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介護をしている全ての人へ#70 ~ 勇気の印

 この頃は、追い詰められて状況に応じて的確な行動ができなくなっていたことが分かる。かなり危ないところまで追い詰められていても、やさしい人のやさしい一言で人は正気に戻ることができる。

2019年3月11日(月) 母の日記

 夫、〇〇市立中央病院にて、再検査
 13:00からMRI、ヨード剤の点滴を試みるが、血管に針が入らない。看護師泣かせ。諸々の作業で帰宅は17:00過ぎになってしまった。
 今日、長男は病院に同行しなかった。昨日のことを引きずっていた様子。  
 本当によく私たち私たちの面倒をみてくれていた。やりたいことも、欲しい物も我慢してきたに違いない。会社も突然休むこともあり、その度に嫌味を言われてきた様子。これまでの息子の献身を無視した夫の心無い言葉ひとつで全部がダメになってしまうのではないかと不安。
 朝、今日は病院には行かないと言われたときは、胸が引き裂かれたような気持になった。
 食べものも喉を通らなかった。
 夜、長男がコンビニのシュークリームを買ってきてくれて、紅茶を淹れてくれた。涙が出るほどうれしかった。まだ、私たちの傍らに居てくれていたよう。ありがとう。

2019年3月11日(月)私の日記

 今日は、介護休暇を申請してあったが、出社した。
 デスクで仕事をしていると、いつも嫌味な上司が「今日は親孝行の日じゃなかったのか?」と尋ねてきた。言い方に「出社するもしないも、その日の気分次第か?」的なニュアンスというか、言葉の棘が感じられたので、「親孝行っていうのは、特別な時に特別に何かをしてあげるっていう事じゃないと思ってます。日常の接し方ですよ」と言ってやった。
 昼休み、Kさんからランチの誘い。前回は断ってしまったが、また誘ってくれた。うれしい。
 介護休業を取っている間、文書審査の申請や校正出しをやってくれるという。「ついでだから」、と恩に着せない物言いに人格的な上品さと優しさを感じる。本当にありがたい。どんな苦境に在っても、必ず味方はいる。そう思えて勇気が湧いた。
 今朝、病院に行かないことを母に告げたときの母の顔が思い出された。今にも泣きそうな顔だった。死病を患ってしまった母を裏切るようなことはしてはいけない。あとどれくらい一緒に過ごせるか分からないが、生あるうちは自分は母の勇気の源にならなければ。
 反省と爾後の決意を示すために自宅近くのコンビニで、シュークリームを2つ買った。
 母の嬉しそうな顔がうれしかった。

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