蝉の断章の記憶 第8話
「お久しぶりですな。いやあ、全く」
男は右目が義眼であることには変わりなかった。しかし、男がわたしの顔を覗き込むように見ると頭がくらくらした。蛇に睨まれた蛙が感じるような無感情な視線の呪縛。わたしは半歩下がった。
男はしゃべり始めた。
「あの折は良いものを手に入れられましたな。どうですか。その後、何か変わったことは? 無かった? いや、きっと有ったでしょう。分かりますよ。あなたの顔にそう書いてある。とても充実した人生を過ごされているのですな。今までとは違う別の! あなたは