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気合い

街中で自転車をこいでいたら、不意に鼻血が出た。

鼻血を出すなんてのは何十年ぶりだろうか?
年を取ってきていよいよどこか悪くなったか、とも思ったが、多分何ともない。
まぁわからんが。

大学生の時、特に付き合っているわけでも好きだったわけでもない、要するにただの女友達と、喫茶店に入ったことがある。
うちで余っていた家具かなんかをタダであげて、ついでに彼女の家まで運んだお礼に、コヒーを奢ってもらったのだ。

それだけだったのだが、店に入って、向かい合って腰かけた瞬間、鼻血が出た。

何で出たのか今でもわからないが、とにかく出た。
不可抗力というやつである。

カウンターの奥の店員は、クスクス笑っているし、女友達は、いたたまれない感じで、「出ようよ、ねぇ出ようよ」と繰り返すし、なかなかの修羅場であった。

ただここで出て行ったら、全てに負けるような気がして、わたしは踏ん張った。

気合いで鼻血をとめた。
そうたいがいのことは気合いで何とかなるのだ。

今日も道端であの日のことを思い出しながら、気持ちを込めたら、数十年ぶりの鼻血は意外とすぐに止まった。

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