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社会保障制度を公助として機能させるために-令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書を読んでの雑感-

「令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書(内閣府)」を読みました。


上記報告書内に、社会保障制度を必要としているであろう方たちが利用に至っていない現状についてのデータもありました。以下転記いたします。


●支援制度の利用状況について、収入の水準がもっとも低い世帯でも、「就学援助」や「児童扶養手当」の利用割合は5割前後であり、「生活保護」、「生活困窮者の自立支援相談窓口」、「母子家庭等就業・自立支援センター」の利用割合は 1 割未満と低い

利用していない理由について「就学援助」、「生活困窮者の自立支援相談窓口」、「母子家庭等就業・自立支援センター」に関しては、「利用したいが、今までこの支援制度を知らなかったから」と「利用したいが、手続がわからなかったり、利用しにくいから」を合わせた回答が全体で約 1 割となっている


社会保障制度は生存権を実現するための公助を担うものであるにも関わらず、自分の状況にあった制度を調べる、理解する、書類を揃える、窓口に足を運び自身の状況を説明する等のプロセスに困難を有する人にとって、利用申請が難しいという現状がある.データはその一端を示しているように思います。


「申請する権利の行使をサポートする施策」を張り巡らし、社会保障制度の利用申請プロセスに困難を有する人たちにとっても社会保障制度が公助として機能するようにするべきです。これは国や自治体が主導して行うべきことではないでしょうか。
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12年前に行われた「第5回安心社会実現会議(平成21年6月15日 首相官邸)」の資料1-1安心と活力の日本へ(安心社会実現会議報告)に以下記載があります。


”制度への信頼を高めるときに常に念頭に置くべきは、社会保障の制度がたいへん複雑で分かりにくい、ということである。社会保障がどのように国民の安心と関わっているのか、国民がその義務と負担の見返りに得ている安心の一覧を分かりやすく示していくことも大事である”

”学び、働き、子どもを産み育てるなどのライフサイクルの具体的場面で、いかなる給付やサービスを受けられるのかを具体的に解説した「社会保障ハンドブック」が作成され配布されるべきである。”

”また初等中等教育において、支え合いとしての社会保障の意義・役割についての理解を深める教育を行うことが検討されてよい”


上記12年前の報告に記載のあった「社会保障ハンドブック」は、ハンドブックからは程遠いですが、10年後のコロナ禍において、厚労省から以下の制度一覧が出されました。


「生活を支えるための支援のご案内(厚生労働省)」

上記は、内容的にも、形式としても「社会保障ハンドブック」と胸を張って言えるものではないですが、今まで、このような一覧さえ存在していなかったのです。

以下リンク先は、内閣官房が作成したチャットボットで質問に回答すると制度や窓口がアナウンスされるものですが、これもまた、制度の説明表記がわかりづらかったり、各自治体の担当課のURLや電話番号の自動表示に至っていないなど、制度等を必要としている方の側に立った際の使い勝手としては「役に立つ」と胸を張っていえるまでには全く至っていません。私は提言と実装に関わりましたので、引き続き意味あるものになるよう改善を提言していきたいと思います。

提言の経緯等は以下をご覧ください。


制度は存在していても、「今」必要な人が、「今」利用できなければ、制度は存在するだけで、その個人・世帯にとっては何ら意味を持ちません。

リンク先「制度申請フローとサポートポイント」をご覧いただくとわかる通り、「申請する権利の行使をサポートする施策」は、さまざまなポイントにおいて実施され、きめ細かい網のように施策を張り巡らす必要があると考えます。

申請する権利の行使をサポートする施策において、デジタルは、有用な手段であると考えます。本年発足したデジタル庁のミッション「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。」を体現する上でも、「申請する権利の行使をサポートする施策」に目を向けていただきたいと考えますし、自身、自分が所属する組織からも意見していきたいと思っています。


「第5回安心社会実現会議(平成21年6月15日 首相官邸)」における提案が出されてから12年が経ちました。

社会保障制度を利用申請することを支える「申請する権利の行使をサポートする施策」は、一体どれほど整備されてきたのでしょうか。何が変わったのでしょうか。


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参考:申請する権利の行使をサポートする施策を打てそうな焦点(写真)

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参考2:「制度申請フローとサポートポイント

制度申請フローとサポートポイント - 申請フローとサポートポイント


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