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過去の臨床から学んだこと置き場

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#ソーシャルワーカー

”社会保障制度の利用史”的なるもの

”社会保障制度の利用史”的なるもの

『ネガティブケイパビリティで生きる(さくら舎)』にて、”社会において、体験の質感にアクセスできる言葉が足りていない”という話があり、その延長線上に、昨今話題になった『東京の生活史』等の登場を位置づけてる文章を読んで、ああなるほど、と思いました。

”社会保障制度を利用された(しようとする)個人の体験”は、インターネット空間でさえアクセスしづらい。

拙著「15歳からの社会保障」を上記の文脈に位置付

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雑記)2023年度を迎えて

雑記)2023年度を迎えて

2023年度になりましたね。はや2ヶ月経ってしまいましたが、今年度の取り組みなどについての雑記を通して近況を報告させていただきます。

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1.法人事業1)経済制度の自動応答チャットボットの運用+オンライン相談

離職者票がない場合どうしたらいい?、明日食べるものがない、借金を返せない、保険証がない、家賃が払えない、医療費が払えないなど、全国各地の相談者の方とのやり取り

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「15歳からの社会保障」執筆における5つの工夫について

「15歳からの社会保障」執筆における5つの工夫について

拙著「15歳からの社会保障」の4刷が決定しました。(合計13000部になりました)目標としていた全国の中高+αの数=15000部まであと少しになりました(12000だと誤認していました汗)。
お手にとってくださったみなさま、ご紹介くださったみなさまに感謝いたします!

大変ありがたいことに、執筆に際しての工夫についてお聞きいただけることが増えましたので、以下に記させていただきます。

1.物語の活

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社会保障制度に関する正しい知識によってもたらされる変化

社会保障制度に関する正しい知識によってもたらされる変化

社会保障制度の利用が権利であることを踏まえた社会保障制度の正しい知識は、個人やそのまわりにいる人を助けるだけでなく、制度を利用する他者への差別偏見を払拭することに寄与する。

結果、社会保障制度を利用する他者へのパブリック・スティグマを軽減し、ゆえに、自身が制度を利用する際にセルフスティグマを抱えづらくなる。

というサイクルを考えたならば、正しい社会保障制度の知識を有する機会を作っていくことは、

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2022年振り返り

今年は、法人としては、直接相談支援を行う自主事業の開始、基礎自治体の包括的相談支援体制に関する方針策定支援、個人としては書籍「15歳からの社会保障」の刊行に注力した1年でした。

拙著は3刷/3000部増刷が決まり、合計8000部になりました。目標として定めている12000部(全国の中高の数+α)も視野に入ってきました。1月に人生初の印税が入りますので、印税で自著を購入し、全国の中学校などに寄付す

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刊行報告「15歳からの社会保障 人生のピンチに備えて知っておこう!」

刊行報告「15歳からの社会保障 人生のピンチに備えて知っておこう!」

今年の11月中旬に日本評論社さんから「15歳からの社会保障 人生のピンチに備えて知っておこう!」という書籍を刊行させていただくことになりました。(noteカバー画像は、日本評論社さんの了承を得て使用しています)

依頼をいただいてから早2年。本当はもっと早く刊行したかったのですが、自分の筆力の問題で、だいぶ長く時間がかかってしまいました。

やっとこ発売日が決定しましたので、どういった経緯で本書を

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ナラティブアプローチへの傾倒と個人的価値観

ナラティブアプローチへの傾倒と個人的価値観

10代から20代への移行時に生じた、経験至上主義から社会構成主義へという個人の価値の変化は、その後、現場に出たのち、ソーシャルワークの技法の一つであるナラティブアプローチへの傾倒を引き起こした。

オルタナティブストーリーに「人間の強さ」のようなものをみて、過去の自己のリカバリーのプロセスと重ね合わせたのだろう。自己のリカバリーのために他者のストーリーを摂取していることに気づくまでに、時間を要した

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大学時代のバイザーからの言葉

大学時代のバイザーからの言葉

大学の時の実習のバイザーに、「あなたがこの先この職業を選んだとしても、常にすぐ傍の道には別の選択肢があることを忘れないでね」と言われて、当時は?だったのだけれども、

今となっては、自己納得強度のある物語は自身の歩みをエンパワメントしてくれるけれど、常に仮組みにしておかないと、その物語に首を絞められるよ、ということをSVerは伝えたかったのかもしれない。それほどに当時の自分に危うさをみたのだろうな

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個人の問題を社会化するための技術的探索-マクロソーシャルワーク論文を補助線にして-

個人の問題を社会化するための技術的探索-マクロソーシャルワーク論文を補助線にして-

1.はじめに日本社会福祉士会から、マクロソーシャルワークについての書籍が刊行された。

援助技術としてのマクロソーシャルワークは、それが援助「技術」である以上、それは言語化し伝達可能なものであるという前提に立ち、上記を読む前のタイミングで、自身の経験から言語化した(N=1)ものを、書き記しておき、比較しながら読みたいと思い本稿を記した。

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ソーシャルワークの価値と倫理について考える-価値葛藤を補助線にして-

ソーシャルワークの価値と倫理について考える-価値葛藤を補助線にして-

先般、価値と倫理について、実践における価値葛藤を材料にして言語化する機会を得たので、こちらでも書き残しておきたいと思います。

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ソーシャルワークの価値と倫理、と言えば、人それぞれ、実践で出会った・得た・書籍等で読んだテキストなどに関連付いて想起されるのではないでしょうか。

私が、いつも思い出す

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クライアントに対し自身が「期待するストーリー」を当て込んだ経験から学んだこと

クライアントに対し自身が「期待するストーリー」を当て込んだ経験から学んだこと

過去、中途障害のクライアントの方から「あなたは言葉少なで、まるでわたしが話す言葉を期待しているみたいね。あなたからはわたしと同じにおいがするのよ。ね、あなた、昔、大変なおもいをされたのでしょう」と言われ、ギクリとしたことがありました。

「まるでわたしが話す言葉を期待しているみたいね」

この一言は、「わたしは、自身の想像力不足(もしくは怠慢)を埋めるために、自身の想像力の範囲内で調達できる安易な

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自職業への疑念を血肉化する試行についての記録-自職業を取り巻く環境に焦点を当てて-

自職業への疑念を血肉化する試行についての記録-自職業を取り巻く環境に焦点を当てて-

実践で直面する複雑な事象において、自分の”能力”ばかりに着目してしまうと視野が狭まってしまうし、自責ばかりが募ってしまう。

これが行き過ぎるといわゆるバーンアウトに至ってしまう。自分の場合、それを防ぐために採用した方法は、「自分の力不足は一旦棚に上げ(笑)、自職業を取り巻く環境のアセスメントを行うこと」だった。これは、自分にとっては大変助けになったように思う。

本エントリでは、自職業への疑念を

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”信頼”の機能についての雑感

”信頼”の機能についての雑感

信頼の機能ケアの受け手は、極論、ケアの提供者に生殺与奪の権を握られているという前提に立つとき、受け手が「この人は信頼できる」と思えるならば、「強引に口の中にスプーンを突っ込まれるかもしれない」と思わずに済む=不安や恐れが発生する頻度を下げられるため、「信頼」は恐怖や不安を縮減する機能として働く。

受け手が「この人は信頼できる」と思える=「強引に口の中にスプーンを突っ込まれるかもしれない」と思う不

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自己覚知:経験至上主義への嫌悪について

「(私の経験は特殊だからあなたには私が言うことは)わからないと思います」という拒絶のジャブを向けられたとき、過去の自分をみているようでひどくイラつくのは、”経験至上主義”は”自らの行為を以て(自覚せずとも)社会に復讐すること”と相性が良いことを少しだけ知っているからであるように思う。

経験を外部化し相対化しようとつとめることは、経験至上主義から脱する術のひとつではあるけれども、その過程で自らの動

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