゃんの忌明けの法要(4月7日)で訪れた滋賀も京都も大阪、神戸も、桜、桜、桜……。 「どうや? これをK子に見せよう思うてな。考えてのことやで」  すっかり京都弁の洋ちゃんの得意そうな顔と、声が聞こえてきた。 あの日、火葬場まで行くことができなかった私は小さな骨壺に入った洋ちゃんと対面した。  だけど、これが洋ちゃんだという手がかりはどこにもなかった。 慈膳「卯月」は、先付から始まり水物まで13品あった。皆、料理を静かにいただいた。  ときどき誰かが

          伝えたい 伝わる

          昨年の1月、パソコンを始めて5ヶ月ほど経ち、お兄ちゃんに手を引かれて2023/05/23  19:14 「まるちゃんとカボチャ」で「note」デビューした。  それから毎週火曜日、投稿を一回も休まず続けた。毎回、楽しくてしょうがなかった。  現在(2024年4月8日 19:55時点) 記事数 49記事 全体ビュー 20,580 コメント0 スキ77 コメント0、スキ数も少ないのですが、全体ビューを見ますと、思いがけずたくさんの方々に私の記事を読んでいただいているようでとても嬉

          こころ

           心って、とても厄介。私の中に確かに存在しているはずなのにその姿はどこにもない。しかも、正体不明。意識と無意識が混在する"こころ”の、私の中でとても手を焼くのが、無意識のこころ。  だって、意識の中だったら自分でコントロールができるけど、無意識の心ってそもそも自分が意識してないんだからコントロール不可能。取り繕うにもどうにもならない。  先日、大学病院の歯科で、すこし込み入った治療をすることになった。いろいろと説明を聞き、同意書にもサインをして診療室に向かった。すると、K先生

          回覧板

           回覧板が回ってきた。こんなふうに何度、私は回覧板を手にしてきたことだろう。ところがこのごろ私はふとそこに冷たさを感じるようになった。  時代の流れ、自治会員の減少、高齢化。ことに昨年の10月、この町で唯一のスーパーが閉店してから道行く人の姿もあまり見かけなくなった。ちょっとした立ち話をしていた向かいの家の老夫婦はとうに亡くなり、空き家も多くなった。町全体が空洞化していくような儚げで淋しげな静けさのなかで、今まで気にも留めていなかった些細な、だけど大切なものが一つ一つ音もなく

          まるです。はじめて記事を書きます。よろしくお願いします。

           おばちゃんを悲しませた、あのネズミ君事件。ボクとしては当然のことをしたわけで、おばちゃんに褒められると思っていたのに‥‥ションボリ。おばちゃん、しばらく口をきいてくれなかったんだ。  ところがね、なんで今回ボクが記事を書くことになったのかというと、またネズミ君事件が勃発したからなんです。おばちゃんが言うには、あのネズミ君の親戚筋がボクの畑からカボチャの種や栗の皮を掘り起こして、居間の出窓の下のブロックで囲んだ物置に"ネズミニュータウン”を作っていたらしいのです。これにはさす

          まるです。はじめて記事を書きます。よろしくお願いします。

          風の挽歌

           どこかで、風が吹いている。 夜、窓の外を見ると闇のなかで星の光が小さく瞬いていた。冬の星座は澄みきった大気のおかげで輝きを増す。きっとどの星より光っているのは、おおいぬ座のシリウスに違いない。  大犬の口元で輝くシリウスは、全天第一の輝星だ。  シリウスという名はギリシャ語<セイリオス>、やきこがすもの、という意味。  リオちゃん(息子が小1のとき飼った犬)の名は、息子と相談してこの、<セイリオス>からとった。リオちゃんが家に来たのは、凍てつく冬の夜だった。まだ2ヶ月ほどの

          四人目の三人官女

           ほんの隅っこでいいですから、私を、そこに置いていただけませんか? 一応、主婦歴40年ですから、何でもできますよ。そうでもないかな・・・  実家の床の間にずっと私の雛人形が飾ってあった。両親が他界したのち私はそれを自宅に持ち帰った。古ぼけた黒い木枠はがたがたで、埃で曇ったガラスがなんとか嵌まっている。内裏雛と三人官女は愛らしい顔立ちでひっそりと並んでいた。  雛人形を買い求めたときのことを私はよく覚えている。だって、町中を探し回ったんだもの。そして、「やっぱり、これにしますわ

          訃報

           長兄が亡くなった、と京都の義姉(Nちゃん)から連絡があったのは23日の夕方のことだ。なにがなんだか。びっくりし過ぎた私は、うまく思考回路を動かすことができなかった。  パーキンソン病になってから、夜、眠るときは手を繋いで寝ていたというNちゃん。22日の朝、Nちゃんが起きると兄はもう死んでいたという。繋いでいた兄の手はまだ温かかったそうだ。  兄(洋ちゃん)と最後に会ったのは父の四十九日で、三井寺(滋賀県大津市)まで出かけたときだ。法事が終わり三井寺からすぐ近くにある姪の家に

          続・昭和家電

           とうとう、その日がきた。しかもお兄ちゃんが北陸にいるこんなときに。夫はこういう時全く役に立たない。「僕はこういうことは苦手なんだよね」と、その一言ですべて終わり。  玄関の鍵が壊れたときはちょうど梅雨どきで、暑いし蚊に刺されるし、汗だらだらで3日かけて直した。アルミサッシの鍵を取り換えたときは、初めてなのに説明書をよく読まないで作業を始めてしまい枠を挟んで鍵の向こうの鉄の板を枠内に落としてしまった。ということは、鍵が取り付けられない。私は重いアルミサッシを外し、上下逆さまに

          まるちゃんのお兄ちゃん、北陸の空の下で

           1月31日から2月12日までお兄ちゃんが北陸に向かった。30日の夜、出発の挨拶に来たお兄ちゃんにまるちゃん大はしゃぎ。部屋中駆けずり回ってソファーの上に飛び乗りクッションを全部床に落としてしまうし、人の言葉を話せないもどかしさを精いっぱいワンワンに込めてお兄ちゃんに飛びつくし。そんなまるちゃんにお兄ちゃんスマホのカメラ向け続ける。  車中泊でのボランティア活動、しかも、この寒さ。雪国の冬は底冷えして町中が凍るような冷たさに沈む。そこへ、こんな悲劇だ。  伏木の母方の菩提寺、

          まるちゃんのお兄ちゃん、北陸の空の下で