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【詩】都市伝説「ため息橋」

ため息の数だけ人は老けるって
だからあの橋に行ったらダメだよ
ため息橋
 
ふっと気が抜けた夕暮れの雨どきに
どこからともなく現れる
その橋
 
真ん中が高くなっていて
ヒールで歩いてもカランコロンと
音がする橋
 
渡り終えると
シワがため息の数だけ増えている
 
若返る方法は一つ
息を止めて全速力で戻るんだ
 
カランコロンの
音も聞いちゃダメ
 
ただひたすら走る
戻れたら
きっと
もうその橋は消えている
 
あなたの記憶も
 
だから伝説なんだけど
もし
途中で橋が消えたら
あなたはもう
戻れなくなる
 
どこにも
 
戻れなくなった人々は
その寂しさを紛らわすために
 
橋の人柱になって
千里耳になって
ため息をつく次の誰かを招き寄せようと
待っている
 
安藤広重の
浮世絵を思い出して欲しい
 
あんな橋が
きっとどこかに
この街の
番地のない場所に
現れるって
 
それはきっと
江戸時代から
そこに在っただろうって
 
一度渡った人は
そういうけど
 
気を付けてほしい
 
ため息さえつかなければ
全ては伝説の記憶で
まさか…って
いうだけで
済む話
 
だから
肯定的に
生きてみよう

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