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しがない音大生が楽器の運搬について思ったこと。op.3

数日前、Xにてこんな投稿が流れてきた。

コントラバスを電車で運搬中に、駒が倒れる事故が起きたと。
自分はコントラバスよりも遥かに小さく持ち運びのしやすいヴァイオリンではあるけれど、さすがに楽器が破損している画像は痛ましすぎて。。。
この投稿だけなら何ら問題なかったと思うんだが、どうやらその後にこの投稿を引用した投稿が引き金となってプチ炎上(?)していたらしく。
コントラバスやその他大型楽器奏者からしてみれば、持ち運びしやすいヴァイオリンの人間が何を偉そうに、と思われるかもしれないが、一連のいろんなツイートから私も新たな学びがあったり思うことがあったので、書こうと思う。


コントラバスのハードケース

私も実際に問題の投稿を見たのだが、炎上しちゃった原因はいくつかありそうだった。
そのうちの一つが「ハードケースに入れればいいじゃん」というもの。

コントラバスという楽器に馴染みのない方は知らなくても仕方がないのだが、コントラバスのハードケースはとんでもなく大きく、基本的に楽団がツアーで各地を回ったりなどにトラックや飛行機を使っての長距離移動をするときにしか使われない。
私もコントラバスのハードケースには2度しか実際お目にかかったっことはなく、サイズはもはや冷蔵庫。

またもやXから画像を引用する。周囲のものも若干写っているので、ぜひ見てほしい。
とても人間1人で運んだり、がっちりホールドできるサイズじゃないので。(映画や小説の中では死体の隠し場所として使われたり、実際にこのケースの中に隠れて国移動した人も存在するとかしないとか。友達も寝袋感覚でよくソフトケースの中に入って寝てたりする。)

ちなみに私のコンバス弾きの友人は普段はソフトケースに車輪をつけて運搬している。
そしてこれはコントラバスに限った話ではなく、コントラファゴットやチューバなど、その他大型楽器のハードケースにも言えること。本当に、該当楽器の奏者の皆様、日々お疲れ様です。。。

そもそも、コントラバスを電車に乗せるのは可能なのか

今回私の中で新しい発見というか、考えたことなかったな、というのがコレ。
ポストの中にそもそもサイズ的に電車に持ち込むの違反では?というのがちらほら。
ヴァイオリン弾き(もしくはヴィオラ弾き)の中でも楽器運搬に関して話題は上がるのだが、その場合ほぼ90%の確率で飛行機。もちろん電車やバスに乗る場合もこちらは最大限の注意を払って乗っているが、そもそも私の中で電車・バスでサイズ規定違反になるという考えに至ったことがなかった。自分の視野ってまだまだ狭いんだな。。。

というわけで少し調べてみたところ、JR西日本、JR東日本ともに楽器は長さ制限を超える場合であっても、車内で立てて携帯できるものはサイズ関係なく持ち込み可となっている(ただし専用の袋、ケースに収納すること)。新幹線の場合は特大手荷物として持ち込むことになるようだが(追加料金が発生)、楽器はそのサイズに関わらず予約は不要。(ただし「特大荷物スペース」を利用する場合は事前予約が必要)



私の住んでいるベルギーでは、基本持ち込みはOKのようだ。私もコンバス弾きの友人とお互いに楽器を持って何度か電車に乗ったが、車掌さんから特に何かお咎めを食らっているようなことはなく、自転車専用車両やスーツケースを置くための少し広めのスペースを利用したりなどしていた。また関連のXの投稿を見る限り、ドイツ、オーストリアなども問題なさそう。ただし、フランスやイタリアなど一部の国では規約違反で、罰金を取られたり強制的に降車させられたりなどの事例もあるよう。フランスではこれに関しての抗議署名活動なども繰り広げられている模様。
海外に関してはきちんと調べる方が良さそう。あとは、その時に当たった車掌さんの判断とかにもよるので、かなり運ゲーだと思う。

人にも楽器にもベビーカーにも、全てに優しい社会に。

結局のところ、公共交通機関を利用しての楽器運搬の話は、もっと言えばベビーカーやら子連れの方への配慮だったり、そういうところにも繋がってくると思う。もっとも、楽器は言ってしまえば極論は「贅沢品」というカテゴリーになってしまうのかもしれないけれど。公共交通機関の定義として、「特定の個人及び団体に利用が限定されず、同時に複数人の利用が可能である交通手段のこと。不特定多数の人々が、所定の運賃を支払えば自由に利用することができる交通機関のこと」とある。

私も含め、日々楽器と行動をともにすることが多い人間は、そのような交通機関を利用する場合は細心の注意を払っているし、なるべく他の利用者の迷惑にならないように気を配っている人がほとんどだと思う。特に今回取り上げた大型楽器奏者の人は、サイズがサイズなだけに、なおさら気を遣っていると思う。なにせ、楽器は私たちにとって仕事道具であり、人によっては自分の命と同等かそれ以上として扱うものだから。

コメントや引用ポストに「自己責任」「そんな大事なものを電車に持ち込むな」「車で運べ」などの書き込みも多くて、かなりショックだった。私は身近にコントラバス弾きの友人がいて、その友人とは楽器を持って電車移動をすることもよくあるので、その大変さを日常生活の中で何度も目にしているがゆえ、国が違うとは言えど今回の件はスルーすることができなかった。

楽器をやるのには、何かしらお金がかかる。かかりすぎる。楽器の運搬でさえ、タダではない。人にはそれぞれ理由があり、車での移動が難しい場合ももちろんある。そして極めつけ、楽器そのものが車や家が買える値段だったり、もっと言えば楽器が破損した場合の修理代もバカにならないし、最悪元のように戻らない可能性だってある。そして大変悲しいことに、故意的にぶつかってきたりするような人も、世の中には存在する。こちらがどれだけ最大限の配慮を持ってしても、カバーしきれない部分はどうしたって発生するのだ。それらを全て自己責任の一言で片付けてしまうのは、ちょっと酷ではなかろうか?

理想的には、大型楽器を含め大荷物を使う人たちも安心して公共交通機関を利用できるような社会の方が良いに決まっているし、そのことによって行動範囲や活動範囲が広がれば各方面にとって万々歳だと思う。何も大きなのは楽器だけではないし。
私としては、女性専用車両のように楽器や大きな荷物を持った人専用の車両があれば、多少は楽器の運搬問題も解決されるんではないかと思っているが。

一般の皆様、もし駅構内や電車内で楽器らしきものを持っている方がいたら、ほんの少しでいいので、ちょっと気にかけてくれたら嬉しいです。
人にも楽器にもベビーカーにも、全てに優しく思いやりのある社会になりますように。

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