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見かけたら買っておきたい入手困難ワイン、その味わいは?【ドメーヌ・オヤマダ祝スパークリング2021】85点

日本ワインは年々レベルアップしている。ワインとしてのレベルが上がっていることもそうだが、それ以上に各産地、生産者の個性が反映されるようになり、何がやりたいのかがはっきりするようになった。

数十年前は海外のワインを目指してヴィニフェラを植え、抽出を強めて樽香をしっかりとつけたワインが多かったが、今は肩の力が抜けた流麗なワインが増えた。かつてのような海外に憧れたワインが悪いわけではないが、そもそも日本の気候は強い酒質のワインを作るのに向いていない。相当なコストとリソースをかけなければ海外の恵まれた産地のようなワインにはならないのだ。無理せず日本らしいワインを目指す生産者が増えているのは、歓迎したい動きでもある。

そうした日本らしいワインの1つともいえるのが、ドメーヌ・オヤマダの祝スパークリングだろう。

ドメーヌ・オヤマダ祝スパークリング2021

薄いピンクのラベルにシンプルな「祝」の文字が印象的。ドメーヌ・オヤマダはルミエールに16年勤務した小山田幸紀氏が2014年に立ち上げたワイナリー。近年は特に人気が凄まじく、発売と同時に売り切れが続くレアなワインとなっている。

そんなドメーヌ・オヤマダがつくる唯一のスパークリングワインが「祝」だ。その名称から何かしらめでたい由来がありそうに思えるが、実際には祝地区でぶどうをつくっているから。とはいえ、レアなワインという付加価値もあるし、祝の席で開けてもいいだろう。ワインは飲み手がストーリーを見出す酒でもある。

デラウェアを主体に甲州とプティ・マンサンがブレンドされている。デラウェアは生食用のぶどうで、ワインとしては独特のフレーバーがあることから海外ではあまり好まれない。一方で日本人には、駄菓子のような甘い香りがどこか懐かしく感じられる。デラウェアだけだとシンプルなワインになりそうだが、柑橘を溶かし込んだ岩清水を思わせる甲州のキレと、プティ・マンサンの強烈な酸がバランスをとり、三位一体となってまとまっている。すっきり飲めるが、奥に芯の強さもうかがえる点は通好みかもしれない。85点。

価格もお手頃で基本的にはカジュアルなワインだが、入手困難ということもあり、手に入った場合の開け時が難しい。もっと気軽に日々の食卓に合わせられると最高なのだが……。

このタイプのスパークリングワインとしては、タケダワイナリーのサンスフルが比較的に手に入りやすくおすすめだ。

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