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クラウドファンディングで学費を募るという選択肢は、あってもいいと思う。op.2

こんにちは。今日はいつもとは打って変わって真面目な話なので、敬体で文章を綴ろうと思います。

今回のテーマはタイトルにもあるように、クラウドファンディングと学費のお話です。
私は今、今学期の学費の半分をクラウドファンディングで募っています。このクラウドファンディングをどうして立ち上げたのか、また立ち上げるに至った経緯や私の思いなどが少しでもいろんな方の目に留まり、新しい価値観として誰かの中にインプットしてもらえたらいいなと思います。

なぜ学費をクラウドファンディングで募ることになったのか

そもそもなぜこのようなことになったのかと言いますと、8月の中旬、ドイツのセミナーからベルギーに戻ってきた直後にちょっと話さなければいけないことがあると母親から電話がありました。その内容を端的に言ってしまえば、昨今の円安の影響がひどくなり、学費及び財務証明のための送金が厳しいので、学部卒でキリもいいし、一度日本に帰ってきてくれと。そして大学院に行きたいのなら自分でお金を貯めて行ってくれと、そういうことでした。

日本ならば、それでも全く問題はないでしょう。大半の人間が大学の学部卒で、修士号や博士号を持っている人の方が少ないです。むしろ今の日本の現状では、学部卒の方が就職に有利かもしれません。

しかし私の場合は、そもそも高卒でヨーロッパに渡り、学士号を取っているわけです。しかもベルギーの場合、学部は3年しかありません。当然、この3年間で得た音楽関係者のつながりはこちらの方が多く、仮に日本に帰ったとしても、実家のある福岡にわずかにつながりがあるだけです。将来的に考えても、どちらの方がより仕事を見つけられる確率が高いかは、ある程度予想がつきます。

そして何より、欧米では修士課程まで卒業して当たり前、という風潮が強いです。修士でより専門的なスキルを身に付け、社会に貢献するというのはどの学問分野においてもそうで、修士号以上を持っているかそうでないかでは、就ける職に雲泥の差があります。

私もある程度、その重要さは理解していたつもりでしたが、私のヴァイオリンの先生を始め、こちらの方にその事を伝えると、皆さん口を揃えて「せっかくこの3年間ここで頑張ってきたことが全部もったいないよ!修士までは絶対に勉強した方がいい!」と言っていました。そのくらい、日本と欧米諸国では学部卒までと修士以上で卒業することの重みが違うんだと、改めて実感しました。

母親の言い分に一理あるのも承知でしたが、それでも今、このまま残ってどうしても勉強を続けたい理由が私にはありました。
それは、私の師事している先生が、来年で退職なさること。
そもそも、はるばるベルギーの音大に進学を決めたのは、その先生の下で勉強したかったのが最大の理由でした。

確かに、今日本に帰って働いて、お金を貯めてまたヨーロッパに戻ることは可能です。幸いにも私は今22歳で、2〜3年日本でお金を貯めて戻ったとしても、まだ25歳くらいです。でも、それで戻ってきた時には、もう今の先生に大学で教えを乞うことはできないわけです。音楽留学の最大の難しいところは、「自分に合う先生が見つかるかどうか」です。数年後に戻ってきた時にベルギー、もしくは他の国に、今の自分の先生と同じかそれ以上に相性の良い先生が見つかる保証はありません。もちろん、そこにこだわりがあまり無い人もいるようですが、私は割とそこに重きを置くタイプでした。

そんなこんなで、親と喧嘩したり、先生の説得やベルギー、日本の友人などの協力もあり、こちらにはなんとか一年は残れそうな目処が立ちましたが、肝心のお金の問題が片付いた訳ではありません。

奨学金があるんだからそれを利用すればいいじゃない、という声が聞こえてきそうですが、この時期はこちらの奨学金もほとんど締め切られており、また日本の海外大学院進学のための返済不要奨学金は、応募条件として現時点で日本在住であることが条件になっているものがほとんどで、私はそもそも応募対象外でした。しかし、親も学費の半分ぐらいが限界だろうと言うし、とりあえず今年の学費は払えたとしても、来年また同じ壁にぶつかるのは目に見えています。

またバイトで稼ぐという方法もありますが、そもそも留学生はアルバイトの上限が週20時間までな上、私のような音大生の場合、楽器の練習時間を確保した上で大学の授業をこなさなければいけません。もちろん何かしらのバイトはするつもりですし、チャンスがあれば演奏の仕事もできると思いますが、毎月安定的にあるわけでもありません。
そして仮にバイトで稼いだとしても、そのお金は月々の生活費と学部時に借りていた貸与型奨学金の返済に充てると、ほとんど残りません。

そこで、割と早い段階でクラウドファンディングを立ち上げ、学費を募ることを思いつきはしたのですが、様々な理由から当初はあまり現実的ではないと思い、この案をすぐにボツにしていました。

学費クラファンは炎上しがち

クラウドファンディングで学費を募る。思いついた時点でリサーチはしました。現に、いくつかの日本のクラウドファンディングサイトには、学費支援をお願いします!という案件をいくつか発見しました。しかしどれも寄付率はそこまで高くなく、目標金額達成までかなり厳しそうでした。

またさらに調べると、以下のような記事も見つけました。

この記事に書かれていることが全て正しいと決めつけるのは違うと思いますが、これを読む限り、自分がクラウドファンディングで学費を募ることは限りなく自己利益に近いんじゃないか、そして現時点で支援者への明確なリターンができる訳ではないことから、あまり現実的ではないと思い、一度ボツにしました。

友人の一言がきっかけで踏み出せた

私には、中学時代から仲の良いNさんという友達がいて、私がベルギーに来てからの3年間、ほぼ欠かさず月に1度ビデオ電話をしています。8月末に彼女と電話したときに、今の私が置かれている状況を話したのですが、彼女もアイデアの一つとしてクラウドファンディングを立ち上げることを提案してくれました。私もそれは思いついたんだけどね…。と事情を説明すると、彼女はでもさ、と言って次のように言ってくれました

「とりあえず集まるかどうかは置いといて、立ち上げるだけやってみたら?しなかったら一円も集まらないのは確定だけどさ、やってみたら意外と支援が来るかもよ?」

それは、どちらかというと、いつもリスク回避ばかり考えて行動していた自分に改めて向き合うきっかけにもなりました。自分は本当はどうしたいのか。やりたいことに正面から向き合って、傷つこうが何しようが、それでもやり続ける覚悟はあるのか。
実際に自分なりに頑張ってきたつもりではありましたが、その一方で親や誰かに甘えっぱなしであったことも自覚していたので。これは単なる小さなフックにしすぎないかもしれないけど、ここでやらなかったら今までの自分と変わらないし、きっと一生このままな氣がして、立ち上げるだけやってみよう!と決めました。

その後、何人かの人にアドバイスをもらい、無事に立ち上げることができました。
そして、多くの人がそれをシェアしてくれて、寄付をして下さいました。大半が私の直接のつながりがある友人たちですが、彼らを通してまたシェアや寄付、そして他にも私がここに残れるようなアイデアをくれたりしました。

この記事を書いている時点で、クラファンを始めて5日が経ちますが、ありがたいことに既に目標金額の半分を超えました。
今回のクラファンを通して、私のために何かできることはないかと、こんなにも動いてくださる方がいたんだと、思った以上に大切なことに氣付けました。
本当に、どんな感謝の言葉を尽くしても、尽くしきれません。ありがとうございます。

何かを学びたいと思う人が、お金で諦めないための新しい選択肢の一つだと提示したい

私は音楽家になりたい、なろう!と決めた時から変わっていない信念が一つあります。
それは、「音楽で世界中の人を幸せにすること」
昔はまだ、幼かったので(今でも中身はまだまだ未熟ですが)このような抽象的なことしか思いつかないし、言えませんでした。しかし、今は歳を重ね、じゃあこれを実現するために具体的には何をしよう?どうしたら人を幸せにできる?というのが、自分の中で形になりつつあるように思います。

今回、クラウドファンディングで支援をして下さった方には、大学院を卒業するタイミングでコンサートを開き、支援のお礼としたいなと考えています。それを実現するために、この2年間でどれだけの学びを得られるか、またそのために様々な課題をクリアしなければいけないとは思います。しかし、支援者にどんな形でも、私の学んだことで何かを返すというのはするつもりです。

そして、私はクラウドファンディングで学費を募ることが、何かを学びたいけれど経済的な理由で諦めないための新しい手段として、あっていいと思います。それを提示したいという強い思いもありました。
もちろん、学費を募ったのに成績不振になったり、支援者に何もリターンがない、というのは言語道断だと思いますが……。

私は中学、高校と公立に通っていたこともあり、いろんな人を見てきました。その中で、「自分は将来こういうことをしたくて、だからこの学校に行ってこれを学びたいんだけど、家庭の経済的事情で諦めるしかないんだよね」と寂しそうに言う友人を何人も見てきました。その子たちに比べたら、自分はどれほど恵まれていたんだろうということも、今なら本当に心の底から理解できるし、今、自分が好きなことを好きな環境で勉強させてもらえることは改めてすごくありがたいなと思います。

日本は今でも、そのような環境下に置かれている人たちがたくさんいます。奨学金を借りたとしても、返済しなければいけない人の方が多いと思います(はっきり言って、返済しなければいけないものを、奨学金なんて言い方はしてほしくないと個人的には思いますが)。経済的理由から何かを学ぶことを諦めかけていた人が、「こんな方法もあるんだ!」と、希望を持てる選択肢の一つにこれからなっていってほしいと願うばかりです。

私は今回のクラウドファンディングでの経験を通して、たくさんの方から頂いた支援を、次は別の誰かが夢を諦めずに叶えるために、循環させていけたらと思っています。

この記事は無料で全文読めますが、敢えて有料記事設定にさせていただいております。このnoteを読んで、少しでも支援したい、と思って下さった方は、ぜひサポートとして記事の購入、記事のおすすめなどしていただければ幸いです。また、クラウドファンデイングの方もまだ受け付けておりますので、寄付やシェアしていただけると嬉しいです。

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