風力業界の中の人

再エネ比率を上げること=エネルギー自給率を上げること=世界情勢の影響を受けにくくするこ…

風力業界の中の人

再エネ比率を上げること=エネルギー自給率を上げること=世界情勢の影響を受けにくくすること。再エネの一翼を担う風力業界のことを多くの皆さんに知ってほしいと思い、風力業界の内側から見えることをお伝えします。記事の感想やリクエストは、コメント欄によろしくお願いします。

最近の記事

洋上風力ラウンド3公募の選考事務局の技術的な審査に使ってほしいウェブサイト

以前に、「洋上風力ラウンド2に選ばれた発電事業者の事業実施能力の玉石混交ぶり」と「その公募の選考事務局の技術的な目利き能力のなさ」について触れました。 こんな惨状が続けば、国益を損ねるだけでなく、アンチ再エネ連中に「やっぱり洋上風力ダメじゃん?」とSNSで吹聴されて、アンチ世論が形成されかねません。 そんな惨状に歯止めをかけられないか? 風力業界の中の人、一人で歯止めは無理です。さすがに、無理です。でも、一石を投じるぐらいはやってみようと、洋上風力の公募の選考事務局に「

    • 洋上風力ラウンド3以降の公募選考事務局が質すべき輸送・建設計画

      以前の記事で、洋上風力の公募選考事務局には迅速性を評価できるほどの技術的な目利き能力に問題があることを指摘しました。その理由は、公募の選考事務局に風力発電の実務経験者がいない(利益相反が起きるので入れない)ためでしょう。 このまま実現性・妥当性のない迅速性評価、つまり、根拠なき早いもん勝ちがまかり通れば、風力行政の信頼は失墜し、アンチ再エネ世論が巻き起こりかねません。そんな惨状を憂い、今回の記事では、そんな選考事務局に勝手に入れ知恵させていただきます。 選考事務局が見るべ

      • 日本海側の風力発電の運転開始時期を決める難しさ

        日本海側の風力発電所は、洋上でも陸上でも輸送・建設工程のやりくりがけっこう難しいというのは「常識」だと思っていました。ところが、ラウンド2を落札した事業者の計画が公表され、日本海側の制約を全く分かっていない事業者が選ばれていることが発覚しました。 日本海側では、季節変動が大きく、3月中旬~11月中旬の約7か月間で建設を終わらせることができなければ越年するリスクがあります。日本海側における季節変動要素は、以下の3点です。 強すぎる季節風 高すぎる冬の波 吹き付ける冬の雪

        • 洋上風力ラウンド2の結果から見えてきた入札ルール変更の問題点

          2024年4月24日に開催された審議会資料を見て、黙っていられなくなりました。2022年7月に指摘した通り、洋上風力の公募の選考事務局の技術的な目利き能力がないことが立証されたからです。 一部の事業者からの陳情を受けて自民党再エネ議連がしかけた入札ルール変更の結果、迅速性(早期運転開始)という新しい評価項目が追加されました。 その結果、洋上風力ラウンド2の入札では、4海域すべてにおいて最も早い運転開始時期を掲げたグループが落札しました。運転開始時期を早めるには、入札前まで

        洋上風力ラウンド3公募の選考事務局の技術的な審査に使ってほしいウェブサイト

          連系変電所までの長い自営線をめぐる発電事業者の長い闘い

          風力発電の事業者は、風力発電所そのものだけでなく、風力発電所から電力系統につなぐまでの送電線も自分で敷設します。発電事業者が自分で敷設する送電線のことを「自営線」と言います。この自営線の敷設にあたって、大きく3つのコスト要因があります。 電力系統への連系点までの遠さ 地権者との交渉の難しさ 河川横断にかかる手続きの煩雑さ 電力系統への連系点までの遠さ電力系統は、基本的に原発・火力発電所のような大きな発電所と消費地を結ぶように作られています。そのため、多くの場合、風力発

          連系変電所までの長い自営線をめぐる発電事業者の長い闘い

          洋上風力ラウンド2の促進区域の指定と2030年度洋上風力導入目標に黄信号

          2022年8月25日、経済産業省・国土交通省は共同で、再エネ海域利用法に基づき、以下の3海域を促進区域に指定し、その案を公表しました。 長崎県西海市江島沖 新潟県村上市・胎内市沖 秋田県男鹿市・潟上市・秋田市沖 これらに、公募を中断した「秋田県八峰町・能代市沖」を加えた4海域で、洋上風力のラウンド2の公募が実施されることになるでしょう。 筆者が特に動向を注目していたのは、「村上市・胎内市沖」です。この海域は、「由利本荘市沖」に次ぐ広さでありながら、エネ庁資料には、そ

          洋上風力ラウンド2の促進区域の指定と2030年度洋上風力導入目標に黄信号

          風力発電事業者の調達能力とコスト競争力

          陸上風力発電もそうですが、特に洋上風力発電では、発電事業者の調達能力がコストに如実に表れます。今回は、風力発電事業者の調達体制とコスト構造について考察します。 洋上風力発電事業者の主な調達先(建設時)洋上風力発電事業者が建設時に何をだれから調達するかは、だいたい以下に示す通りです。 風車:風車メーカー 基礎部材:基礎部材メーカー 変電所、自営線などの陸上電気設備:電気エンジニアリング会社 海底ケーブル:ケーブルメーカー 建設工事全般:ゼネコン 海運会社(基礎部材

          風力発電事業者の調達能力とコスト競争力

          洋上風力の新入札ルールの1:1評価をラウンド1にあてはめたら

          「八峰町・能代市沖」が公募中だったにもかかわらず、それを中断してまで見直した洋上風力の入札ルール。その見直しの論点の一つが、「定性評価の最高点を120点に引き伸ばし」、すなわち「価格と定性(事業実現性)の1:1評価」でした。 桑原委員が「国民負担軽減のため価格重視であるべきで、定性評価の最高点の引き伸ばしは価格点の意味を薄める」として反対し、マスメディアや自称ジャーナリストさんたちも、それに同調する論調でした。 彼らの言っていることは、風力業界の外の人たちには、もっともら

          洋上風力の新入札ルールの1:1評価をラウンド1にあてはめたら

          経済産業省は風技解釈の改正で丸投げ先に利益誘導していないか?

          日本の風力発電の事実上の設計基準となっている「発電用風力設備の技術基準の解釈等(通称、風技解釈)」。このnoteでも、以前に「風技解釈を2年ごとに改正する経済産業省電力安全課(通称、電安課)の暴走ぶり」や「国際基準IECにも書いていないから困って質問した人たちに、IECを参照せよ、と回答する電安課の他人事ぶり」について取り上げました。 実は、それだけではありませんでした。今回の風技解釈の改正のパブリックコメントの回答結果の中に、「電安課が、特定の人物・団体への利益誘導になり

          経済産業省は風技解釈の改正で丸投げ先に利益誘導していないか?

          占用公募制度の運用指針(改訂案)(洋上風力の入札ルール新案)にパブコメしよう

          「 一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)」に関する意見募集(洋上風力の入札ルール新案のパブリック・コメントの募集)が始まりました。ここでは、私なりの論点をまとめます。 論点1.事業の迅速性の評価論点1は、なんといっても、再エネ議連が持ち出した「迅速性(早期運転開始インセンティブ)」でしょう。「一般海域における占用公募制度の運用指針(改訂案)新旧対照表」の3ページに、以下の文言が加わっています。 以前の記事に書いた通り、「迅速性(早期運開インセンティブ)」につい

          占用公募制度の運用指針(改訂案)(洋上風力の入札ルール新案)にパブコメしよう

          IEC61400-1の地震条件評価の規定で耐震設計できるか?

          2022年6月24日、経済産業省から、発電用風力設備の技術基準の解釈等(通称、風技解釈)の改正が出ました。(参考:風技解釈とは何か?) 風力業界のおおかたの予想通り、パブリックコメント募集時点から、内容は何一つ修正されていません。民衆の意見を聞いたふりをするだけのお役所仕事でした。 今回のパブリックコメントの内容を見る限り、風力発電設備の設計の実務に関わっている方々によると思われる詳しいコメントが多くみられます。そのわりに、経済産業省電力安全課(通称、電安課)は、「電力の

          IEC61400-1の地震条件評価の規定で耐震設計できるか?

          日本の風力発電コストがバカ高い理由6選

          日本のメディアがわかっていない「そもそもなぜ日本の風力発電コストがバカ高いのか?」について、主要な理由を6つ選んで概説します。 日本の風力発電コストがバカ高いのは、日本固有のコストファクターが多いからです。そのコストファクターとは、以下の通りです。 地耐力のある基地港湾面積の欠如 カボタージュ規制による傭船費の高騰 経産省の設計基準づくり丸投げ・追認 昭和の火力発電を前提にした使用前自主検査 連系点の遠さ(連系変電所までの自営線の長さ) 日本海側における建設可能

          日本の風力発電コストがバカ高い理由6選

          洋上風力ラウンド1の何が悪かったのか?

          三菱商事グループがラウンド1の3海域を総取りしてから、業界団体(JWPA)が提言書を出すなどして、政界を巻き込んで、ラウンド2の入札ルールの変更へと発展しました。 JWPAや再エネ議連が言っている「ラウンド1の何が悪かったのか」については、日経新聞が熱心に報道していたように思います。しかし、そこからは真の「ラウンド1の何が悪かったのか」は見えてきません。 真の「ラウンド1の何が悪かったのか」は、経産省・国交省が「実現可能な計画かどうかを正しく審査できなかったこと」につきま

          洋上風力ラウンド1の何が悪かったのか?

          洋上風力の入札ルールの見直し会議の速報

          2022年6月23日、洋上風力の入札ルール(公募占用指針)の見直し会議がありました。ここでは、以下の4つの論点について、各委員の気になる意見をまとめます。また、今後の展開についても予想します。 迅速性評価(早期運開インセンティブ) 落札制限(総取り規制) 定性評価の最高点を120点に引き伸ばし(価格・定性1:1評価) 選考委員の事後公表 迅速性評価(早期運開インセンティブ)10名の委員のうち、桑原委員、原田委員、大串委員の3名が反対、清宮委員、飯田委員、石原委員が賛

          洋上風力の入札ルールの見直し会議の速報

          洋上風力の入札結果を左右する送配電買取スキーム

          2022年2月4日、洋上風力ラウンド1の公募入札結果が出来レースではないかと思わせる資料が、エネ庁から出てきました。この資料から、エネ庁は、FIT価格を下げるために、とある送配電買取スキームを、洋上風力の入札参加企業に使わせようとしていたのではないかという気がしました。 2022年2月4日にエネ庁が、調達価格等算定委員会「令和4年度以降の調達価格等に関する意見」なる資料を公表しました。これを読むと、洋上風力(再エネ海域利用法適用外)もFITからFIPへの移行を早める方向で検

          洋上風力の入札結果を左右する送配電買取スキーム

          エネ庁の洋上風力発電の導入目標5.7GW/2030年度の達成課題

          2022年4月7日に開催された経済産業省・資源エネルギー庁・総合エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第40回)の資料1「今後の再生可能エネルギー政策について」に掲載されている洋上風力発電の導入目標5.7GW(ギガワット)/2030年度を達成するための課題を整理します。 再エネ海域法に基づく洋上風力で3.3GW積み増しまた頼まれもしないのに勝手に「もし私が●●の担当者だったら」シ

          エネ庁の洋上風力発電の導入目標5.7GW/2030年度の達成課題