見出し画像

氣が付いたらベルギー生活3年目が終わりかけてた話。【学士課程3年間の感想】op.1-3

さてさて、半ば自己満足で書いてるこのシリーズも、やっと最終楽章(?)。前編&中編は以下からどうぞ。


3年で一番濃かった一年 【2022−2023】

夏休みは2年ぶりに日本に1ヶ月ほど帰った。十分パワーチャージをして8月半ばにベルギーに戻ってきた時は、日本に帰った時よりもこっちの方がホームな氣がした。

3年目は有難いことに学内はもちろん、学外のオーケストラやアンサンブルのプロジェクトに参加させてもらえたのは、本当に幸運だった。規模の大きなもの(私の独断と偏見)だけでも、2022年7月〜2023年3月までに8つも参加してた。びっくり。スケジュールや自分の学業的都合でやむなくお断りさせていただいたものもあるので、それら全てに参加したらたぶん10は超えてた。

日本のトップクラスの音大生からしてみれば、なんと少ないと思われるだろうが、キャパシティがあんまりない上に普段の学科に論文とかもやってたので、今振り返ると自分よくやったわと思う(自分で自分を褒めていくスタイル)。

ここからは特に残ってる思い出とかを書いていこうと思うけども、量が半端なく多いのでちょっと駆け足気味で。


Youth Orchestra Flanders (8月・3月)

日本に帰国するちょっと前、フラマン圏の音楽院及び芸術団体が主となって運営しているユースオーケストラのオーディションに合格できたので、2022−2024シーズンの4つのプロジェクトに参加できることになった。

記念すべき私の最初のプロジェクト、ドビュッシーの牧神の午後への前奏曲、ブルッフのヴァイオリン協奏曲第一番、そしてメインはベルリオーズの幻想交響曲!!いやぁー、今思い出してもあの夏はマジで楽しかった。自分と同年代くらいの、且つオーディションに合格してきた上手な子たちばかりと弾くオーケストラって、意外と初めてで(そもそもオーディション受けて参加するオケも初めて)。そして、対象がベルギーの音楽院に留学している生徒も含まれるので、国籍も言語も多種多様(?)。

そんな感じで、1週間毎日、朝から夕方までリハーサルして一緒にご飯食べて、本番2公演。刺激受けまくり、モチベーション爆上がりで楽しくないわけがない。笑
新しい出会いも多くて、次のプロジェクト始まるまで割と余韻を引きずってた。笑

ベルリオーズのハープ4台はインパクト大。
リハーサルと1公演目はAntwerpで。毎朝早起きして通った私偉い。
2公演目はGent。

3月のプロジェクトはリハーサル数も少なく公演数も一回のみで、そしてプログラムが夏とは違った意味でハードだった。リハーサルはブリュッセル郊外の体験学習施設みたいなところで泊まり込みリハ。ちょっと合宿みたいで楽しかった。

プログラムはベートーヴェンのエグモント序曲、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第一番、メインはベートーヴェンの交響曲第3番。ベートーヴェンの交響曲は今までに5番、6番、9番(最終楽章だけ)を弾いてきたけど、意外にも2ndヴァイオリンで弾くのは初めて。刻み職人、頑張りました(笑)。

ショスタコのチェロコンは、まあ、言わずもがな最高にかっこいいです、当たり前に楽しかった。ほぼリズムゲームみたいだったけども。あとソリストが大変アメイジングでした。現場からは以上です。笑

個人的には一番課題が見つかったオケの本番だったなぁ、という印象。将来オケで弾くのを仕事にしたい私にとって、ユースオケに参加できるのは本当にラッキーだった。

リハ休憩中、いい感じに撮れた一枚。
エリザベス王妃コンクールの会場でもあるFlagey
思ったよりステージ狭く感じた

大学の室内楽オーケストラ(9月)

毎年恒例、室内楽オーケストラのオープニングコンサート。今回はどういうわけか、第2ヴァイオリンのトップサイド(セクションの一番前で、パート首席の横)で弾かせてもらえることになり、めちゃくちゃ勉強になったし良い経験になった(パート最前列に座ることはないだろうと思ってた人)。そのぶん、指揮者目の前で緊張感ハンパなかったけども。楽しかったことには変わりないので、良しとしよう。

プログラムはモーツァルトのドン・ジョヴァンニ序曲、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番、メインはシューマンの交響曲第2番。シューマンは有名な作曲家ではあるけど作品を演奏するのは完全にはじめましてだった。
4楽章は自分のパートに主旋律なさすぎて、流石にセカンドにもメロディーちょうだい〜、などと思いながら弾いてたけどすごく良い曲で、好きになった。

Antwerp String Ensemble (10月)

これは本当に嬉しいご縁で参加させてもらった弦楽アンサンブル。各パート1ー2人ずつという、少数精鋭スタイルで、大人数でやる弦楽アンサンブルとはまた違った楽しみとスリル、というか緊張感があったし、経験としてはすごく貴重な良い体験ができたな思った。

個人的にグリーグのホルベルク組曲とチャイコフスキーの弦楽セレナーデ(1楽章だけ)弾けたの、嬉しかったなぁ。
個人的に弾きたくてたまらなかった弦楽アンサンブル作品3曲のうち、一曲と1楽章は制覇。笑

あと、撮ってもらった写真が良すぎてたまに眺めちゃう。
こういうこぢんまりした感じのアンサンブルとか室内楽、これからもっとやりたいのでお誘いお待ちしてます。笑

📸 Alexander Van Vilierberghe
📸 Alexander Van Vilierberghe

大学の弦楽アンサンブル(11月)

この辺りの時期、アウトリーチの本番も含めたらほぼ毎週のようになんかコンサートやってたような。今までの自分では考えられないすごい本番月間の締め(?)、今度は大学のプロジェクトの弦楽アンサンブル。

今年の弦楽アンサンブルのプログラム、去年とは打って変わってめちゃくちゃ難しくて、自分としても色々考えさせられることが多かったプロジェクトになった。

プログラムはシェーンベルクの弦楽六重奏『浄められた夜』(弦楽合奏版)、R. シュトラウスのメタモルフォーゼン、あともう一曲したはずだけど印象薄すぎて忘れた。

特にメタモルフォーゼンはヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス合わせて23人という上限有りで、1人ずつ全く違うパートを演奏するというもので、その中で弾かせてもらえたのはとても嬉しかった。だけど同時に、自分のパートがほとんど別のどこかのパートと同じであまり弾いても目立たないこともあって、「私のパートいる?」とか思ってしまったこともあった。シェーンベルクは1stヴァイオリンで、高音域と半音階に泣いた。なんというか、ヴァイオリンの技術面でも、そして自分の人間的に醜いなと思う部分に向き合わざるを得ない期間だったように思う。

Mahler Student Festival Orchestra (3月)

はい、やっと最後にして一番大きかった本番。
話を聞いたのは6月ごろで、半年もあるなあとか思っていたけど割とすぐ本番が来た。

ベルギー国内の音楽院で勉強している学生はもちろん、別の国で勉強している学生も参加していて、また新しい出会いがたくさんあった。

演奏したのはマーラーの交響曲第2番「復活」。まさか自分にとって初マーラーが2番になるとは思ってもいなかったが(漠然と1か5になると思ってた)、大編成のオーケストラとソプラノ、アルトのソリスト、そして合唱付きのこの作品は、人を集めるのも大変だから、なかなか演奏機会が少ない。もっとも、マーラーの交響曲はどれも規模がデカすぎて大変なのは変わりないのだが。それを学生オーケストラでやるというのもなかなかチャレンジだったと思うし、そんな大プロジェクトの旗揚げ公演に参加させてもらえたのは、とてつもなくワクワクした。

本番の会場。ステンドグラスが美しくて思わずパシャリ。
📸Kevin de Borger
📸Kevin de Borger


卒業試験と卒業論文

そして、最終年の一大イベントといえば、これ。
日本のほとんどの音楽大学は卒業実技試験のみらしいが、なんとここでは論文も書かないと卒業できない。つまり、いくら実技が良くても論文の点数が悪ければ普通に落とされる、ということである。日本の音大も卒論書かせたら良いのに。

論文については、書き始めると長くなるので別記事にまとめようかと検討中だが、結論としては、書いてる最中は本当に死ぬかと思ったけど、人生経験としてやれてよかったなと思った。まあ、自分のオーガナイズがすこぶる悪かったのが原因だが。でも、私がなんとか論文を書き上げられたのも、私のヴァイオリンの先生やプロモーター、そして英文のチェックや論文についてのアドバイスでたくさんお世話になったKU  Leuven大学の友達が助けてくれたおかげで、彼女たちには本当に頭が上がらない。

そして、卒業試験。私の大学では、学士課程の卒業試験は1人約45分間の公開試験。プログラムの組み方は人それぞれで、無伴奏曲と協奏曲全楽章、無伴奏一曲とコンサートピース、ソナタ、あるいは全て伴奏ありの曲など、とにかく人によって全く異なるプログラムで、個性が出て面白い。平均1〜3曲くらいが相場のようである。ちなみに、私は以下のプログラムを準備した。

プログラムも自分で作成して準備しなきゃいけなかった

結果をいうと、個人的にはめちゃくちゃ悔しい終わり方になってしまった。でも、この経験は絶対次に繋げられるし、本番で最高のパフォーマンスをするためには、日々の練習や体調、メンタルを整えるだけではダメなんだと気付かされた。というのも、本当に今回の試験で楽器のやその備品含めてよく整えておくことが如何に大切かを改めて認識させられた。

と、まあ本当に演奏面もそれ以外も反省する点が多くて、終わってしばらくはちょっと落ち込んでたりもしたけれど、論文で研究したことが演奏にも活かせたことは、本当に大きな進歩だったし、先生にもそう言ってもらえたのがすごく嬉しかった。


以上、私がベルギーに来てからの3年間を3つの記事にわたって書いてきたが、この3年間をなんとか生き抜くことができたのは紛れもなく、いつも応援してくれる両親、ベルギーに来てから音楽面以外でも人生に必要なことをたくさん教えてくれるヴァイオリンの先生、こっちでできたたくさんの友達、そして日本から変わらず応援してくれる人たちのおかげ様々である。出会った全てのご縁への感謝と初心を忘れずに、修士課程の残り2年間もフルスロットルで頑張れたらなと思う。あと語学とそもそものコミュニケーション能力もうちょっとどうにかしろ私。


。。。残るは8月の追試一科目をパスするだけ。

よろしければサポートをお願いします。いただいたサポートは、ヴァイオリンのメンテナンス費や弦など消耗品の購入に使わせていただきます。